#13−1:勉強!
「正解。良くわかったな」
「まあね。……灯台下暗しだったけど」
商店街の中にひっそり佇むゲームセンター。
放課後のこの時間、普通のゲーセンならば学生で賑やかになるのだろうが、この不気味なゲーセンにいる若者は浩雪と葵の2人のみ。後は小太りの中年男性に、幾日よりやつれた様子のスーツ姿の男性。ついでに黄色い制服を着た店員――以上……?
「ちなみに、どうやってあの愉快トリオを見つけたんだ?」
「僕の知り合いが、たまたまその愉快トリオとやらの知り合いでね」
「へぇ。そっちの方法だとは、流石の私も予測できなかったな。白告、人脈多そうに見えないし」
「…………」
「てっきり、この1ヶ月地道に2組の奴らを一人一人尾行でもして、運良く探し当てたんだと思ったんだけど」
「……………………」
「ん、どうした?」
「あっ、いや、何でも? そんな、僕が梅川みたいなバカなことするわけないじゃないか?」
「……ああ、確かにそうかもな」
「そ、そうだろ?」
「あんな丸わかりの尾行じゃ、流石の愉快トリオでも気づくだろうし」
「え……?」
軽く口角を上げた葵は、浩雪の後方をチラと見るようにして答えた。
その視線につられる様に浩雪も後ろを振り返るも、そこには肩を落としたスーツ姿の男性しかない。
首を傾げながらも、約1ヶ月ぶりに顔を合わせた少女の方へと向き直る。……聞きたいことがありすぎて、時間がもったいないから。
「それで、僕は愉快トリオ――冬馬の盗撮写真を撮ってたやつらを見つけたわけだけど」
「そうか。おめでとう」
「おめでとうって……」
あまりにもサラッとした受け答えに、一瞬ペースを乱される。
1ヶ月経っても、やはり葵は何も変わっていなかった。そのことに何故か安心している自分に、しかし浩雪が気づくことはない。
「何だ、不満そうだな。パンツでも見るか?」
「なんでそうな――ってだから捲るなっ!」
あまりにもサラッとしたパンチラに、完全にペースを乱される。
1ヶ月経っても、やはり葵は何も変わっていなかった。同じく1ヶ月経ってもからかわれている自分に、浩雪がやるせなさを抱いたのは言うまでもない。
「ったく。お前は僕にパンツを見せるのが趣味なのか?」
「確かに、白告の反応は見てて面白いな」
「……とにかく、僕はあの3人を見つけた」
浩雪がそっぽを向きながらも強引に話を進めると、葵は「何だ、つまらん」と捲っていたスカートを下ろす。
ようやく普通に会話ができるようになり、変な疲れを感じつつもほっと一息。浩雪はようやく本題に入るべく、若干早口で話し出す。
「確かに冬馬の予想通り、あの3人が冬馬の写真を撮っていたのは事実だ。何でそんなことをしてたのかは……分からないけど」
「どうせ面白そうだから――とか、暇だったから――とか。馬鹿な理由だろ。白告が分からないのも無理はない」
「……とにかく、あの3人がストーカーの正体だった。でも、もう今はやってないらしい」
「あの3人に聞いたのか? 白告が?」
葵にしては珍しく、素で驚いた表情を見せる。
その反応に思わず言い返したくなるも、しかし反論はできない。なぜなら、
「……聞いたのは僕の知り合い……の知り合いだけど。でも、”もう飽きた。私達も暇じゃないし?”とのこと……です」
どんどん尻すぼみになりながらも、同じ図書委員のツテで聞いた話を口にする。
それを聞いた葵は、「確かにあいつ等らしい答えだな」と、嘲笑混じりに答える。
その反応に、複雑な表情を浮かべた浩雪。何とか自然な声音を意識して、会話を続ける。
「冬馬のところにも、もうとどいてないだろう写真は」
「……ああ。確かにもう届いてないな」
やはりどこか不自然になってしまうのは浩雪クオリティ。
だがそのお陰か、葵が一瞬考えるように視線を上に向けたのみで、場の空気が変になることは回避できた。……だが、
「だろ? ……なら、何で学校にこない?」
今日の本命。この話題を口にすれば、どちらにせよ空気が悪くなるであろうことは目に見えていた。
「私は別に、あいつ等が愉快なことをしてくれるから学校に行ってない――ってわけじゃないからだな」
しかし浩雪の予想と反して、葵が不機嫌になるということはなく。
むしろ、浩雪の困ったような表情を見て楽しんでいる節がある。
「それってどういう……?」
「さあ? どういう意味だろうな?」
ニヤッとワザと不遜な表情で答える葵。その態度に、流石の浩雪も少し苛ついたのか、不機嫌な声音になる。
「てか、中間テスト。何で僕の名前の下に冬馬の名前があったんだよ?」
「へえ。1位は白告だったのか。それは凄い」
「だからそうじゃなくてッ! テストの日は学校に来てたのかよ?」
「さあ? どうだろう――」
「”どうだろうな”は無しだ」
はぐらかされる前に釘を刺す。
途中で遮られた葵は、しかし変わらず淡々と、
「じゃあ、家庭にも色々な形があるってこと」
「だからそれって――」
『今の話ホント!?』




