表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/47

第二章:第十一話:家族の絆

 

第二章:第十一話:家族の絆

 

・・・・・・

 

朝になり、三人は朝食を取った後に出発の準備を始めた。

準備が終わりシュヴァンゲレに別れの挨拶をして、次の目的地ファミーリエに行くため首都を発った。

 

・・・・・・

 

途中でいろいろあったものの夕暮れ時にはファミーリエに辿り着いた三人。

のどかな村だがどこか違和感がある…

 

「やっと着いた…」

 

「ついたの♪」

 

「少し疲れたな…」

 

「ねぇ、メーヒは何であんなに元気なの…?」

 

「ハーフだからかな?」

 

「そっかぁ…」

 

アプリルはヘトヘトになっているが、混血の二人はあまり疲れをみせない。

ヴィントは畑仕事から帰る途中の人にユンゲラーの家を教えてもらい、家に訪ねに行くことにした。

 

「なんかこの村変じゃない?」

 

「そうだな…何か違和感が…これは怯えているのか?」

 

「怯えている?」

 

「あぁ、それに…そこらかしこに傷跡が…何かに襲われたのかもな…」

 

「盗賊か魔物かな?」

 

「そのどちらかだろうな。」

 

「あっ、あれかな?」

 

「多分な…」

 

二人が村の異変について話している間に目的の家に着いた。

アプリルはメートヒェンの手を握りしめ、ヴィントがドアを叩く。

 

「は〜い、どちら様ですか?」

 

家の中から女性が出て来た。

 

「すみません、ユンゲラーさんを訪ねてきたんですが、ご在宅でしょうか?」

 

「主人なら居ますが…あなた達は?」

 

「この娘の母親のことを伝えに来ました。」

 

「この娘?っ、メートヒェンッ!?」

 

「どうしたんだ?タンテ」

 

「あ、あなた」

 

「お客さんか?」

 

家の中から男性、ユンゲラーが玄関の様子を見に出て来た。

 

「あなたがユンゲラーさんですね?」

 

「ん、私がユンゲラーだが君は?」

 

「俺はヴィオと言います、こっちがアプリルでこの娘が…」

 

「メートヒェンッ!?どうしてコイツが?」

 

―――コイツときたか…やはりあまり良い関係ではなさそうか…

 

「少し複雑な事情がありまして…」

 

「まあ、玄関先で話すのもなんだ、とりあえず家にあがりなさい。話はそれからにしよう。」

 

「お邪魔します。」

 

ヴィントの後に続き、アプリルとメートヒェンも家にあがる。

メートヒェンはアプリルの手を握りしめ、いつもの笑顔が嘘のような顔をしている。

居間に行くと赤ちゃんがひとりベッドに寝ている、それを見ていたヴィントにユンゲラーが答えるように言う。

 

「あぁ、息子のゾーンだ、先月産まれたんだ。」

 

「息子さんですか…」

 

五人はテーブルにつく、向かいにユンゲラー夫妻、手前がヴィントとアプリル、メートヒェンはアプリルの膝の上に座り、さらにクマのヌイグルミを抱きしめている。

 

「では、話を聞かせてくれないか?」

 

「わかりました、始めにあなたの姉のエルテレさんの事から…」

 

ヴィントはエルテレさんが盗賊に襲われて亡くなった事を話し、最後の言葉を聞いてユンゲラーを訪ねにきた事を話した。

 

「そうだったのか…姉さんが…」

 

しかし、あまり驚く様子も悲しんでいる様子も見られずアプリルが尋ねる。

 

「あまり驚かれないんですね?」

 

「いや…」

 

「エルテレ義姉さんは先月村を追い出され、とっくに死んでるかと…」

 

「タンテッ!」

 

「何よ!魔族の子供なんか産んで村を追い出されたら、そう思って当然じゃない!それに実際にそうなったじゃない!」

 

「わかったから、落ち着け…それからお前はゾーンを連れて少し席を外してくれ…」

 

「フンッ、わかったわよ…」

 

タンテはゾーンを抱きかかえ部屋を出て行く…その様子を見てユンゲラーがため息をつく。

 

「見苦しいところを見せてしまったね…」

 

「いえ…」

 

「・・・」

 

「メーヒ、大丈夫だから…ね?」

 

アプリルはメートヒェンを抱き締める。

 

「それで、メートヒェンの事なんだが…ウチにはゾーンもいて…」

 

「いいですよ、私達が家族になりますから、アナタ達の代わりに私達がこの子を愛しますから!そう、エルテレさんの墓前で誓いました。

それにメーヒがここに…この村に居たらこの娘は…不幸になる。」

 

アプリルは強い眼差しでユンゲラーを見る。

 

「しかし、その娘は…魔族との…」

 

「ユンゲラーさん、その事についても大丈夫です、俺達はその事も含めてメーヒを大切にしますから…」

 

「そうか…私もただ一人の肉親の姉さんの事をもう少し理解してあげる事が出来たのではと、今更ながら気付かされたよ…」

 

「ユンゲラーさん…」

 

「しかし、アプリル君の言う通りだ、メートヒェンがここに居ても辛い思いをするだけだ、ヴィオ君、アプリル君、どうか姪を…メートヒェンをよろしく頼む…」

 

ユンゲラーはテーブルに額をこすりつけ

、二人に姪であるメートヒェンの事を頼むであった。

 

「ユンゲラーさん、顔を上げて下さい。」

 

「しかし…」

 

「あなたの頼みは俺達かしっかりと聞き届けましたから大丈夫です…俺達はメーヒを大切に、幸せにしますから安心して下さい…」

 

「それにもう私達は家族ですから…一緒に歩いて、笑顔でご飯を食べて、夜は三人で川の字で仲良く寝て、ねっメーヒ?」

 

「パパ、ママ」

 

メートヒェンはアプリルに抱きつくと泣き出した。

 

「うっ…グスッ…うぅっ…」

 

「どうやら心配は要らなさそうだね…」

 

「まかせて下さい!」

 

「ありがとう、ヴィオ君、アプリル君…

 

ユンゲラーが二人にお礼をする。

その後思い出したように二人に尋ねる。

 

「そうだった、この後どうするんだい?」

 

「この後は、宿を探して…」

 

「なら、ウチに泊まっていかないか?それにこの村に宿は無いからね…」

 

「でも、タンテさんは…」

 

「大丈夫だ、話せばわかってくれるよ…それに最近は特に物騒だからね…」

 

「やはり何かあったんですか?」

 

「あぁ、魔物の群れがこの辺りを彷徨くようになってね…最近は夜になると村にもやってくるんだ…」

 

「そうだったんですか…ではお言葉に甘えて、一晩お世話になります。」

 

こうして、三人は一晩ユンゲラー宅にお世話になることになった。

やはりタンテはいい顔をしなかったが、ユンゲラーがあいだに入ることでメートヒェンやエルテレの事を悪く言う事はなかった。

当たり障りのない世間話をしながら夕食をご馳走になった。

 

「「「ご馳走様でした。」」」

 

「お粗末様…」

 

「さて、君達を部屋に案内しようか、ついてきなさい。」

 

ユンゲラーに案内され三人は客室に通された。

そこはベッドが二つだけある簡素な部屋だった。

 

「何も無い部屋だが…」

 

「いえ、泊めていただくのに贅沢は言いませんよ…この部屋を有り難く使わせてもらいます。」

 

三人は部屋を借り、談笑していると家の外から微かに悲鳴が聞こえてきた。

 

「ッ!?」

 

「?」

 

「どうした?リル、もしかしてユンゲラーさんがさっき言ってた魔物の群れか?」


 

「多分ね…何かが壊れる音もするし…」

 

ヴィントは外の様子を見るために窓を覗く、するとそこには、おびただしい数の魔物が村を襲っていた。

 

「やばいな…このままじゃ、この村にいる人達全員が皆殺しだぞ…」

 

「ヴィオ、どうする?」

 

「そりゃ、俺達も他人事じゃないし…それに、こんなエルテレさんとメーヒを追い出した村でも、メーヒの生まれた故郷だ、無碍には出来ない。」

 

「そうだね…」

 

「俺は外に出て魔物を相手にするから、リルはメーヒとユンゲラーさん達を頼む。」

 

「わかった!」

 

「メーヒもリルのそばから離れるなよ。」

 

「うん!」

 

「よし、良い子だ。」

 

ヴィントはメートヒェンの頭を撫で、窓から外に飛び出る。

 

「メーヒ、ユンゲラーさん達のところに行こう。」

 

「うん!」

 

アプリルも弓と矢を持ち、ユンゲラー達のところへ向かう。

 

・・・・・・

 

ヴィントside

 

ヴィントは剣を抜き、魔物を斬り倒して行く。

 

「チッ、キリがない…」

 

ザシュッ、バサッ、ドスッ

 

ヴィントは魔物達を斬って、裂いて、突き刺す。

 

「魔法はあまり乱発したくないが…【アル・フリーレン・アーテム】(全てを凍らす息)」

 

ビュォォォ

 

周囲の気温を絶対零度に達しようかという極冷の息が魔物達を襲う。

その息を浴びた魔物達が一瞬にして生命が停止していく。

 

「砕け散れ」

 

ガッシャーン

 

ヴィントの言葉で魔物達は全て砕け散っる…しかし、魔物達の数は一向に減らない。

 

「本当にキリがない…」

 

―――魔法使って一気に終わらせたいけど、大規模な魔法だと俺がこの村を吹き飛ばしちまうし…

 

「【ウンターゲーエン・アインラーデン】(滅びへの誘い)」

 

空気が波となり魔物達を飲み込んでいく…魔物達は【滅びへの誘い】を受け、体を砂にして崩れ落ちていく…

これであらかた片付けたかという時…

 

ドオォォォン

 

「なっ!?」

 

ヴィントが村で暴れている魔物達に苦戦している間にユンゲラー宅が数匹の魔物に襲撃されていたのだ。

 

「チッ、リルとメーヒがやばい!?」

 

ヴィントは二人のもとへ駆け出す。

 

ヴィントside end

 

・・・・・・

 

アプリルside 

 

ヴィントが窓から出て行った後、アプリルは弓と矢を手に取り、メートヒェンを連れてユンゲラー達のところへ行くと

まだ村が襲われているのを知らないのかお茶をしているユンゲラーとタンテがいた。

 

「あの…」

 

「あぁ、君たちか…、どうしたんだい?そんな物持って…、家の中に居れば大丈夫だよ…、あれ?ヴィオ君はどうしたんだい?」

 

「パパはおそとにいったの…」

 

「ハァ、何の為に行ったのよ?」

 

「それは…」

 

アプリルは村におびただしい数の魔物が居たことを伝える。

そして、村を襲っていることと、ヴィントが魔物達を倒しに行った事を伝える。

 

「なっ、ただ彷徨いているだけじゃなくて村を襲っている…」

 

「本当なのか?」

 

「はい、ヴィオがこのままじゃ村が危ないって…それで私達はユンゲラーさん達と一緒に居た方が安全だから…」

 

「そうか…」

 

アプリル達になんとも言えない空気が流れる…

四人はとりあえずお茶を飲んで落ち着くことにしたが…その時、

 

ドオォォォン、ガラガラッ

 

「「「「!?」」」」

 

突然居間の壁が音を立て崩れ落ちる。

 

「なっ、魔物!?」

 

「下がって!ハッ!」

 

アプリルはユンゲラーに後ろに下がるように言うと、弓に矢を掛け弦を引く。

その後も弓を引いて魔物達を牽制するが…

 

「キャッ!?」

 

「ママッ!」

 

弓だけで応戦するのは無茶だったようで、魔物に接近を許してしまった。

 

「グギャアァァ」

 

さらに仲間を殺され怒った魔物が全員を殺せる程大きな火の玉を放ってきた。

 

「!?」

 

「キャァァ」

 

「そんなっ」

 

三人が駄目だと思った時…

 

「みんなをいじめちゃダメ〜〜〜」

 

バシュッ

 

メートヒェンが火の玉の前に飛び出すと、火の玉をメートヒェンが発動させた不可視の力で魔物達に弾き返す。

 

ドォォォン、パチッ、パチッ

 

「なっ…、メーヒ…?」

 

「はぅ」

 

メートヒェンは力を使ったからか気を失う…

 

「メッ、メーヒ!?」

 

「メートヒェン…」

 

「助かった…?」

 

アプリルがメートヒェンに駆け寄ると、二人は目の前で起こったことにただただ驚くだけだった。

 

アプリルside end

 

・・・・・・


 

ヴィントがユンゲラー宅に着くとそこには、壁が半壊し、魔物達が焼け死んでいる光景だった…

 

「コレは一体…?っと、リルとメーヒは無事か?」

 

ヴィントは半壊した壁から家の中を覗く。

 

「あっ、ヴィオ…」

 

「無事か?って、メーヒッ」

 

ヴィントは慌てて二人のもとへ近寄り、メートヒェンの心配をする。

 

「えっと…」

 

アプリルはさっき起きたことをヴィントに話す。

 

「きっとそれは吸血鬼の能力だな…で、リルの危機に能力が暴走したんだろうな…」

 

「そっか…メーヒ、大丈夫かな?」

 

「多分な、普段使わない力だったから体が追いつかなかっただけだよ。」

 

「外の魔物は?」

 

「あらかたは始末した。後は逃げちまった。」

 

「もう大丈夫かな?」

 

「流石に今夜はもう来ないだろ…それよりメーヒをベッドに寝かせようぜ。」

 

「あっ、うん」

 

ヴィントはメートヒェンを抱き上げると先ほど借りた部屋に移動する。

 

「あっ、ユンゲラーさん達はどうします?」

 

放心していたユンゲラーはヴィントの言葉で我に返り返事を返す。

 

「あっ、あぁ…私達も部屋に戻るよ。」

 

「そうですか、何かあったら言って下さいね。」

 

「ありがとう…タンテ、私達も部屋に行こうか?」

 

「ハイ、アナタ」

 

二人も息子を連れ部屋に戻って行く。

こうして、魔物の襲撃という事件は終わりを告げる。

 

・・・・・・

 

朝になり、ヴィント達は村を出発する。

見送りにユンゲラー夫妻が村の出口まで来てくれることになった。

 

「泊めてもらってありがとうございました。」

 

「いやいや、こちらも君達には助けてもらったからね…逆にこちらがお礼を言わないとな…」

 

「そんな、私達は当たり前の事をしただけですよ…」

 

「そうか…とにかく、ありがとう…気をつけて行っておいで。」

 

「ハイ、お世話になりました。」

 

「タンテさんもありがとうございました。」

 

「いいわよ、そんな…」

 

「ほら、メーヒも挨拶しないと…」

 

「おじさん、おばさん、ありがとうございました。」

 

メートヒェンはアプリルの足に隠れながら二人を見上げてお礼を言う

 

「いいんだよ、メートヒェン、またおいでね…ここは君の生まれた村なんだから…」

 

「はい!」

 

ユンゲラーの言葉に嬉しそうに返事をすると今度はタンテがメートヒェンの名前を呼ぶ。

 

「メートヒェン」

 

「なに、おばさん?」

 

「昨日はありがとうね、助かったわ…」

 

「きのう?」

 

メートヒェンは自分が不可視の力を使ったことを覚えておらず、何のことか判らずにいた。

 

「覚えてないみたいね…まぁいいわ、ユンゲラーも言ったようにまた来なさいね、その時は腕を振るってご馳走作るからね…」

 

タンテは微笑むと、メートヒェンのことを受け入れると言う。

 

パアァァァとメートヒェンは破顔すると元気よく返事をする。

 

「ありがとう、おばさん♪きっと、またくるね♪」

 

「おばさん、じゃなくて、タンテさんって呼びなさい。」

 

「うん、タンテさん!メーヒのこともメーヒって呼んで♪おじさんも!」

 

「あぁ、メーヒ」

 

「メーヒ、いってらっしゃい…ヴィオ君とアプリルちゃんに我が儘言っちゃダメよ!」

 

「メーヒよいこだもん…ねっ、ママ?」

 

アプリルの顔を見上げてメートヒェンは尋ねる。アプリルは苦笑してタンテに言う。

 

「メーヒは良い子だから心配しなくても大丈夫ですよ…私達もまたこの村に寄らせてもらいますね…メーヒと一緒に。」

 

「ええ、待ってるわ…」

 

三人は笑顔で会話をしている。

男二人はその微笑ましい光景を嬉しそうに見る。

 

「良かったですよ…メーヒがユンゲラーさん達と和解出来て…ただ一人の肉親と絶縁状態じゃ可哀想ですもんね…」

 

「あぁ、和解出来たのも君達のおかげだよ…これからもメーヒのことをよろしく頼むよ。」

 

「はい、安心してお任せ下さい。」

 

三人は笑顔で別れの挨拶をし、ファミーリエの村を去った。

 




今回の登場人物は、ユンゲラーの妻のタンテと息子のゾーンです。

タンテの由来は【叔母】です、メートヒェンの叔母からきてます。

ゾーンは【息子】が由来です。

ちなみに作者は携帯のメールで執筆しているのですが、今回初めて入力文字数を越えました…前まで誰が一万も文字をうつか(実際は全角で五千ですが)?とか思ってましたが…自分が一万いくとは考えてませんでしたよ…

これからもこの作品と作者をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ