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第三章:第七話:研修一日目

感想・評価お待ちしております。


 

第三章:第七話:研修一日目

 

・・・・・・

 

 開始の合図を聞き終えると、多数の生徒達が声を上げ、森へと駆けて行く。

 その姿を教師陣は呆れ顔で見つめていた。

 

「いや〜若いって良いですね…」

 

「そんな暢気な…」

 

 レクトアと学年主任の会話を尻目にヴィントは溜め息を吐く。

 

―――ハァ、仮にも魔物の生息する危険な場所なんだからもう少し慎重に行動出来ないかね…これは研修であって遠足じゃないんだから…

 

「走ってた奴らはまだまだ、だな…」

 

「えぇ、おっ?ウチのクラスの優秀グループはしっかりと最終確認してる…」

 

「俺のクラスの一グループも持ち物の検査をしっかりしているな…」

 

 ヴィントとレーラーは、森へと走って行かなかった数少ないグループに受け持ちのクラスの面々を見つけた。

 ヴィントはレーラーに一言告げるとそのグループへ近寄る。

 

「よお…」

 

「あっ、ヴィオ先生、どうしたんですか?」

 

 アオスラントがヴィントに気付き、声をかける。

 

「いや、様子見だ、それにしてもお前らは偉いな…殆どの奴らが森へ一目散に駆けて言ったのに、お前らはしっかりと最終確認してるな…」

 

「勿論です。森へ入ったら暢気に作戦会議なんか出来ないかもしれないですから…森に入る前に最終確認をと…」

 

「あぁ、準備は万全の方が良い、しっかりと戦闘時の役割なんかをもう一度確認しとけよ?まぁ、このグループは学年でも一、二を争う優秀なグループそうだから慢心さえなければ大丈夫だろ…」

 

 ヴィントの誉め言葉に舞い上がることなく、エルンストは返事する。

 

「有難う御座います、ヴィオ先生、しっかりと研修に取り組みますよ。」

 

「ふん、お前なんかに心配されなくても大丈夫だ!」

 

ルーイヒは礼儀正しく、ラオトはふてぶてしく返事する。

 

「何だ?まだ負けたの気にしてんのか?それとも、リルにフラれた事を気にしてんのか?」

 

「っ、うるせぇ〜〜〜」

 

 ラオトの叫びが空高く響く。

 

・・・・・・

 

 アオスラントside

 

 最終確認を終えた私達は、他のグループに遅れながらも、森へと足を向けた。

 後ろにはヴィオ先生と小さな手を目一杯振るメーヒちゃんが私達を見送ってくれる。

 私はその小さな少女の姿を見て、これから始まる研修の前に、和むなぁ…

 

「チッ、ホントにムカつく先公だぜ…」

 

・・・まだラオト君は先程の事を根に持っているみたいだけど。

 

「ホラ、もう森に入るわよ、気持ち切り替えなさいよ。」

 

「わかってるって…」

 

 ラオト君は気持ちを切り替えるのがいつも早いのに今回はなかなか長引いているようだ…

 まぁ、結構私の傷も深いけど、ね…

 

「さぁ、慎重に行くわよ。」

 

 前にエルンストさんとラオト君、後ろに私とルーイヒ君の隊列で森に入る。

 

 アオスラントside end

 

・・・・・・

 

 ヴィントside

 

 スタート地点 兼 ゴール地点

 

 そこにはレクトアが魔法で大きな建物を建てる。

 

「流石ですね…コレは転移魔法ですか?」

 

 ヴィントの問いにレクトアは微笑みながら答える。

 

「えぇ、学院の地下に普段は仕舞っているんですけど、日数の掛かる研修の時などにはこの建物を先生方の待機所にしているんですよ…」

 

 教師陣の待機所の他に怪我をした生徒達の救護所も兼ねているので、その大きさはかなりのモノだ。

 

 まぁ、私しかコレを持って来れないからこうして来ているんですけどね…、とレクトアは微笑みながら言う。

 

「学院長、普通はこんな大きなモノを転移魔法で移動なんか出来ないですって…」

 

レクトアの言葉に学年主任はあなたしかこの魔法は出来ませと呟く。

 

「修行あるのみですよ。」

 

 レクトアは微笑みながら言うが、この質量の転移魔法など魔法の才能があるものでも習得までに三十年はかかるだろう。

 

「さぁ、ひとまず中に入ってお茶でもしましょうか…」

 

「良いですね。」

 

 レクトアはそう言って建物に入ってい、ヴィントもレクトアに続いて入ろうとすると後ろでは学年主任が頭を抱えていた。

 

「ヴィオ先生まで…」

 

「いや、学院長の誘いを断れた試しがないので最初から誘い乗った方が早いかと思って…」

 

「確かに…」

 

「聞こえてますよ。」

 

「が、学院長…」

 

「すみません、主任も中に入りましょう。」

 

「あ、あぁ…」

 

「ん、メーヒは?」

 

「あぁ、メーヒちゃんなら中で他の先生方とお茶してますよ。」

 

「本当に人見知りしない奴だな…」

 

 ヴィントは呆れながら建物に入っていった。

 中では周りに女の先生方を侍らし、口のまわりを食べかすで汚すメートヒェンがいた。

 

 ヴィントside end

 

・・・・・・

 

 アオスラントside

 

 現在、私達は狼の姿をした魔物達に囲まれている。

 

「敵を突き刺す大地の槍【エーアデ・シュタッヘル】(土の棘)」

 

ザスザスッ

 

「次っ!」

 

 エルンストさんの魔法が前方の魔物達を牽制する。

 すぐにラオト君が魔法の詠唱を終え、動きの止まった魔物達を魔法が襲う。

 

「あぁっ、火の精霊サラマンダーよ、汝に宿りし火を我に貸したまえ、火は炎の弾丸となりて、敵を撃つ【フラメ・ワーゲル】(炎の弾丸)」

 

ドドドドォォォン

 

「ふぅ…」

 

「!?、ラオト君っ!!上っ」

 

 木の上から猿のような魔物がラオト君に襲いかかる。

 

「えっ?ぐ…痛っ」

 

「ルーイヒ君っ、ラオト君をお願い!!」

 

「わかったよっ」

 

「【エーフェイ】(ツタよ)、【ゲーグナー】(敵を)、【グライフェン】(捕まえて…)」

 

 私の呼びかけに地面からツタが伸び、魔物の体に絡みつく。

 

「エルンストさん、お願い…」

 

「えぇ、空腹満たすの足下の捕食者【フィール・フラース・シュランゲ】(大食らいの蛇)」

 

 蛇の口を模した土が魔物に噛みつくと、そのまま大地の奥底へと引きづり込んでいった。

 

「久しぶりに見たね、【シュプラーヘ・ヘクセ】(言葉の魔女)」

 

「そうだな、それにしても周りに呼びかけるだけで詠唱が要らないから便利だよな…」

 

 私とエルンストさんが周りにもう危険はないか確認すると、私達のことを後ろから見ていた二人の会話が聞こえた。

 

「う〜ん…確かに便利かもしれないけど、植物達にも意思があるから相手を死に至らしめるような呼びかけには応えないから、魔物との戦闘には向かないかな…」

 

「そうなのか?」

 

「うん、あっ、怪我は大丈夫だった?」

 

「あぁ、ルーイに治してもらったからもう平気だ。」

 

「ごめんね私がもっと早く気づいてたら…」

 

「お前のせいじゃないから気にすんな、注意が足りなかったのはオレも同じだ。」

 

「えぇ、次から気をつけましょう、それと、死体の血に他の魔物達が誘われてこない内にここを移動しましょう。」

 

「そうだね、ラオトももう平気でしょ?」

 

「あぁ。」

 

 私達はこうして日が暮れるまで森の中を進んで行った。

 夜になる前に運良く水辺を見つけ、私達はここで夜を過ごすことにした。

 水辺の周りには他にも焚き火の灯りがいくつか見え、私達以外のグループも何組かここで夜を過ごすみたいだ。

 私達は夕食を終え、作戦会議を兼ねた食後の談笑をする。

 

「結構なんとかなるもんだな…」

 

「そうね、けど、油断は禁物よ。」

 

「わかってるって、明日は霧深い渓谷だ、今夜はしっかり休んで明日に備えようぜ。」

 

「そうだね、最初は僕が見張りをするからみんなは休んでいいよ。」

 

「ルーイヒ君、いいの?」

 

「うん、みんな今日は魔法をたくさん使って疲れてるだろうから、僕はあまり魔法を使わないで済んだしね。」

 

「ありがとうね、ルーイヒ君、お言葉に甘えて先に休ませてもらうわ。」

 

「ありがとう、ルーイヒ君。」

 

「サンキュ!しばらくしたら見張りを交代するからな。」

 

「わかったよ、みんな、おやすみ。」

 

 こうして、私達の研修一日目は終わっていった。

 

 アオスラントside end

 

・・・・・・

 

 ヴィントside

 

 レクトアや他の先生方とのお茶会も終わり、ヴィントや何人かの教師は見回りに出ることになった。

 

「よし、メーヒ、俺達も森に行くぞ。」

 

「うん♪」

 

「大丈夫?ヴィオ君、メーヒちゃん。」

 

 特にメートヒェンを可愛がってた女の先生が二人を心配する。

 

「大丈夫ですよ、学院長の御墨付きをもらいましたしね。」

 

「だいじょ〜ぶ、だいじょ〜ぶ♪」

 

「そう…気を付けてね。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

「いってきま〜す♪」

 

バタン

 

 ドアが閉まると手を振るのを止め、彼女は溜め息を吐いた。

 

「本当に大丈夫かしら…」

 

「心配しなくても大丈夫ですよ、あの二人はなかなかに優秀ですから。」

 

「学院長…」

 

「お茶でも飲んで落ち着きましょう。」

 

「またお茶ですか?」

 

「えぇ。」

 

 女の先生は軽く呆れながら尋ね、レクトアはいつもの微笑みで返す。

 結局、二人は玄関から他の先生がいる部屋へ戻っていった。

 

「さて、ウチのクラスの生徒達は無事にやってるかな?」

 

「だいじょ〜ぶ、だいじょ〜ぶ♪」

 

「そうだと良いんだけどな…」

 

 二人は森に入り、生徒達の奮闘する姿を影ながら見て回り、どうしようもないピンチの時にだけ手助けして回った。

 そうして日が暮れ、二人は小高い丘を昼間の内に見つけといたので、今夜はそこで夜を過ごす事にした。

 

「パパ、きょうのごはんはなに〜?」

 

「ん、パンとスープとソーセージだ。」

 

「やった〜♪」

 

「お前って肉好きだよな…」

 

「だっておにくおいしんだもん。」

 

「まぁ、俺も好きだけどさ〜」

 

「はやくたべたいの♪」

 

「あぁ、すぐに用意するから待ってろ。」

 

「は〜い」

 

「【ウン・エントリッヒ・シャハテル】(無限の箱)」

 

 ヴィント箱から食料とテーブル、椅子、ランプを次々に出し、食卓の準備をする。

 ソーセージは串に刺して焚き火で焼き、パンとスープをテーブルに並べた。

 

「さぁ、食うか。」

 

「いただきま〜す♪」

 

「いただきます。」

 

 メートヒェンは手を合わせいただきますと嬉しそうに唱え、ヴィントも手を合わし、メートヒェンに唱和する。

 二人は仲良く食事を進めていった。

 

「ごちそうさまでした〜」

 

「お粗末様。」

 

 食事を終え、二人は寝床の準備を始める。

 

「?」

 

「ん、メーヒ、どうした?」

 

「ん〜、あっちからなにかこっちにきてるみたい…」

 

「あっち?」

 

 ヴィントはメートヒェンが指差す方向を見つめる。

 



 今回は特に新登場人物はいませんね…

 3月23日に『minimoneさん』からと『うさぎやさん』から感想を、24日に『上総さん』から評価を頂きました。

 お三方、感想・評価有り難う御座いました、とても励みになりました。

 次回もよろしくお願いします。


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