#17(裏):本当に私は何をしているのだろう?
屋上手前の階段。
夏休み前まではいつ来ても誰もいなかった――時折、彼女の読書スペースとなっていただけのその場所。
しかし、今はそこに1組の男女が座っている。
女子の方は夏休み前まで不登校であった生徒らしい。彼女は名前すら知らなかったが、結構有名な生徒であるようだ。
一方、男子の方は……良く知っている。親友の幼馴染であり、一応同じ委員会のクラスメートだから。
その2人をここで始めて見たのは、夏休みが明けてから3日後のこと。
昼休み、久しぶりに1人静かに本を読みたいと思い、お気に入りのこの場所に訪れたその時だ。
その日から毎日。いつ来ても、必ず2人の姿がそこにはあった。
特に会話もなく、時折風に吹かれたパンの包み紙が音を奏でるのみ。
そんな、少し異質な空間が。
少し余談だが、一度だけ委員会の仕事をさぼってここに来てみた事があるのだが、その時は誰もいなかった。待てども、待てども。
男子の方は委員会の仕事があるのでこないのは当然なのだが、女子の方は来るだろうと。
そこで少し聞きたいことがあったから、普段の彼女なら決してやらない不真面目な行為に踏み切ったのだが。
結局、チャイムが鳴るまで誰もこなかったため、流石にサボる予定はなかった委員をサボる結果となってしまい、その放課後図書室の掃除をさせられたのは苦い思い出。
あの日はたまたま来なかったのだろうが。
その女子生徒の気まぐれに抱いた理不尽な怒りは、別の日の委員会の仕事でしっかりと男子に発散したため、何でも抱え込んでしまう引っ込み思案な方の親友の様にストレスで寝付けない――といったことにはなっていない。
まあ、それはさておき。
今日も今日とて、もう日課のようになってきていた覗き……基、人間観察。
『そうだな。お前――白告に興味があるから――という答えで良いか?』
『は……ぼ、僕?』
『いや、やはり違うな』
『はい?』
自分は毎日毎日、一体何をしているのだろうか?
そんな疑問が生じてきていた最中。定位置の階段踊り場一歩手前にたどり着くと、いつもと違い断続的な話し声が聞こえてきたものだから、彼女にしては珍しく”無意識の内に身体が動く”という動作を行っていた。
……まあ、少し前のめりになっただけだが。
『白告。そして、佐知。2人に興味があるから中学にきている――それが正しい答えだな』
親友の名前が出てきても、今度は身じろぎ一つせず。
ただただ静かに耳を立てるのみ。
人間観察中に物音を立てるなど、論外だから。ましてや、物陰から顔を覗かせるなど、それは見つけてくださいと言っているようなもの。
……まあ、そんなことをする馬鹿はいないと思うが。
『どうした?』
『……いや、別に』
会話はそれっきりで、その後はいつもどおり。時間だけが過ぎていった。
昼休みの終了が近づくと、まず初めに男子がその場を後にする。
その後、丁度1分後に女子が去っていく。
その際、彼女は見つからないように1つ下の階まで降りている。
そして女子の足音が完全に聞こえなくなってから、そっと姿を表す。
誰もいなくなった屋上手前の階段。
最後に意味もなくそれを確認してから、何食わぬ顔で男子が先に帰っている教室へと戻っていく。
――本当に私は何をしているのだろう?




