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第三章:第五・五話:アプリルの一日

あとがきはまた明日あげます……

 

第三章:第五・五話:アプリルの一日

 

・・・・・・

 

 『アプリルの一日』

 

 朝の日差しがアプリルの顔を照らす。

 

「ん、んん〜〜」

 

 ムクッ、っとアプリルは身を起こすが、放心しているかのようにボォ〜としていて動き出さない。(←低血圧)

 

「・・・・・・」

 

 五分程経過し、段々とアプリルの意識がハッキリとしていく。

 

「ふぁ〜、むぅ〜、・・・・・・、二人を起こしゃなきゃ…」

 

 アプリルはもぞもぞとベッドから出るとヴィントの布団を剥ぐ。

 そこには寝苦しそうにしているヴィントとヴィントの上に乗って、幸せそうにクマのヌイグルミを抱いて寝ているメートヒェンがいた。

 

「ヴィオ〜、メーヒ〜、朝だよ〜、起きて〜」

 

「ん〜、朝か…」

 

 ヴィントがアプリルの声で目を覚まし、体を起こすとメートヒェンがゴロリ、とヴィントの上から転がり落ちる。

 

「寝苦しいと思ったら、メーヒのせいか…うわっ、なんか胸元が濡れてんだけど…」

 

「メーヒのヨダレ、じゃない?」

 

 ヴィントは服を脱ぎアプリルに渡すと、アプリルが服を広げて答える。

 

「ホラ、メーヒ、朝だぞ…」

 

 ヴィントがメートヒェンを揺すりながら起こす。

 しかし、メートヒェンは起きない…(←低血圧)

 仕方無く、ヴィントはメートヒェンの片足を掴むとメートヒェンを持ち上げる。

 だらんと髪の毛とヌイグルミを持った腕が垂れる。

 

 ブンブン

 

 上下にメートヒェンを振るヴィントの行為にアプリルは苦笑しながら、それを横目に眺め、ベッドのシーツを整える。

 

「ん〜」

 

「起きたか?」

 

「ん、ムニャムニャ、おきた、よ…あれ、なんで、パパ…ハダカんぼ?」

 

「お前が俺の服にヨダレを垂らしてたからだ…」

 

「そ、なの?」

 

「そうだよ…もう、下ろすぞ?」

 

「うん…」

 

 ヴィントはメートヒェンをベッドの上に落とした。

 アプリルが、シーツが乱れるでしょ!と文句を言いながら二人の服を取り出す。

 

「パパ、ようじぎゃくたい…」

 

「そんな言葉、どこで覚えたんだよ…」

 

 ヴィントはアプリルからシャツを受け取り、頭と腕を袖に通しながらメートヒェンに尋ねる。

 

「レクトアさん…」

 

「これは幼児虐待じゃなくて躾だ…」

 

「ホラッ、ヴィオもメーヒも着替えて、早くテリンさんとこ行こ?のんびりしてたら遅刻しちゃうよ…」

 

 アプリルはメートヒェンの服を着替えさせて自分とメートヒェンの髪を梳かす。

 ヴィントも身支度を整え、三人はフェアミーテリンの部屋へ向かう。

 

・・・・・・

 

 朝食を終え、ヴィントとメートヒェンを学院に送り出した二人は学生達の朝食の準備を手伝いに行く。

 

『アプリルの朝の予定』

 

06:00 起床

 ‖

06:15 朝食

 ‖

06:45 二人の見送り

 ‖

06:50 学生達の朝食の準備

 ‖

07:50 学生達の朝食

 ‖

08:20 学生達の朝食の片付け

 ‖

09:00 朝食の仕事が終了

 

 ヴィント達は早めに学院に行き(学生達と朝食が被らないようにする為、理由:アプリルと一緒に朝食を取る為)レクトアのところで時間を潰す。

 

 

・・・・・・

 

 アプリルside

 

―――さて、学生さん達に美味しい朝ご飯を作りますか…

 

「テリンさん、今日の朝ご飯のメニューって何でしたっけ?」

 

「ん、パンとハムエッグ、サラダ、かぼちゃのポタージュよ」

 

「わかりました、何を作れば良いですか?」

 

「かぼちゃのポタージュ作っといてくれる?」

 

「了解です。」

 

―――えっと、かぼちゃ、かぼちゃ…

 

アプリルは、かぼちゃのポタージュの作り方を頭に思い浮かべ、作業に取り掛かる。

 

―――もうそろそろ07:40か…、ん、大体の料理が出来上がり、食器に料理を盛り付けてる。

 

 食堂を見るとポツポツと学生達が食堂に顔を出し始めていた。

 

「おはよー、アプリルちゃん、今日のメニューは?」

 

 最近アプリルと仲良くなった二人の女の子達がカウンターに料理を取りに来た。

 

「おはよー、今日はパンとハムエッグ、サラダ、かぼちゃのポタージュだよ♪あっかぼちゃのポタージュは私が作ったよ〜」

 

「本当?じゃ、しっかりと味を見させてもらいますか…」

 

「この子、料理に対しては評価、辛口よ?」

 

「お、お手柔らかに…」

 

「冗談よ〜あっ、ねぇねぇ知ってる?この前ね、新しい先生きたんだけどさ〜」

 

 アプリルから朝食の乗ったトレイを受け取りながら女の子が話しかける。

 

「新しい先生?」

 

「そ、ヴィオ先生って言うんだけど〜」

 

「っ!?」

 

「どうかした?アプリルちゃん?」

 

「う、ううん…な、なんでもにゃいの…き、気にしないじぇ…」

 

―――びっくりした〜、こんなところでヴィオの話聞くとは思わなかったよ…なんか焦っちゃったけど怪しまれてない、よね…

 

「何でそんなに焦ってんの?まあいいや、でさ〜、今日やっとそのヴィオ先生の授業を受けられるの〜」

 

―――良かった〜、あまり気に掛けなくて…それにしても、なんか語尾にハートマークがつきそうな程嬉しそう…

 

「そうね、ヴィオ先生って若くてカッコいいし、魔法の腕も一流だもんね…高等部の王子様よね…」

 

―――高等部の王子様って…ヴィオはオステン王国の本当の王子様だもん…みんなから王子様って言われても仕方ないよね〜

 

「ホントホント、ヴィオ先生ってカッコいいし、私達の一コ上なんだよね、もう何人も女の子が告白してるって噂だよ?」

 

「そ、そんなに人気があるんだ…」

 

―――流石はヴィオだなぁ…もうそんなに人気者なんだ…ヴィオったら信じられないくらいにカッコいいからな…シャワー浴びた後なんかは、女の私が赤くなるぐらい色っぽいし、けど寝顔はあどけなくて可愛いんだけどね…それに優しいし、時々イジワルだけど………(まだ続く夫贔屓…)

 

「でも、そんなこと言ったらアプリルちゃんだって人気スゴいじゃない?」

 

「へっ?」

 

 アプリルがずっとヴィオのこと考えていると、今度はアプリルに話しの照準が向く

 

「ウチのクラスの男子達が言ってたわよ、“アプリルちゃんって可愛い”、とか“嫁にきて欲しい”、とか…」

 

「そ、そんなに?」

 

「けど〜、アプリルちゃんも可愛いよね〜、料理も上手だし、男子達の気持ちもわかるな〜」

 

「私もアプリルちゃんをお嫁さんにしたいぐらい…」

 

「二人共からかわないでよ〜」

 

「そうね、二人共リルをからかわないで頂戴、リルをいじるのはあたしの特権だからさ。」

 

 後ろからアプリル頭に手を乗せ、フェアミーテリンが会話に入ってきた。

 

「あっ、テリンさん、おはよーございます。」

 

「おはようございます。」

 

「はい、オハヨウ、二人共さ、もう朝ご飯食べ始めないと遅刻するよ?」

 

フェアミーテリンは時計を指差しながら女の子二人に言う。

 

「えっ?げっ、もうこんな時間!?」

 

「アプリルちゃん、また夜にね〜」

 

「うん、急ぎ過ぎて朝ご飯を喉に詰まらせないでよ〜」

 

 わかった〜、という返事を叫びながら二人は席へと急いでいった。

 

―――あんなに急いで零さないと良いけど…

 

「リルも仲良くなったのは良いけど、朝はのんびりしてたらダメだよ?」

 

「すみません…」

 

「次からは気を付けるとして、あっちで食器の回収を手伝いに行ってくれる?」

 

「はい」

 

・・・・・・

 

アプリルが食器の回収にくると、既に朝食を終えた男子達がいた。

彼らはアプリルに気付くと嬉しそうに挨拶をしてきた。

 

「あっ、アプリルちゃん、オハヨー♪」

 

「うん、おはよー」

 

「さっき挨拶しようとしたら女子達がアプリルちゃんのこと独占してんだもん、もう今朝は話せないかと思ったよ…」

 

「ホントホント、最近じゃ朝にアプリルちゃんの笑顔見ないとやる気が出ないしな〜」

 

「まったくだ…」

 

―――あれ、食器回収にきたら今度は男の子達に捕まちゃった…

 

 アプリルが愛想笑いしながら考えているその間も男子達はこぞって話しかける。

 ちなみにアプリルは寮の男子達に“お姫様”と呼ばれている。

 再びフェアミーテリンが来るまでアプリルへの男子達のアプローチは続いた。

 

・・・・・・

 

 朝食の片付けを終え、一息つくと今度は、洗濯と掃除である。

 午前中に洗濯を終え、その後昼食、掃除をして洗濯物を取り込んだら後は、学生達の夕食までは暇になる。

 大体三時過ぎにはひと段落つくので、アプリルはメートヒェンの様子を見に学院長室へと顔を出すのが最近の日課である。

 

―――今日のおやつは何かな〜?昨日はアップルパイでしょ、一昨日がフルーツタルトだったからな…レクトアさんに焼菓子の作り方を教えてもらおうかな…メーヒもヴィオも美味しそうに食べてたし…

 

 三時を過ぎると学院の授業も終わりアプリルが学院長室に顔を出すのと同じぐらいにヴィントも学院長室に訪れる。

 ちなみに本日のおやつはシュークリムでした。

 

「ねぇ、ヴィオって女の子達に告白されてるってホント?」

 

「な、何だよ…いきなり?」

 

「ホント?」

 

「う、まぁ何人かには手紙もらったり告白されたりしたな…」

 

「へぇ」

 

―――やっぱり本当だったんだ…

 

アプリルは何か考え込むように俯き、ヴィントが慌てる姿をレクトアはにこやかに眺めている。

  

「大丈夫だって、俺が一番好きなのはリルだからさ…」

 

「本当?」

 

「あぁ」

 

「そっか…」

 

「メーヒもママがすき〜」

 

「ありがとう、メーヒ」

 

 さっきまでシュークリムを食べていたメートヒェンも話しを聞いていたのか、アプリルに好きと満面の笑みで言う。

 

「お前、口の周りクリームだらけだぞ…」

 

「メーヒ、おいで…拭いてあげるから。」

 

「うん」

 

 仲のいい親子のやり取り、そんな三人の姿を紅茶を飲みながら穏やかに見つめるレクトア、学院長室は平和そのものだった。

 ちなみに、次の日は学院でアプリルの噂を男子達から聞き、アプリルがヴィントに詰問される事になるのはまた別の話…

 

・・・・・・

 

 夕食を寮生に振る舞い、今はフェアミーテリンの部屋で夕食を食べている四人。

 

「今日も一日、ご苦労さま、リル。」

 

「ご苦労さまでした、テリンさん。」

 

「ヴィオ君も先生ご苦労さま、噂は寮生達からよく聞くよ…」

 

「どんな噂か気になりますね…」

 

「秘密♪」

 

賑やかに夕食は進んでいくが、ヴィントはふとアプリルが静かなのに気付く。

 

「リル、どうした?」

 

「ん〜」

 

「なんか、顔が赤くないか?」

 

「あっ、コイツ…間違えて私の酒を呑んでる…」

 

「ヴィオ〜」

 

「うわっ」

 

アプリルはヴィントに垂れかかると胸元にスリスリと頭をなすりつける。

そして、上気した頬に潤んだ瞳でヴィントを見上げる。

 

「えぇ〜と…リルさん?」

 

「ヴィオ〜」

 

「ママ、ネコさんみたい…」

 

「ヤバいほど可愛い…」

 

ヴィントが頭を撫でるとアプリルは恍惚とした顔を見せる。

 

「ここで襲わないでよ…」

 

「そんなことしませんよ…」

 

「凄くしたそうな顔してるけど?」

 

「テリンさん、メーヒの前で下ネタはやめて下さいよ…」

 

「メーヒのこと一晩預かっても良いけど?」

 

「本当ですかっ?」

 

ヴィントはその言葉を聞きフェアミーテリンに迫る。

 

「そんなに迫らなくても…」

 

「いや、つい…」

 

―――この二人が、みんなが憧れる王子様とお姫様ね〜このラブラブっぷりを見たら何人が泣くやら…

 

ヴィントはメートヒェンをフェアミーテリンに預けると部屋へと嬉しそうに帰っていった。


 

・・・・・・

 

 次の日の朝

 

「うっ、頭が痛い…」

 

 アプリルは頭を抱え、起き上がる。

 

「あれ、何で…裸?」

 

「おはよう、リル♪」

 

「ヴィオ…何で私、裸なの?」

 

「あれ、覚えてないの?」

 

「何が?なんかメーヒもいないし…」

 

「昨日は…」

 

 ヴィントに昨夜の事を聞き、アプリルは何度も赤面した。

 

「いや、昨日のリルは激しかった♪」

 

「うぅぅ、もうお嫁に行けない…」

 

「俺がもらってやるから安心しろ。」

 

 今後はお酒を呑まないようにしようと誓うアプリル

 またアプリルにお酒を呑ませようと考えるヴィント

 そんなアプリルの一日でした。


 

オマケ

 

「昨日はどうだった?」

 

「最高でした♪」

 

「もう言わないで…」

 

しばらくの間、同じネタでからかわれるアプリルだった。

 



 今回は物語の進行にあんまり関係のない話だったので五・五話としました。

 次の六話がいきなり一週間後とかになりそうだったので、日常の補完的な話をと…

 次回もよろしくお願いします。

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