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こくはく[告白]:現実には実在しない空想の行為。  作者: 水樹 皓
なつやすみ[夏休み]:学生の特権。
19/32

#11:尾行!

 衣替えも終わり、すっかり夏の様相を示した教室内。


「……ねえ、真琴ちゃん?」

「ん、何や?」


 時は昼休み。

 丁度昼ご飯を食べ終わった頃合いで、各々自由に昼の一時を過ごしている。

 そんな中――。


「テスト……嫌だぁ~!」


 佐知はそう叫ぶと、ぐったりと机の上に崩れ落ちていた。

 教室中の視線が一瞬集まるも、その大声の元が佐知だと分かると、皆”何だ、いつものことか”と元の態勢へと戻る。

 一方、変わらず佐知の日に焼けたうなじを見下ろす者が3人。


「ははっ、中間の時は余裕綽々やったのにな~」

「……自業自得」

「え、えっと。さっちゃんでも頑張れば何とかなるよっ……多分」


 そんな容赦ない声を浴びせかけられた佐知。「う~」と情けない声を漏らした後、ガバッと勢い良く顔を上げる。


「このままだと夏休み無くなるよ〜っ。もうあの補習じごくは嫌だ〜っ!」

「そんな情けない声出さんでも。まだテストまで1週間もあるのに。それに、勉強会ならまたやったるから、な?」

「……勿論」

「わ、私もそんなに頭良くないけど、英語だったら自信あるからっ!」

「み、みんな~っ!!」


 そんな屈託のない反応に、真琴は”かかかっ”と笑い声を上げると、「それに……」と、佐知の後ろの席に目を向け、


「佐知は学年1位にも教えてもらえるやろ? 確か、中間の時もめっちゃ気合い入ったノート貰っとったやん」

「う~ん。でも浩君、最近なんか忙しそうにしてるんだよね。今もどっか行っちゃってるしさ」


 佐知は後ろの空席を見つめながら、どこか寂しそうな表情でそう答える。

 放課後になるとチャイムが鳴り終わる前に姿を消しているし、休日に浩雪の家に行ってもいつもどこかに出掛けてしまっている。

 少し前までは、家に行くと必ず浩雪がいて、なんだかんだ文句を言いつつも部屋に入れてくれて、1日中一緒に漫画を読んでいたはずなのに……。


「本当、どこ行ってるんだろう」

「……図書室」

「ほぇ?」


 ぼそっと漏れ出た独り言に、思わぬところからの反応。

 佐知は呆けた声をだしながら、声の出どころ――怜の顔を見上げる。


「……白告、今日当番だから」


 相変わらず薄い表情の怜は、やはり相変わらず短く答える。

 だが、それを聞いた佐知は、合点がいったというように大きく頷いた。


「そっか。浩君も怜ちゃんと同じ図書委員だもんね……あれ? 怜ちゃんは今日当番じゃないの?」

「……ん。開始は5分後だから」

「そっか~。じゃあ、後4分はおしゃべりできるねっ!」

「なんでやねんっ!!!」


 笑顔で答える佐知に、真琴からの流れるようなツッコミ。

 その隣で、愛花も控えめながら「じょ、冗談だよね?」とツッコミを入れる。


「なんや、いつも10分前行動してる怜にしては珍しいな。そんなに図書委員の仕事面倒くさいんか?」

「……イライラする」

「お、おぅ。これまた直球やな」

「……図書室には沢山の面白い小説がある」

「ん?」

「……なのにいつもそれを無視して漫画ばかり読んでるから」

「んん?」


 何やら会話がズレているような……?

 そう首を傾げる真琴であったが、怜の短すぎる言葉では、何がどうズレているかまですぐに判断できない。


「……でも、アレのせいで遅刻するのも癪」

「あっもう行くの? 頑張ってきてね~」

「が、がんばって」


 結局、首を傾げたままの真琴を残して、怜は教室を後に。


「……あ、なるほど」


 1人考え続けていた真琴であったが、怜が立ち去ってから数秒後にはどこかスッキリした表情。続けて、イタズラを思いついた子どもの様に口の端を吊り上げて、


「にしても、佐知さんや」

「どうしたの真琴ちゃん?」

「いや〜、恋する乙女は大変やな〜と思ってな」

「は、はへ!? こ、恋って、だから私は浩君のことなんて……」

「ん? 誰も白告のことやとは言ってへんねんけど?」

「……あっ。そっか」


 まあ、いくら誤魔化そうがバレバレだけど。

 バレてないのは浩雪本人と……ワンチャン愛花ぐらいのものだろう。


「好きの反対は嫌いじゃなくて無関心。それも、普段からあまり人に関心を持たへんような人なら尚更、やろうからなぁ。まぁ、どうなるかはまだ分からへんけど」

「へ??? ……ね、ねぇ、愛ちゃんは真琴ちゃんが何言ってるか分かる?」

「え、えっと……なんだろうね?」

「くくっ、2人はまだまだお子ちゃまやのぉ」


 目を点にする2人を見て、真琴は再度笑い声を漏らす。そんな中、ふと思い出したように、


「――と、そう言えば、佐知は野球部のキャプテンに告られてるんやったか? 中間の勉強会乱入事件で白告がそんなこと言っとったやん」

「だから、そんなのないってば」

「まあ、あの後確認したけど、確かにそんな噂すら流れとらんかったしな」

「確認?」

「隣のクラスにそーいう噂好きの知り合いがおってな。まあ、それはどーでもええねん。それより、白告のことや」

「浩君?」

「そうや。今は図書委員の仕事に行ってるだけらしいけど、最近行動がおかしいとは思わへんか? いっつも休み時間は呆れるぐらい漫画読んどったはずやのに、最近はいつみても席におらん」

「そうなんだよっ! 放課後も休みの日もいっつもどっか行っちゃってさ。なんか……なんか、何かなんだよっ!」

「え、えっと、モヤモヤ?」

「そうっ、それだよ愛ちゃん! なんかモヤモヤなんだよっ!」


 愛花の控えめな助言に、すっきりとした表情でそう答える。

 そしてその答えを待ってましたと言わんばかりに、ニヤリと口の端を釣り上げた真琴。だがそれは心の中だけで、実際はトボけたように素の表情で、


「ほんなら、確認したらええやん」

「確認?」

「そうや。確認、や。佐知の得意なやつやろ?」

「私の得意……あっ!」


 佐知の頭上に豆電球が灯る。



 ――尾行!

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