#?:アホくさ
人気のない屋上。
そこに1人、まるでモデルの様に綺麗な少女が、長い黒髪を風に靡かせ、ただジッと佇んでいた。
つい先程受け取ったばかりの、中学校の卒業証書。それが入った筒を両手で、胸に抱くようにぎゅっと握りしめて……。
「……っ!」
少女の身体が軽く撥ねる。
屋上の扉が開き、そこから、1人の少年が姿を現したからだ。
少年は少女の姿を確認すると、一瞬安堵の表情。
だが、直ぐにどこか決意の篭った表情に切り替えると、ゆっくり、一歩ずつ、少女の元へと歩みを進める。
そして、2人の距離が埋まり、お互いの表情がはっきりと見て取れる位置にまで接近すると、その足を止め……。
「……良かった。居てくれて」
「手紙……貰ったから」
「ああ……」
2人は途切れ途切れに言葉を交わす。
だが、会話はそこで途切れ、2人だけの屋上に沈黙が訪れる。
お互いに明後日の方向を見て、押し黙る。そんな、数十分にも数時間にも思えるような沈黙を割いたのは……。
「あっ、あのっ!」
「は、はい!」
「僕……僕っ……!」
そこで、顔を真っ赤にした2人の視線が混じり合い――。
「僕、――のことが好きだ!」
「……っ!」
「だ、だから僕と付き合ってください!!」
少年は勢いのままそう言い切り、全力で頭を下げる。
……しかし、数秒待てど、少女からの反応は返って来ない。
不安になった少年が、恐る恐る頭を上げると……。
「え? ……な、何で泣いて――」
「私も」
「え……?」
「私も、――君のこと、ずっと好きでした」
太陽の様な笑顔。
少年が思わず見惚れていると、少女が一歩、少年の方へと近づく。
そして、やがて2人の影が重なり……。
~fin~
――アホくさ