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第九十一話 エスコート

 討伐の朝だ。


 天候は見事な晴天で作戦決行にはもってこいである。


 この作戦はオーバーヒートを狙ったモノであるため、雨なんかに降られてしまってはそれだけで意味を成さなくなる。


 この世界における雨期は一月後、8月の末辺りから始まるらしい。丁度日本と二月半程度季節が遅れている様な感じだろうか。なんにせよ、そうなってしまっては作戦決行は不可能である。


 俺達がこの村にたどり着いたのは天命だったのかもしれないな。


「それでは各員配置につけ。事前の打ち合わせ通りやれば必ず成功する!ただし無理だと思ったら直ぐに引け!その分バックアップは備えてあるからな!それでは出陣!」


「「「おおーー!!」」」


 男達(とレニー達の)咆哮が早朝の空に響き渡り作戦が開始された。


 今回の配置は最終防衛戦で有り、最終兵器である砦に機兵が2機とミシェル。

 轟雷槍のオペレーターである彼女はバリアを備えているが、念のため2機の機兵を配置している。


 捕獲ポイントには左右それぞれに5機ずつ計10機の機兵が配置されている。

 それぞれ左右に4台、計8台設置されている捕獲用固定砲台バリスタに着くものが4機ずつ、バックアップ及び捕獲後の攻撃要員として1機ずつ備えている。


 そしてそのポイントである街道の中央には俺が立ちヒッグ・ギッガをお迎えするというわけだ。


 現在マシューは奴のエスコートに向かっている。足が速く、機敏なオルトロスが囮となりここまで奴を誘導してくる手はずになっているのだ。


 街道に仁王立ちをし、腕組みまでしてじっと遠くを見つめるレニー。彼女はコクピット内でも同じポーズをしている。


「勝ちますよ、カイザーさん」


「ああ、勿論だ」


『どんなシミュレーション結果が出たとしても私が勝率100%に変えて見せますよ』


 俺達の士気は十分高まっている。さあ、頼んだぞマシュー!オルトロス!


 ◆◇◆


 まだ薄暗い街道にモヤが立ち上り始めている。夜明けが近い、もう少し急ぐか。


 カイザー達と奴の「観察会」をした時は日が昇って間もなく現れていた。差し詰め朝の水浴びと言うところか?なんとも優雅なこった。


 あの時あたいは居眠りをしてしまったが、今日は平気だ。何時もより速く布団に入ったし、今だって眠気覚ましにミルトの実を奥歯に挟んでいるからな。ジワジワと清涼感がある辛みが口に広がって良い眠気覚ましになるってもんさ。


「っと、この辺で良いか。オルとロス、奴の気配を感じたら教えてくれ」


『了解~』

『索敵モードオンー』


 奴の通り道、沢沿いに作られている獣道とヌタ場の間に立ちお客さんを待つことにした。


 問題はどうやってお客さんをパーティーに招待するか、パーティーに行きたいと思わせるかだが、綺麗な物でも見せてあげれば興味を持ってくれるはずさ。


 湿り気を帯びて黒光りする獣道が黄色く染まっていく。


 朝日だ。


 そしてそれはお客さん来訪の先触れで有り……


『マシュ~来るぞう!』

『わわ、大きいからあっという間についちゃうよー』


 あの時と同じ地響き、ズズン、ズズンと大地を揺らしザワザワと木々を揺らし、森に混乱を与え奴が姿を現した。


 機兵に乗っていてもなお見上げなければ顔を見ることが出来ない巨体、ヒッグ・ギッガ。

 一度姿を見ていたとは言えあれは隠れて見張っていたわけで、こうして堂々と顔を合わせたのははじめてだ。


「へ、へへ……やっぱちょっと怖いや……。でも、仕事はきちんとやらないとな!」


 アイテムボックスからアレを取り出す。カイザーはこれを見て「ドッジボールみたいだな」と言っていたっけな。どっじぼーるが何なのかは分からなかったが、どうやら投げやすい物には変わりないようだ。


「そしてこれも……、投げて使う物だしな!」


 まん丸な球をお客さんの顔に思いっきりプレゼントしてやった。


 ゴゴゴオオオオン…………


「っく、ちょっと眩しいな!だがなんかしてくれたんだろ?眩まないですんだ!ありがとう!オル!ロス!」


『遮光フィールドを張ったからね~』

『お客さん、眩しそうだねえ』


 奴に当てたのは目眩まし……というわけではなく、炸裂弾だ。あのプレゼントの仲にはレニーが作ったジャンクパーツのカスが沢山詰められていて、中央には仕掛けを施した魔導炉が入っている。

 強い衝撃を受けた瞬間、それに反応して魔導炉を動力として爆裂魔法が発動し周囲にジャンクパーツが飛び散る極悪な武器さ。


 とは言え、爆裂魔法はそれほど強い物ではないから見た目ほどダメージは与えられないんだよな。

 

 しかし、プレゼントは喜んで貰えたようだ。顔をブルブルと振って眩んだ視界を何とかしようとしていた奴だったが、大分視界が回復したのかあたいの姿を捉えたようだ。


「ようこそ、あたいたちのパーティーへ!さあ、お客さん!会場に急ぐぞ!」


 トドメとばかりにそこらに落ちてた"石"を鼻っ面に当てるとすっかりスイッチが入ったようだ。


『グョヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲン』


 と、薄気味悪い咆哮を上げると頭を低く下げる。無事あたいをエスコート役と認めてくれたようだな!


「じゃあ、行くぞ、お客さん!パーティー会場は直ぐそこだ!迷子になるなよ!」


 くるりと背中を向け、"会場"に走り出すと、間もなく後ろから地響きがついてくる。



 よしよし、このままこのまま!


「オル、ロス!あたいはもう前しか見ねえ!後ろの様子は頼んだぞ!」


『了解だよ~!背中は任せろ~!』

『もしもの時はわたし達が緊急処置で操作するから安心してねー』


 これで安心して会場に急げるよ。待っててくれよ、今お客様をご招待するからな!


 

 八十四話~八十九話あたりにつけていた仮題を変更しました。

 

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