第二章:第四話:三下三人衆再び・・・
よく作者の考えと違うところでキャラクターが勝手に動く、と聞きますが本当に勝手に動くんですね…実感しました。
第二章:第四話:三下三人衆再び・・・
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昼食を済ませた二人は一旦、首都シェントゥルムを目指し、出発する。
雑談をしながら歩みを進めること数時間、二人は森の中を歩いていた。
「そろそろ休憩にするか?」
「うん、そうだね♪」
「結構歩いたのに元気だな…」
「そりゃあ、田舎育ちですから。
毎日、朝から日が暮れるまで働いてたからね〜、体力もつくよ。」
二人は少しひらけたところを見つけた。
ヴィントは【箱】を出して紅茶一式を取り出し一息つく。
「歩いて喉が渇いてたからさらに紅茶が美味しい♪」
「あぁ、そうだな。」
ヴィントもお茶菓子をつまみながら応える。
紅茶も飲み終わり、【箱】にヴィントが紅茶一式を仕舞っていると
「それにしても、ヴィオに逢って本当に良かったよ…あの時、助けてもらったことをきっと忘れないよ…」
アプリルが二人の出逢いを思い出して、ヴィントに話し掛ける。
その時、彼女の耳に悲鳴が聞こえてきた。
「ねぇヴィオ、誰かが悲鳴をあげてる…」
「ん、・・・俺には聞こえないけど?」
「いや、あっちの方っ!」
アプリルは悲鳴が聞こえてきたという方へ駆けていった。
「待てよ!お前が先に行ってどうする!?」
【箱】を戻し、アプリルを追い掛ける。
「やっと追いついた…で、どこだ?」
アプリルは木の後ろに隠れて遠くを見ている…
「あれなんだけど…」
「あれは三人かな?魔物に襲われてる?」
「あれ、昨日私を襲った人達だよ…」
「!、どうする?助けるか?俺はあまり気が進まないけどな…」
「う〜ん、結局ヴィオに助けてもらったし、あの人達も大変そうだから助けてあげて…」
「了解、じゃあ行くぞ、リルは俺の後ろに…」
「うん」
二人は三人達のもとへ走って行った。
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三下三人衆side
「クソッ、ついてない」
「あぁ、どうする?このままじゃヤバくないか?」
「来るぞっ、目の前の魔物に集中しろ!」
三人の周りを狼のような魔物の群れが囲んでいる
「チッ、昨日の奴の次はコイツらかよ…ゲルプ、そっち行ったぞっ」
「おうっ、けど女は逃がすし、魔物には襲われる…本当に嫌になるぜ…クソッ、ブラウ後ろだっ!」
「フッン、まったくだな、それにしても減らないな…ん?ロート、上だっ!」
「えっ?うっ、うわぁ〜〜〜」
「「ロートっ!」」
二人は傷を負わされたロートに駆け寄る
「くっ」
「大丈夫か?」
「チッ、このままじゃ…」
「グルルルゥ〜」
三人はじりじりと後ろに下がるがジリ貧になり、防戦一方でどうする事も出来なくなっていた。
「【エルガーン・ドナー】(怒りの雷)」
ドガッシャーン
三人の前にいた数匹の魔物が黒焦げになり、絶命した…
「えっ?」
「なんだ?」
「おい、アイツらは昨日の…」
三下三人衆side end
・・・・・・
そこには不敵な微笑いを浮かべた少年と少年に隠れた少女が立っていた…
「なっ、お前らはっ」
「どうしてこんなところに?」
「それになんで俺らを?」
「よう、本当は俺らなんか助けるのも面倒だが…ウチのお姫様に頼まれたからな、仕様がないが助けてやるよっ!」
ヴィントは剣を抜き肉薄すると…一瞬、魔物達の血が飛び散る。
「喰らえ【ブルート・レーゲン】(血の雨)」
魔物達の飛び散った血が槍の雨の様に魔物達に突き刺さる。
「きゃぁっ!」
ヴィントがアプリルから離れた隙に数匹の魔物達がアプリルに迫る。
「リルっ、【エーアデ・ゾイレ】(土の円柱)」
ズズズズズズ・・・・・・
アプリルの足下から半径1m程の大きさの円柱が3mの高さまで伸びる。
「きゃっ、えっ?うわぁ〜少し高いね...」
「そこで見てろっ!」
「うん」
魔物達はアプリルに近付けないない事がわかるとヴィントに狙いを定め、全匹で迫っててきた。
「突き刺されっ【エーアデ・シュタッヘル】(土の棘)」
ザザザッ
ブシュシュッ
ヴィントに襲いかかってきた魔物達に地面から円錐形の棘が襲い、全ての魔物が絶命した…
「悪いな…せめて安らかに逝け【ヒメル・ゼンデン・リヒト】(天国へ送る光)」
パアァァ
魔物達の死体が光に包まれ、空に飛んでいく…その場には死体が跡形もなく消えて無くなった。
「あの数の魔物を軽々と…」
「化け物だ…」
「圧倒的だ…俺達とんでもない奴に喧嘩を売ったな…」
「戻れ」
ヴィントが命じると円錐形の土とアプリルを乗せた円柱が元の状態に戻った。
「ふぅ、びっくりした…ヴィオは怪我ない?」
「あぁ、リルも怪我は無さそうだな…」
「うん、大丈夫だよ…」
「さてと…」
二人はお互いの様子を確かめ合うと、男達の方へ振り返る。
「「「・・・」」」
「行くか、リル」
「えっ?」
「「「はっ?」」」
「なんだ?他になんかあったか?」
「いや…無いけどさ…」
「あっ、そうだった、次に何か悪さしてるのを見つけたら容赦しないからな…
もしコイツに手を出したら地獄に落とすからな…リル、行くぞっ!」
「あっ、うん」
ヴィントは真っ直ぐ前を向き、アプリルは後ろをチラチラ見ながらも、二人が先程きた道へ戻っていった。
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三下三人衆side
「何だったんだ?アイツらは?」
「助けに着てくれたのか?それにしてもアイツらデキてたのか…」
「そもそも誰があんな奴に喧嘩売るかよ…」
三人は口々に呟き、今後について確認し合う。
「アイツらも首都に向かうみたいだな、どうする?ゲルプ、ブラウ」
「行き先変えちゃうか?」
「いや、このまま首都に向かおう…ただ、しばらくは大人しくしてようか。」
「そうだな…」
「あぁ…」
「そうだっロート、傷は大丈夫か?」
「ん?あぁ、かすり傷だ…痛っ」
「我慢するなよ、すぐに治療するからな…」
「ロートは無理をするからな、ゲルプ、頼んだぞ。」
三下三人衆side end
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「あの人達大丈夫かな?」
「あんなことあったのに、アイツらの心配までしてリルは優しいな…」
「そんなんじゃないけど…」
二人は先程休憩していた場所まで戻ってきていた。
「アイツらもそれなりに旅をしてきたんだ、大丈夫だろ…」
「それもそうだね、日が暮れる前に先を急ご・・・ん?」
「どうした?リル?」
「待って…翼が羽ばたく音がする…何かが飛んでくるっ!?」
「どっちからだっ?」
「あっちの方」
アプリルは北西の方角を指差した。
「見えるか?」
「う〜んと、黒い翼の鳥?いや、ヒ…ト…?」
今回の登場人物は、ロート、ゲルプ、ブラウの三下三人衆です。
再び登場ですね…最初は名前も無く一度きりの脇役だったのに…何故?
この三人を助ける話は、最初のプロットにも入っていないに…不思議だ。
さて、三人のリーダーのロートは【赤】という意味です。
次にムードメーカーのゲルプ、彼も色で【黄】です。
最後に参謀役のブラウ、彼も色で【青】です。
基本的に会話は、上からロート、ゲルプ、ブラウの順を繰り返しています。
また作者の考えて無いところでシグナル(信号機)トリオが出るかも知れないですね…
次回もよろしくお願いします。