#10−2:……勘違い?
「そういや、怜はあの時も何も言っとらんかんかったな?」
「……私は別に。部屋って言っても、小説ぐらいしかないから」
「怜ちゃん小学生の時から本好きだもんね。確か中学でも図書委員になったんだっけ?」
真琴の機転のお陰か、佐知はすぐにいつもの調子を取り戻した様子。
ベッドに腰かけている自分の、斜め下に座る怜へと問いかける。
その声に、怜は斜め上を見上げると、
「……うん」
短く返事し、再び顔を元に戻した。
そして、またもや沈黙が……。
――ってそれだけかいっ! 折角私が場の空気を変えようとしたったのにっ!
またそれを口にすると言い合いになるのは分かっている真琴は、心の中だけで怜への不満を漏らす。
そして気分を切り替えるように、顔を赤くしたままの愛花へと水を向けることに。
「なあ、愛花?」
「え、何?」
「もしかして、白告のこと好きなん?」
「え!? そ、そうなの愛ちゃん!?」
その言葉に、佐知は分かりやすく動揺してみせたが……。
「ちちち違うよっ。な、な、何でそうなるのいきなりっ??」
「いや~。だって、この間もさ、白告がこの部屋に出入りしてる――ってのに私以上に反応しとったし」
続く真琴の言葉に、「あ、なるほど」と、得心がいったという様に落ち着きを取り戻していた。
一方で尚も動揺している愛花の代わりに、真琴の勘違いを訂正しようと口を開く。
「多分それは、男の子がニガテだから……かな?」
「苦手?」
「私もいつからかは覚えてないんだけどね。愛ちゃん、体育の時とかプールの時とか。クラスの男の子に、いつもじろじろ見られるようになってて。それで……ね?」
佐知がそこでパスすると、愛花は赤くした顔を立てた足に隠しつつ、小さく首を縦に振った。
それを横目でチラと見た真琴。「ふ〜ん」と適当な声で応えると、続けて、わざとらしく関西弁を強調して、
「確かに。エエ乳しとるもんな~」
「え、えっ!?」
「……真琴、オヤジ臭い」
怜は真琴の遠慮のない視線から愛花を隠すように、サッと薄い胸を張ってガードする。……が、
「こ、こんなの邪魔なだけだよ。怜ちゃんが羨ましい……」
「……何か複雑」
まさかの庇った仲間から、グサリと容赦のない一撃を受けてしまった。
それに、愛花は真剣にそう言っているのが分かるだけに、怜としてもどう反応していいのものか分からない。
結局、微妙な反応をするしかできず、成長の兆しが見えない自身の胸元を見下ろし、小さく溜息を吐くに留めた。
そして、その様子を面白そうに眺めた真琴は、最後の1人へと水を向ける。
「ま〜確かに。佐知ぐらいのが丁度ええんかも知れへんな。何なら、これからまだまだ成長するやろうし」
「ふぇ!? わ、私?」
「……確かに。適度」
「そ、そうかも。今のさっちゃんぐらいの大きさなら、私も……」
油断していた所に水を向けられ、変な声を出してしまった佐知。更に追い打ちをかけるように、怜と愛花からの遠慮のない視線も、自身のとある一点に注がれ……。
「もうっ――って真琴ちゃん!?」
2人からの視線を遮るように後ろを振り向いた佐知であったが、そこには手をワキワキと蠢かせる真琴がいて……。
「ひゃっ、ちょっ――」
簡単にベッドへと組み伏せられた佐知は、真琴からの容赦ない攻撃――先程まで怜と愛花からの視線が注がれていた部分を重点的に責められる。
「この触り心地――なんや、まだブラもつけてへんのかいな。よし、今度一緒に買いに行こか!」
「くはっ、や、やめ――」
制服の上から伝わってくる真琴の指使いがやけに絶妙で、うまく力が出せない。出せるのは声だけなので……。
「助けてっ!」
「ハッハッハッハ! 助けを呼んでも誰も来ないぞよ。大人しく我がテクニックの虜となるが良いッ!」
と、ベッド上で佐知が真琴に襲われているその横では、愛花がどうしたら良いのかとオロオロしていた。
「さ、さっちゃんっ。ど、どうしよう怜ちゃん??」
「……淫靡」
「い、いんび?」
「……闖入者?」
「え、えっ、今度は何――」
隣の怜へ助けを求めるも、よく分からない言葉が返ってくるのみ。
だがその時――
「梅川――ッ!?」
部屋の扉が勢いよく開け放たれた。
必死の形相で姿を表したのは、つい先程話題に上がっていた少年だ。
部屋にいた4人の中でその姿を真っ先に捉えた愛花は、身体をビクッと跳ねさせ、怜の影に隠れるように身体を小さくする。
……しかし、闖入者――浩雪の視界には、愛花や怜のことなど入っていない。
「な、なんだよ……これ……?」




