第三章:第六話:グループ分け
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第三章:第六話:グループ分け
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「ネーベル谷での研修、ですか?」
「あぁ」
昼休みを学院長室で過ごし、職員室に戻ってきたヴィントにレーラーが一年の行事について話しをする。
「毎年、この時期に学院の北西にあるネーベル谷で一年は三日間の実戦研修をするんだ。」
「俺もその監督でついて行くって事ですか?」
「勿論、二日後に実施だからそのつもりで、後で資料を渡すよ。」
「わかりました。」
レーラーはヴィントにネーベル谷での研修の件を伝えると職員室を出ていった。
ヴィントも次の授業の準備をすると職員室を後にする。
放課後、ヴィントはメートヒェンを迎えに学院長室に訪れる
既にアプリルもきていて、三人は紅茶とお菓子を囲んで談笑していた。
「お疲れ様でした、ヴィオ先生」
「いえ、今日もメーヒの事、ありがとうございました。」
「いえいえ、メーヒちゃんはとても筋が良いですよ、教え甲斐があります。」
レクトアは微笑みながらメートヒェンを見つめる。
まだ幼く、母に甘えている少女には、とてつもない潜在能力を秘めていた。
「そういえば、明後日になんかネーベル谷での研修があるらしいですね。」
ヴィントはふと思い出し、話のネタとしてレクトアに話を振る。
「えぇ、毎年恒例ですからね、私も行事に最高責任者として参加しますよ。」
「そうなんですか?」
「はい、でも参加すると言ってもただいるだけですけれどね。」
「けど、メーヒはどうしますか?」
「ついでにメーヒちゃんもネーベル谷での研修に参加させますか?」
「えっ?」
「もう皆さん、メーヒちゃんのこと知ってますし、彼女も自分の能力を試すいい機会でしょう。」
レクトアは穏やかな瞳でメートヒェンを見つめる。
ちなみにヴィントとアプリル、メートヒェンの関係はつい先日に発覚し、大勢の学生達を震撼させ、その日は大量の涙が流れたという…
メートヒェンは現在、寮のアイドル的存在として夕食の準備をちょこっと手伝っている。
「学院長がよろしいのなら…」
「メーヒちゃんをヴィオ先生の補佐として参加させますか。」
「へっ?俺と一緒に行動するんですか?」
「えぇ、なんなら明日から一緒に行動して授業をしてみます?もう教えることも特にありませんし…」
レクトアの発言にヴィントは、横でクッキーを頬張っている娘の姿を見て溜め息を吐く。
そんなヴィントをアプリルは苦笑しながら見ている。
「メーヒちゃん」
「なんですか?レクトアさん」
「明日からヴィオ君と一緒に授業しに行きませんか?」
「パパと?」
「そうです、もう私も教えられることはないですし、もしよろしければパパと一緒にいても良いですよ。」
「パパといっしょにいたいっ!」
「わかりました、明日からはヴィオ君と一緒に授業しに行って下さい。」
「でもレクトアさんのとこもたのしかったし、おいしかった…」
メートヒェンはう〜ん、と考える。
「メーヒ…もしかして、レクトアさんのお菓子の事言ってるの?」
「うん…」
アプリルはメートヒェンの発言にに頭を抱え、溜め息を吐く。
レクトアは微笑みながら、お昼休みにはいつものようにここへどうぞ来て下さい、と言うと、メートヒェンも納得した。
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アオスラントside
ガラガラッ
「席につけ〜」
ドアを開け、ヴィオ先生が教室に入ってきた。
左手には小さな女の子が嬉しそうにヴィオ先生の手を握っている。
ハァ、私もヴィオ先生と手を繋ぎたいよ…
けど、ヴィオ先生には恋人さんがいるらしいし…ハァ…
「えぇ〜と、まずコイツの紹介からか…メーヒ、自己紹介しな。」
「うん、パパ」
パパ、か…なんか、とても私の一コ上には見えないよ…攻撃魔法に補助魔法、回復に防御の魔法まで上手だし…それに剣の腕も凄いらしいし…容姿端麗、頭脳明晰、本当に完璧な人だなぁ〜
「メーヒはメートヒェンっていいます、メーヒってよんでほしいの♪」
「可愛い〜」
「私もメーヒちゃんみたいな娘欲しい〜」
メーヒちゃんの自己紹介が終わるとクラス中からたくさんの声が上がる。
メーヒちゃん、可愛いな〜
「メーヒも明日からの研修に参加するからよろしくな。」
「えぇぇ〜」
私達はヴィオ先生の言葉に驚き、クラス全員が大声を上げた。
「学院長の御墨付きだから大丈夫だ。」
「だいじょうぶなの〜」
「けど、危なくないんですか?」
「これでもメーヒは強いぞ、俺が何度か助けられるくらいだからな、しかも、昨日まで学院長直々に指導してもらってたからな。」
「メーヒちゃんってすご〜い」
「メーヒ、すごいの♪」
私は開いた口が閉まらなかった、あんな小さいのにメーヒちゃんは凄い能力を秘めているみたいだ…
「さて、今日は明日のグループ分けをするからな、一グループ四人になるようにするから、とりあえず攻撃魔法が得意なのは廊下側、補助魔法なんかが得意なのは窓側に集まってくれ。」
私は補助魔法が得意なので窓側に集まった。
攻撃魔法の使い手と補助魔法の使い手の割合はちょうど半々だ。
先生は出席番号の書かれた籤をつくると攻撃魔法担当二人と補助魔法担当二人のグループになるように籤を引いていく。
その結果、私のグループは、私とクラスのムードメーカーのラオト君、まじめな委員長のエルンストさん、穏やかな性格のルーイヒ君の四人になった。
なんで籤なのかヴィオ先生にラオト君が訊くと、籤が一番手っ取り早く決まるからだそうで………職務怠慢?
「明日はこのグループでネーベル谷に行くから、今日は明日に備えて作戦でもたててくれ。」
「パパ、メーヒ、オシッコにいきたい…」
「「「「・・・・・・」」」」
「えぇ〜と、メーヒをトイレに連れて行くから明日の研修について話し合っててくれ…メーヒ、トイレに行くぞ。」
「うん…」
ヴィオ先生はメーヒちゃんを脇に抱え、
ガラガラッ、ピシャッ
教室のドアを乱暴に開け、廊下に出た。
「もれそうなの〜」
「後少し我慢しろ〜」
ドアの向こう側でドップラー効果を残して走って行く音が聞こえた。
「「「「・・・・・・」」」」
「本当にヴィオ先生、メーヒちゃんのお父さんしてるんだ…」
誰かがポツリと言ったその一言はクラスのみんなが思ったことだと思う。
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「さて、俺とエルンストが攻撃担当でアオとルーイがサポートか…」
「えぇ、私とあなたが前衛ね、アオスラントさんとルーイヒ君は後衛で回復と防御などの補助の形が理想ね。」
エルンストさんは学年でもトップクラスに入る腕前で、ヴィオ先生みたいに無詠唱は無理だけど詠唱短縮が出来る凄い人だ。
ラオト君も学年では上位に入り、多様な魔法の使い手だ
ルーイヒ君は回復と防御のスペシャリストで、頭も学年一桁に入る程だ。
私は相手を妨害や捕縛する魔法が得意です…
他のみんなが凄すぎて少し気後れしそう…
「アオスラントさん、どうかしたの?」
「えっ?」
「なんか元気なさそうに見えたから大丈夫かなと思って…」
「う、うん、大丈夫だよ…ありがとう、ルーイヒ君。」
「明日からの研修、頑張ろうね。」
「そうだね。」
ガラガラッ
「授業中断して悪かった、続き始めるぞ。」
「「「「は〜い」」」」
アオスラントside end
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ネーベル谷での研修、一日目
朝早く学院を出発し太陽が頂点を少し過ぎた頃、ようやくネーベル谷に到着した。
目の前には断崖絶壁のネーベル谷があり、生徒達は今から始まる研修に興奮を隠せず、がやがやと話をしている。
「静かに、これからネーベル谷での研修について説明する。」
レーラーが生徒達の前で説明を始める。
「まず、このネーベル谷の右手側の森を抜けた先に谷底に行ける道があるのでそこを通り、谷底を北に進むと左手に洞窟がある、その洞窟は崖の上まで行けるようになっている、崖の上に着いたら南、このスタート地点までを戻ってきたら研修が終了だ。」
レーラーが説明を終え、次に学院長、レクトアの挨拶が始まった。
「皆さん、研修といっても此処は実際に魔物達などがいる大変危険な場所です、気を抜かずしっかりと研修に取り組んで下さい、研修終了時に全員元気な姿で学院に帰りましょう。」
レクトアは最後の部分を微笑みながら締めた。
学年主任の教師が前に出てきて、研修の開始を伝える。
「では、これから研修を始める、期限は三日間、全員無事に帰ってくる事、では始め。」
「「「「はい!」」」」
生徒達の声がネーベル谷を抜けていった。
今回の登場人物は、エルンストとルーイヒの二人と地名のネーベル谷です。
まず、エルンストの由来は【まじめ】です。委員長やってますし…
次にルーイヒ、彼は【穏やか】です。アオスラントのグループは彼女以外みな性格系で名前を決めました。
最後に地名のネーベル谷、ネーベルは【霧】という意味です。
次回に描写しますが、谷底は霧深い場所になっています。
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| | 森
洞窟 ̄ 谷 |
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 ̄ ̄ ̄ ̄
現在地
ちなみにこんな感じです、分かりますかね?
次回もよろしくお願いします。