第三章:第五話:初授業
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第三章:第五話:初授業
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昨夜はフェアミーテリンの部屋で夕食を一緒に食べ、そこでこれからは、朝晩の食事を彼女の部屋で一緒に食べることになった。
三人が案内された部屋には二つのベッドと机が二つ、タンスが二つとシンプルな部屋だったが、一応はトイレと浴室もあり、三人は快適に過ごした。
そして、今朝は他の学生達より早めに朝食を終え二人は出掛ける準備をした。
「いってらっしゃ〜い」
「「いってきま〜す(なの♪)」」
ヴィントとメートヒェンはアプリルの送り出しの言葉を背にし、仲良く手を繋いで学院長室へと向かった
「ふぅ、私もテリンさんのお手伝いしなきゃ…」
アプリルもフェアミーテリンのもとへと向かった。
ちなみに、そこで女性同士の話が始まったのだが、アプリルはフェアミーテリンの誘導尋問に引っかかり、恥ずかしい思いをしたのはまた別の話…
『だって、なんとなく腰を気にしてたし…それに、鎖骨の辺りにキスマークが見えるんだもん…』とは、その時のフェアミーテリンの言葉。
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コンコンコン
ヴィントは昨日も訪れた学院長室の立派な樫の木で出来た扉をノックする。
部屋の中から、どうぞ、開いてますよ、というレクトアの声を聞き、ヴィントとメートヒェンは部屋へ足を踏み入れる。
「おはよう御座います、ヴィオ先生、メーヒちゃん。」
「おはよう御座います、学院長。」
「レクトアさん、おはようございますっ!」
「ヴィオ先生って呼ばれるのは、なんとなく照れますね…」
「フフ、頑張って慣れて下さいね…あぁ、それからもう少ししたら、君にいろいろと指導して下さる教師の方が見えますので…」
「はい、わかりました。」
「その間、お茶でも飲みませか?」
「のみたい♪」
「えぇ〜と、ご馳走になります。」
「はい、今、用意しますね。」
レクトアは革張りの椅子から立ち上がり、ケトルを火にかけ、沸騰したお湯で紅茶を蒸らし、カップに淹れるとお菓子と一緒にヴィント達に出した。
そして、三人が紅茶とお菓子を楽しんで少しした頃、樫の扉からノックが聞こえてきた。
「どうぞ。」
「失礼します、高等部教師のレーラーです。」
扉が開き、そこからメガネをかけた二十代前半の若い男性が一礼をして学院長室に入ってきた。
「お待ちしてましたよ、レーラー君」
「学院長、今日はどのようなご用で?」
レーラーはソファーに座っているヴィントとお菓子をパクつくメートヒェンを怪訝そうに見ながらレクトアに尋ねる。
「えぇ、実はそこに座っている彼、ヴィオ君は高等部に新しく入る臨時の教師なんですよ…」
「えっ…生徒ではなく…教師…ですか?」
レーラーは驚いた顔でヴィントのことをマジマジと見る。
その視線を愛想笑いしながら受けるヴィント。
「はい、彼はとても魔法が上手く、優秀な教師になってくれるでしょう…レーラー君には彼にこの学院での仕事などを教えてもらいたいのです。」
「大丈夫でしょうか…魔法が上手くても、彼の若さで高等部の教師というと生徒達も何かと大変そうですが…」
「大丈夫でしょう、彼は人間としても大変優秀ですから…」
渋るレーラーに対してレクトアはヴィントのことを信頼して教師に強く押す。
そこには、次期国王として民衆に支持されなければいけないヴィントが高等部の生徒達を相手に舐められる訳が無いというのと、生徒達をまとめあげる事も出来るという意味を込めての発言である。
ヴィントもそれがわかったのかレーラーに言う。
「若輩者ですが精一杯頑張りますので、どうか御指導ご鞭撻のほど御願いします。」
「うっ、わかりました…ヴィオ君…いや、ヴィオ先生、これからよろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
「では、高等部の職員室に行こうか…これから朝の教職員会議が始まるから少し急がないと…」
「わかりました。」
レーラーは扉の前に立ち、ヴィントも彼に従って後ろについて行く。
そこで二人はレクトアに向き合い、一礼するとレクトアが再びヴィントのことをレーラーに頼んだ。
「では…レーラー君、ヴィオ君のことよろしくお願いしますね。」
「わかりました、しっかりと指導しますよ。」
「えぇ、頼りにしてますよ。」
「いってらっしゃい、パパ♪」
「・・・パパ?」
鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔にレーラーはなった。
ヴィントはいってくるな、良い子にするんだぞ、とメートヒェンに返しながらレーラーにどう説明したもんか…と考えていた。
そんな三人をレクトアがにこやかに眺めている、それは会議が始まる五分前の学院長室での光景だった。
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なんとか教職員会議にはギリギリで間に合った二人は、勢い良く開けたドアに集まる教師達の視線をやり過ごし、席に着く。
会議でヴィントは高等部主担任に臨時教師として教師達に紹介され、またいろいろと波乱あったが、なんとか収拾がつき、今はレーラーと共にヴィントが受け持つクラスへと向かう途中である。
無論、ヴィントが一人で行っても生徒達が信じられないからである。
そこでレーラーは、先程のメートヒェンの『いってらっしゃい、パパ♪』発言の事をヴィントに尋ね、メートヒェンとの関係や教師になった経緯などをヴィントから簡単に説明された。
「さぁ、ここが君の受け持つ『1‐D組』だ。」
高等部はAからEまでの五クラスあり、一つのクラスに四十人の生徒が在籍している。
教室の中からは生徒達の話し声やら笑い声が廊下まで聞こえてくる。
―――あぁ、一応俺より年下にはしてくれたのか…あっ、そういえば、リルと同い年か…
ヴィントがそんな事を考えていると(ちなみに、授業は三学年全部を受け持つ)レーラーはドアを開けた。
「席につけ〜」
「あれ?なんでレーラー先生?」
「オレらの担任って戦争に行かされたから代わりにレーラー先生になったんじゃねえ〜」
「マジで!?やった〜」
生徒達は周りの人達といろんな憶測などを話し合う。
「俺は新しい先生の紹介の為に来ただけだ。」
「新しい先生〜?」
「男、女?」
「男の先生だ。」
「格好いいですか〜?」
「そうだな…まぁ凄い美形だな…」
生徒達はレーラーに矢継ぎ早に質問をし、レーラーの『新しい先生は美形』発言に女子生徒は歓喜の声を上げ、男子生徒はつまらなさそうに女子を見る。
ヴィントは廊下で教室内のやり取りを聞き、少し頭が痛くなった。
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???side
「さて、そろそろ登場してもらうかな…ヴィオ先生、どうぞ。」
レーラー先生がドアの向こう側にいるだろう『ヴィオ先生』に声をかけた。
ガラガラッ
ドアを開け一人の男の子が教室に入ってきた。
金色の髪を靡かせ、教壇の前まで来ると紅い瞳をこちらに向けて私達に挨拶をする。
「二週間程の短い間ですが、臨時で教師になったヴィオです、まだまだ若輩の身ですが、精一杯努力しますのでどうかよろしくお願いします。」
ヴィオ先生は笑顔で自己紹介を終え、ペコリと頭を下げる。
すると教室内に他の女の子達のキャァァァ〜、という甲高い声が上がる。
私も顔がカァァァとアツくなるのがわかる…
そんな私達の姿とヴィオ先生を男の子達はつまらなさそうに見たり、一部の男の子はヴィオ先生に敵意ある視線を向けていた。
「ヴィオ先生!先生、若く見えるけどいくつですか?」
一人の女の子がヴィオ先生に質問した。
「君達の一つ上の十七です。」
「嘘っ!?」
十七歳という私達の一コ上だという驚愕の事実に教室内の至る所から声が上がる。
「本当だ。」
信じられないという私達にレーラー先生が答えてくれた。
「ヴィオ先生って今まで何してたんですか?」
「えぇ〜と…オステンから父親探しの旅かな…」
ヴィオ先生って私と同じオステン出身だったんだ…
なんだか余計に親近感湧くなぁ…このクラスには私しかオステン出身はいないから…
「じゃぁ〜アオと同じオステン出身だね〜」
一人の女の子がそう言うと、ヴィオ先生は何?オステンからの留学生がいるの?と訊き、みんなが私を見る。
「君もオステン出身?」
「はい…オステンからの留学生のアオスラントです…」
「アオスラントか…同じオステン出身として仲良くしような!」
「あっ、アオでいいです…」
私がそう言うと、よろしくな、アオ、とヴィオ先生が言い、他の女子から、あぁ〜アオ、一人だけズルイ〜、などと声が上がった。
私はなんとか話を変えようとヴィオ先生に質問する。
「そ、そういえば、ヴィオ先生って何の授業を教えてくれるんですか?」
「担当は実戦魔法だぞ。」
「さぁ、質問はこれまで!また後で訊きなさい、文句を言わない、これから実戦魔法の授業に移るぞ〜廊下に並べ〜」
すると、レーラー先生は質問を打ち切り、女の子達からえ〜、もっと訊きたい〜、などと声が上がったがレーラー先生はその声を無視して私達に廊下に並ぶように促した。
私達はまだヴィオ先生に質問をしたかったがレーラー先生に従って渋々と廊下に並んだ。
アオスラントside end
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ヴィントと1‐D組の面々はレーラーの先導のもと、屋内魔法実戦場に来た。
『屋内魔法実戦場』
面積がサッカー場の二倍程の広さを持ち、高さも五階建ての建物がすっぽり入る程ある
実戦場にはリングが八つあり、リングの周囲には魔法だけを遮断する障壁が張ってある。
毎年、魔法使いの祭典であるヴェステン魔法杯にも使われる為、実戦場には観客席もあり、広さは半端な大きさではなかった。
「じゃぁ、授業を始めるか…」
「は〜い、ヴィオ先生、今日は何をするんですか?」
「普段は何をしている?」
「えぇ〜と、私達同士で戦って、先生が外からアドバイスしたり…」
「わかった、教えてくれてありがとな…」
「い、いえっ…」
答えてくれた女子にお礼を言うと、その女子は顔を赤くし、それを見た男子は嫉妬し、ヴィントを睨みつける。
―――さて、女子は割と懐柔は楽そうだけど…男子共は…コレは嫉妬か…ハァ、俺はリル一筋なのにな…(←嫁馬鹿)
「今日はお前達の実力を見たいから、俺と勝負かな…」
「えぇ〜大丈夫なんですか?」
「まぁ…いけるだろ…」
その発言に男子達は面白くなさそうに聞いていた。
「まずは男子から行くか…」
ヴィントはそう言うと、リング場に上がり生徒達を見下ろした。
「じゃあ、まずはラオトから行け…」
「いいっスよ、アイツの鼻を明かしてやる…」
ラオトと呼ばれた男子がリング場に上がると他の男子から、あんな野郎やっちまえー、ボロボロにしちまえー、などと罵声がヴィントに浴びせられる。
女子からは、ヴィオ先生頑張って、ラオトなんかに負けないでー、と応援の声が上がる。
「では、試合を始める…両者、準備はいいか?」
「はい。」
「大丈夫ッスよ。」
「始めっ!」
試合開始の合図とともにラオトは杖を構えると詠唱を始める。
「火の精霊サラマンダーよ、汝に宿りし火を我に貸したまえ、火は炎の弾丸となりて、敵を撃つ【フラメ・ワーゲル】(炎の弾丸)」
ラオトは様子見にと、手数の多い炎の弾丸を自分の周囲に浮かべる。
その数は二十を超え、ラオトが杖をヴィントに向けると牽制にと半分の炎の弾丸が襲い掛かった。
ヴィントは炎の弾丸をバックステップで難なくと避ける。
「雷の精霊テスラよ、汝の怒りに染まりし、天を裂く雷で敵を穿て【エルガーン・ドナー】(怒りの雷)」
ラオトはさらに詠唱を唱えると、今度は先ほどより威力も速さもある雷属性の魔法を唱えてきた。
「どうだっ!!もう詠唱も間に合わないだろっ!?ハハハッ」
ラオトはもう勝負は決まったと高笑いする。
「【レフレクスィオーン】(反射)」
「へっ?」
ヴィントに魔法が直撃する寸前、ヴィントはボソッと魔法を発動させた。
ラオトが放った魔法はヴィントが発動させた反射壁に跳ね返され、ラオトに襲いかかってきた。
「ギャァァァ〜」
なんとか避けたものの満身創痍のラオトにヴィントはさらに追い討ちをかける。
「【エルガーン・ドナー】(怒りの雷)」
「なっ、無詠唱!?」
リングの外から生徒達の驚きの声が上がる。
無詠唱で魔法を発動させられる人間が学園の教師にも何人いることか…
無詠唱を唱えることが出来るならば各国の魔法師団長などに推薦されること、間違いナシな程だ。
怒りの雷がラオトに襲い掛かる寸前にヴィントはまた魔法を唱える。
「【アプ・ザーゲ】(取り消し)」
ぶわっ、と魔法が霧散し、ラオトには魔法は当たらなかった。
「さて、次は誰がやる?」
ヴィントはリングの外にいる男子達に声をかけるが誰も名乗りを上げない。
このクラスの中で上位に位置するラオトが目の前で圧倒的なまでにやられたのだ、誰も自ら志願しようとはしなかった…
「あぁ〜、初めにガツンと行き過ぎたか…」
「そうだな…まぁ、吸血鬼を倒すぐらいの実力だからな…」
レーラーの発言に生徒達は戦慄がはしった、自分達と一つしか変わらないヴィントが吸血鬼を倒した事に…
「さてと…俺も授業があるクラス待たせてるからもう行くけど、大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫だと思いますよ…」
「コレがクラス名簿だ、後は頼んだぞ、ヴィオ先生、やり過ぎんなよ…」
レーラーはヴィントにクラス名簿を渡し、実戦場を後にした。
クラス名簿には生徒達の顔と名前、他にも得意な魔法やヴェステン魔法杯の生徒の部での学年順位などが書いてあった。
「へぇ、お前…この前の大会では結構いい成績残してんだな…」
ヴィントは名簿に目を通しながらラオトに声をかける。
ラオトはコクコクと首を振り、それを見たヴィントは、少しやり過ぎたか…などと考えるが、すぐに思考を変えた。
「よし、俺の実力もわかっただろうし、次からはちゃんと教師として見ろよ、男子共!」
「ハ、ハイッ!」
男子達は一斉に返事をする。
「それじゃ、次に行くぞ〜」
こうしてヴィントの初授業は過ぎていった。
次のクラスも同じように授業をやり、とりあえずは自分の実力を見せ付けて、教師としての威厳を手に入れていったヴィント…
そして、お昼にはもう新しい臨時教師の噂が高等部内の大多数には広まっていた。
・・・・・・
オマケ
「ヘックシッ…風邪か?」
「パパ、だいじょうぶ?」
「きっと皆さんがヴィオ先生の事を噂しているんですよ…」
レクトアはクスクス笑いながらヴィントに言う。
メートヒェンの様子を見るついでにお昼をレクトアのところでご相伴を預かるヴィントだった…
今回の登場人物は、レーラーとアオスラント、ラオトの三人ですね。
まずは先生のレーラーから、彼の由来は【先輩】です。
次にアオことアオスラント、彼女は【留学】からきてます。
最後にラオト、彼は【うるさい、騒々しい】から取りました…
上記の三人はそれなりに登場回数が多いと思います。
ちなみに前回から少し文章の書き方を変えてみたんですが…わかりますかね?
地の文章の頭に空白を入れてみたんですが読みやすくなったでしょうか?
さらに今まで第三者視点で文章を書いていたんですが…今回、アオスラントsideの部分だけ彼女の視点にしてみました。 ちょくちょくと文体が変わってる気がしますが、皆様の広い心でお読みいただけるなら幸いです。
次回もよろしくお願いします。