第三章:第七・五話:使い魔
随分と早い更新です。
今日暇だったのもありますが自分でもビックリの早さです。
感想・評価お待ちしております。
では、お楽しみ下さい。
第三章:第七・五話:使い魔
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???side
「ハァ、ハァ…本当にしつこい奴らだな…ちょっと飯を頂戴しただけであんなに怒るなんて…」
「ギャーギャー」
「うわっ、なんか増えてる…クッ、二、三匹なら返り討ちにするのに…」
「ギャーギャー」
月明かりに照らされる夜の森を一つの黒い影が魔物達から逃げて行く。
「焚き火の煙…あそこに行けば何とかなるかな…」
「ギィヤァー」
「考えてる暇はなさそうだね…」
黒い影は小高い丘を駆け抜ける。
???side end
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ヴィントside
猿と鳥を足したような姿の魔物【フリーゲン・アッフェ】が自分達のところに群れで迫ってくる姿を見てヴィントが呟く。
「なんかあの魔物達、殺気立ってないか?」
「なにかをおいかけているみたい…」
メートヒェンが呟くと黒い影が姿を現した。
「・・・ネコちゃん?」
メートヒェンの言葉に黒い影、黒猫が激しく反応した。
「誰がネコちゃんだっ、人間、ボクは魔法を扱う事が出来る誇り高き使い魔だ!」
「かわいい…パパ、かっていい?」
メートヒェンはホワァ〜としながらヴィントに尋ねる。
ヴィントは殺気立っている魔物達を指差して言う。
「まずはあっち片付けてからな…」
「ギィヤァー」
「ギャーギャー」
「うわっ、滅茶苦茶怒ってる…」
総勢三十の魔物達がヴィント達を囲む。
ヴィントは剣を構え、魔物達を迎え撃つ。
「フッ」
ザザザッ
ヴィントはフリーゲン・アッフェ達の群れの隙間を縫うようにして剣を振るい、血の雨を降らす。
「【ブルート・シュペーア】(血の槍)」
ブススッ
ヴィントは舞い散った魔物の血で更に追い討ちをかけていく。
しかし、ヴィントの攻撃を逃れた数匹がメートヒェンと黒猫へと襲いかかる。
「チッ、メーヒ!そっち行ったぞっ」
「えい」
メートヒェンは可愛らしい掛け声とともに腕を振るうが、その可愛らしい声からは信じられない程の威力を持った襲撃波が迫り来る魔物達を吹き飛ばしていった。
「えっ、衝撃波…?」
メートヒェンが魔物達を吹き飛ばすと同時にヴィントも魔物達を片付けた。
「さてと、【ヒメル・ゼンデン・リヒト】(天国へ送る光)」
ヴィントの魔法の光が魔物達の死体を包み込み、光とともに死体も消えた。
「凄いな、メーヒ…」
「えへへ…レクトアさんにいろいろおしえてもらったから…」
ヴィントはメートヒェンの頭を撫でながら褒めると、メートヒェンは目を細めて、嬉しそうに撫でられる。
「あっ、ネコちゃんのことわすれてた…」
「だから、誰がネコちゃんだっ!」
「ネコちゃん」
メートヒェンは黒猫を指差して言うと、黒猫は盛大に溜め息を吐く。
「ハァ〜〜〜」
「で、お前は何なんだ?」
ヴィントは剣の柄に手をかけて、黒猫に問い掛ける。
「にゃっ…なにも悪さしないから剣から手を離して欲しいんだけど…」
「ほらよ、で?」
「人に名前を尋ねる時はまずは自分からじゃないかな?」
カチャ
「じょ、冗談です…」
「ハァ?お前は何様だよ…そして、お前は人じゃなくて猫だ、まぁ、いい…俺はヴィオだ…で、コイツが…」
「メーヒだよ、ネコちゃん♪」
「だ・か・ら、ボクはネコちゃんじゃないっ、ボクの名前はカッツェ・シュヴァルツ、今は亡き、ファーター様の使い魔さ。」
「ファーターさま?」
「へぇ、シェントゥルムに拠点を構えてたって有名な吸血鬼か?もう死んじまってたのか………ん?」
ヴィントは何かが引っ掛かり、首を傾げる。
カッツェは最近はあった勢いは弱まり、何か思い出したのか、独白を始めた。
「そうだよ…人間の女性に惚れ、それから人間を襲わないようになり、だんだんと力が弱まって…その弱まった時に大勢の人間に襲われて…」
カッツェは一息つき、また独白の続きを語り始める。
「ご主人様とあの女性は深く愛し合い…そして、子宝にめ恵まれて静かに暮らしてた…それなのに…」
「・・・」
「子供が生まれる頃、人間達が攻めてきたんだ…ご主人様はあの女性、エルテレ様を逃がすだけで精一杯だった。」
「(…やっぱり)それで…お前は?」
「ボクも一緒に戦おうとしたよ、けど…ご主人様にエルテレ様を守るように言われて、エルテレ様と一緒に逃げ出したけど途中で人間達に襲われて…そして、はぐれたんだ。」
カッツェは下を向いたまま独白を続けた。
「…はぐれた後は?」
「ボクも大怪我を負い、そして、動けるようになってから、エルテレ様を探していろんな場所を旅している途中さ…もう、三年以上ね…」
「成る程な…」
「次はボクが聞く番だ…」
独白を終えたカッツェは、顔を上げてヴィントを見つめる。
「あぁ。」
「さっき…その子、メーヒだったよね?その子、衝撃波を使ったよね?ねぇ…その子、何者?」
ヴィントはやはり気付いてたか…、と心の中で呟くと、一度メートヒェンに目をやって答える。
「フゥ…良く聞け、コイツの母親はエルテレ、父親は吸血鬼のハーフだ。」
「えっ…」
「メーヒ、今まで訊かなかったけど…父親の名前は?」
「ファーターさまっておしえてもらったの…」
「だそうだ…」
「じゃあ、その子はご主人様とエルテレ様の…なら、エルテレ様は?」
ヴィントはカッツェから目を逸らし、カッツェにエルテレが死んだ事を伝える。
「盗賊達に襲われて亡くなったよ、エルテレさんの死に際に立ち会ってな、メーヒを引き取る事にしたんだ…」
「そっか…エルテレ様も…」
「カッツェだったな…これからどうするんだ?」
「うん、ねぇ、メーヒ…」
「な〜に?」
「ボクと契約してくれないか?」
「けいやく?」
「あぁ、きっとご主人様もそれを望んでいる気がするんだ…エルテレ様と子供を頼むって言われたんだ。」
「パパ…」
メートヒェンはヴィントを見上げる。
「あぁ。」
「うん、わかった。」
「ねぇ、契約の魔法陣って描ける?」
「けいやくのまほうじん?」
メートヒェンは意味がわからず、首を傾げる。
「あ〜、俺が描くよ。」
カッツェに自分が描くと言うと辺りを見回し、ヴィントは近くにあった大きな石を見つけ、その石を魔法でスパッと切って平らな面をつくり、そこに契約の魔法陣を描く。
メートヒェンとカッツェは魔法陣の上に立つと、契約の儀式を始める。
「我、カッツェ・シュヴァルツ、汝の父、ファーター様との盟約により、汝に忠誠を誓う。」
「えぇ〜と…わかったの」
ズルッ
カッツェがコケる。
「まぁいいか…これで契約完了だよ、新しいご主人様。」
「メーヒでいいよ♪カッツェ。」
「…わかった、これからよろしくね、メーヒ。」
「うん、よろしく。」
「君もよろしく、ヴィオ。」
「あぁ、よろしくな、カッツェ。」
「で、君も何者?」
「っ!?、わかるのか?」
「まぁ、伊達に二百年は生きてないからね…」
お前、そんなに生きてんのか、とヴィントは呟き、カッツェを見る。
「お前なら大丈夫か…俺の名前はヴィント、ヴィント・シュタート・ナトゥーア」
「ナトゥーアって…」
「東の国、オステン王国の第三王子だ。」
ヴィントは左胸にある《龍》のアザを見せる。
「君、王子様だったのか…」
「そして、この身に流れる半分の血は天使と悪魔の血…俺は天使と悪魔と人間の混血児だ。」
「君もなかなかに凄い出生だね…」
「まあな…」
「うん、改めてよろしく、ヴィント王子。」
「ヴィオと呼べ、今は身分を隠しているんだ。」
「わかった…けど、どうしてヴィオはこんな大陸の南の端に?」
「それはだな…」
ヴィントは王国の事、両親の事、その父親探しの旅を始めた事、アプリルの事など今までの経緯をカッツェに教えた。
そして今は、アプリルの薬が出来るまでの間、ヴェステン魔法学院で教師をしていて、現在、ネーベル谷での研修中である事を伝えた。
「ありがとう、教えてくれて…」
「いいさ、これからはお前も旅に加わるんだ、知っといてもらった方が良いからな…」
「うん。」
「さて、メーヒも寝ちまったし…俺らも寝るか…」
メートヒェンは胡座をかいていたヴィントの足の上で眠りに落ちていた。
ヴィントの長い話にメートヒェンは耐えきれず、夢の世界へと旅立っていたのだ。
「そうだね。」
「ムニャムニャ…もう…おなか、いっぱいなの…」
「うわっ、ヨダレが…」
「ったく…コイツも食い意地が張ってるよな…」
こうして、二人と一匹の夜は更けていく。
今回の登場人物は、ネコちゃんことカッツェ・シュヴァルツ君とメートヒェンのお父さん、ファーター様、オマケに魔物のフリーゲン・アッフェです。
まず、カッツェ・シュヴァルツ君の由来は【黒猫】です。カッツェが猫でシュヴァルツが黒という意味です。
次にファーター、彼は【父】という意味です。
オマケのフリーゲン・アッフェの由来は【飛ぶ・猿】です。上半身が猛禽、下半身が猿のイメージです。
本当はこの七・五話って全く予定に入ってなかったんですよね…
カッツェはある映画を見てたら思い付きました、えぇ、ジブリのあれです。
カッツェの話し方のイメージはあの黒猫です。
ファーターも本当は全く出す気ありませんでした…というか名前も今回、初めて考えました。
感想・評価を一気に三つもらったのが嬉しくてつい書き上げてしまいました…
七話を上げる十分前まで必死に書いてたのが冗談のようにすぐ出来ました。
次回は土曜日の夜に上げたいと思います。
これからもよろしくお願いします!