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第四章:第二話:カルマの坂を転げ落ちる様に…

???side


「ハァ、ハァ、ハァ…あのオヤジも馬鹿だな…」


 昨日の今日でまたパンが盗めるとは…おれもツイてんな。


「ここまでくればもう大丈夫だな…ん?」


 なんだ、あの行列? あぁエントフューラーとこの奴れ、い…


「おい、見ろよ。またエントフューラーの野郎の商品のガキ共だ。」


「あんな綺麗な娘までどこから仕入れてきたんだか…ペドフィーレの野郎が大金で買うんだろうな。」


 そうか、領主ペドフィーレのカスがあんな綺麗な子を…


「このクソガキ〜待ちやがれ〜」


「げっ!? あのオヤジ追いかけきやがったっ!?」


 クソッ、ペドフィーレの野郎…


「クソぉぉぉ〜〜〜〜〜〜」


 どうしておれら子どもがこんな辛い思いをしなきゃならねーんだよ。

 平等? 神様とやらが居るなら何故おれらは愛されない?

 親からも世界からも愛されない…こんな狂った世界なんか…コッチから願い下げだ。


???side end


・・・・・・


 無駄だと心の片隅で思いながらも、ヴィントたちは聞き込みをしながら町を歩いていた。


「多分ここにはいなさそうだよ、ヴィオ。ヴィオと同じ感じの気配は感じられないもん。」


「そうか…でも、あまり外では話し掛けるな、カッツェ。」


「にゃー」


 ヴィントの頭に乗っていたカッツェから良い返事が聞こえてくる。


「ん、あれは昨日の…」


「ホントだ…昨日のパン泥棒くんだ。」


 ヴィントの言葉に反応したアプリルが視線の先を追うと、そこには昨日パンを抱きしめて駆けていった少年が立ち尽くしているのが見えた。


「何見てんだろうな…」


「あの行列じゃない? でも何の行列だろうね?」


 一列に並んだ子どもたち…どの子も顔を俯かせ、中には泣き出している子もいた。


「………奴隷だな。」


「えっ………」


「このクソガキ〜待ちやがれ〜」


「あ、昨日のオヤジだ…」


 二人が少年や奴隷行列を見ていると、後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。

 振り返るとそこには、汗を待ち散らしながら必死に走る太ったオヤジの姿があった。


「あ、あの子も気づいたみたい。」


 少年もオヤジの怒鳴り声が聞こえてようで慌てて逃げ出す。


「クソぉぉぉ〜〜〜〜〜〜」


 少年も何やら叫びながら風のように駆けていった。


「相変わらず速いな…」


「うん…」


 ヴィントたちはその一連の様子を傍観するのをやめ、次の町へ行く為に荷物を整理することにした。


・・・・・・


???side


「…よし。」


 あの綺麗な子にあのカス野郎の穢れた手が触れているなんて…おれには堪えられない。


「日が暮れたら…」


 ヤツヲ殺ス…コノ下ラナイ町ヲ作ッタアノ野郎ヲ…


・・・


「まずは武器がなくちゃ話にならないよな…」


 武器屋に入る、剣を盗んで屋敷まで走る…よし、おれの足ならやれる。


「行くぞ!」


???side end


・・・・・・


「ヴィオ、その剣(“レーヴァティン”)じゃダメなの?」


 武器屋で剣の品定めをするヴィントにアプリルは訊ねる。


「コイツだと魔力の消費が尋常じゃないぐらい取られるんだ。だから雑魚用にもう一本剣を買おうと思ってさ。」


「ふ〜ん…」


 アプリルは剣を選ぶヴィントを店内に残し、メートヒェンとカッツェと共に武器屋の外へ出る。


「パパおいてきちゃっていいの?」


「大丈夫だよ、スゥ…ハァ…それにあのお店空気の悪いんだもん…」


 メートヒェンがアプリルの服の裾を引っ張りながら訊ねる。

 アプリルはメートヒェンの質問に答えると深呼吸をし、店への文句を言う。


「でも、あまりヴィオから離れない方が良いよ…」


「カッツェくん…喋っちゃダメだよ。」


「んにゃ…」


 カッツェは納得いかなさそうに鳴く。


「ん?」


「どうしたの、ママ?」


「パン泥棒くんだ…あっ!?」


 アプリルの視界の端に捉えた少年は武器屋の前までくると店先に出ていた樽の中に乱雑に入っていた剣を一本掴んで走って行く。

 しかし、今までの風のような速さは無く、剣を引きずりながら走る少年だった…


「どうした、リル?」


「あ、えぇ〜と…」


 店先の声にヴィントだけでなく店主も顔を出し、剣を盗んだ少年のことを言いづらくなったアプリル。


「どうしたんだい、嬢ちゃん? ん…」


 アプリルの挙動不審な動きに店主は何かを感じる。

 そして、メートヒェンの正直な視線の先にすでに小さくなったが、剣を引きずりながら走る少年を店主は見つける。


「あんのクソ餓鬼…食いモンだけじゃなく剣まで…とっちめてやるっ!!」


 店主は顔に青筋を立てて店先に置いてある樽から剣を一本手に取る。


「待って下さい…」


「あン? 何だい兄ちゃん、止めてくれんな…あの悪餓鬼に引導を下してやらな…」


「その役目…俺に任せてもらえませんか? アイツの盗ってた剣の代金も一緒に払うんで…」


 ヴィントの言葉に武器屋の店主はキョトンとする。


「そりゃ一体どんな風の吹き回しだい? 兄ちゃんよ。」


「ただの気まぐれさ…だけどなんとなくアイツのことが気になってな。」


 店主はポッケからタバコを取り出すと火を付けてタバコを吸う。

 そして、口から紫煙を吐き出し語り出す。


「アイツはな、ラインって言ってこの町に捨てられていったガキさ…いつも食いモンなんか盗む悪餓鬼だったが金目のモンや武器を盗むようなヤツじゃなかった。きっと何かやらかそうとしてんだな。」


 その言葉の端々からラインというあの少年への思いが感じられた。


「何か心当たりとかは?」


「さてな…皆目見当もつかねぇ…」


「あの…」


「何だい? 嬢ちゃん?」


 今まで黙ってたアプリルの言葉に武器屋の店主は顔を向ける。


「そのラインくんが走って行った方向には何がありますか?」


「ん〜何と言われても…普通に町が続くぐらいで特に…あぁ、ペドフィーレの屋敷があるな。」


 顎に手を当てて考えていた店主の口からこの辺りの領主の名前が出てきた。


「ペドフィーレ…?」


 ヴィントはその言葉を聞き、思考の海へと沈んでいった。


「ヴィオ?」


「・・・」


「どうした、兄ちゃんよ?」


「大体の予想はついた…店主、すまないがリルたちを店に置いといてくれないか?」


「そりゃあ構わないが…兄ちゃんは?」


「アイツを…ラインを止めてくる。」


 ヴィントは先ほど購入した剣を持ち、ラインと同じ方向へ走っていった。



題名を見て分かる方もいるかもしれませんが、ある歌がモチーフです。

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