#17:白告は……
・冬馬葵
彼女への印象を街角インタビューし、大半の生徒から返ってくる答えは、
・大人っぽい
・謎が多い
・近寄りがたい
・別次元
と、まあこんなところだろう。
つまり要約すると、”なんか怖い”といったところか。
下手に触れるぐらいなら、眺めてるだけでいいや、と。
遠巻きに遠慮ない視線は送るものの、決して誰からも触れようとはしない。そして、冬馬葵本人から誰かに触れることもしない。
それは、彼女が普通に学校へ通うになってから1ヶ月経っても変わらず……。
「まあ、その方が気楽で良い」
と、冬馬葵。
昼休みの今。もう10月とはいえ、屋上手前の階段といった微妙に蒸し暑く陰鬱とした空気漂う場所に寄り付く物好きは、そうそういないだろう。
「そう思えるのは、ある意味羨ましいよ」
「羨ましい?」
「僕も別に無理してまで誰かと仲良くしたいとは思わない。けど、体育で2人組を作れ――とか言われたとき、自分1人取り残されるのって何か恥ずかしいだろ?」
物好きのもう一人――白告浩雪は葵の横に座り、昼ご飯の菓子パンの包を開ける。
「何が恥ずかしいんだ?」
「え、いや……」
余りにもさらっと返されたものだから、一瞬反応に詰まる。
今の葵の表情を見るに、これはからかっているのではなく、本気で疑問に思って聞き返している。
それが理解できるが故、理解できない。
「それよりも、私はお前のことの方が理解できない」
「……って、え? 僕?」
またもや斜め上からの言葉が降ってきたものだから、さらっと心を読まれている事にも気づかす。
「何故、お前――白告は毎日毎日ここに来てご飯を食べている?」
「それは……別に特に理由は?」
「別に特に理由もないのに、わざわざこんな教室から遠い所まで?」
「そ、それを言うなら冬馬だって」
「私が何か?」
「冬馬は何でこんな所でご飯食べてるんだよ?」
「教室に居ても意味のない視線が鬱陶しいから」
「うっ……じゃ、じゃあ………何で急に学校来るようになったんだよ? 確か、中学なんて行く意味ない――とか言ってなかったか?」」
流石、冬馬葵。鉄壁の守り。何を聞いても、サラッと返答してくる。
言葉に詰まった浩雪は、話の流れと全く関係ないと理解していながらも、今度こそ葵の守りを崩せそうな切り札を切っていた。
1ヶ月前。夏休み明けのあの日から、いつ聞こうかとタイミングを伺ってはいたものの、ずるずると時間が経ち、妙に聞きづらくなっていっていたこの話題。完全に勢いで切ってしまったのだが、浩雪としては逆に良いタイミングであったのかもしれない。
「そうだな。お前――白告に興味があるから――という答えで良いか?」
「は……ぼ、僕?」
「いや、やはり違うな」
「はい?」
葵の言葉に、疑問より先に何故か嬉しさを感じてしまっていた。
しかしその感情は、葵がすぐさま首を振ったことで、浩雪の脳内には残らず、結局疑問だけが居座ることに。
「白告。そして、佐知。2人に興味があるから中学にきている――それが正しい答えだな。それより、白告は何故私のことを……」
その言葉に、今度こそ嬉しさを……感じることはなく。佐知の名前を聞いた途端、どこか苦い表情に。
その反応は流石に想像していなかったのか。今度は葵のほうが首を捻る番となり、言いかけていた言葉も途中で途切れる。
「どうした?」
「……いや、別に」
そっぽを向いてそう答える浩雪。
葵はその横顔を数秒じっと見続けるも、特にそれ以上触れることもなく。先程言いかけていたことを改めて口にすることもなく。
その後は、いつもどおり会話もなく、ただ時だけが過ぎていった。
――白告は……




