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第八話 機兵の歴史

 その後も矮小な彼女は飽きもせず毎週俺のところにやってきた。


 辺りは森で近隣には家など無いはずだ。それにこの標高である。往復だけで時間も体力もかなり消費するだろうに律儀に週1で通ってくる。


 何なんだアレは……。


 それはそれとして、彼女がやってくること自体は嬉しかった。彼女から聞く話はどれも興味深かったのだ。


 とはいっても、俺はまだ喋れることを秘密にしたままで、口を閉ざしたまま神像ごっこに徹しているので実際に会話をして聞いたわけではない。


 俺を殴りながら、こじ開けようと頑張りながらブツブツ言っている独り言や、お弁当を食べながら俺に聞かせるように話す昔話を聞いただけなのだが、かなりの情報が得られた。


 どうやらこの世界にはやはりロボットが存在する、というかかなり昔、文献によるとおよそ3000年程前に開発されたようだ。


 とある王家が神より賜った聖典により機兵の開発に成功。城壁さえも飛び越えるその巨人は国家を護る機兵となりかつての侵略戦争では敵を王都に通すこと無く、最後まで護りぬいたという。


 その後、その王家の存在は他国に睨みをきかせることとなり、侵略戦争は終結、しばしの平和なときが訪れる、かと思ったがやはりお約束。その時代は長く続くことは無かった。


 例によって例のごとく。他国に漏洩した機兵技術により各国でも相次いで機兵が製造されてしまった。これにより、世界中の国家に遅かれ速かれ機兵が配備されるようになり、世界に機兵時代が訪れた。


 無論,其れは良いことでは無かった。元は自衛のため機兵を造り出されたものだが、1機で歩兵100人分以上の戦果を上げる機兵だ。世界にあるのは平和主義の国家だけでは無い。


 領土拡大を至上とする攻撃的な国家にとって、今まで目の上のたんこぶであった機兵が自分の手の中に来た。するとどういう行動に出るだろうか?


 当然の如く、侵略戦争は再開され、やがてそれは世界を巻き込む大規模な戦になった。


 機兵主体の戦争は苛烈を極めた。


 やがて其れは世界を荒廃させ、戦争が終わる頃には世界が崩壊寸前になっていたという。


 その後、戦争の勝者が統一国家を立ち上げたが、2年と持たずクーデターにより崩壊。


 事実上、かつての国々は全て消滅した。


 それに伴い、機兵製造の技術は徐々に失われていき、やがて機兵文明は消失。そしてゆっくりとかつての豊かな世界が取り戻されていき、高度な技術こそ失われたが、人が日々生きるには不足が無い平和な時代が再び訪れたという。



 だが、300年前、トレジャーハンターがまだ生きている機体を発見したことにより世界は再度動き出した。


 それまで発掘されてもけして動くことが無かった機体が光を発していた。それは考えられないことだった。


 回収された機体は欠損箇所が多く、古文書に記されているような使い方はできそうになかった。しかし、発掘された聖典を元に独自の改造を施し何とか動作可能にした男がいた。名はマージ、考古学者であり機兵文明に異常な興味を示す男である。


 彼の手により、各地で発掘された機兵達は次々と蘇り、それをもとに傭兵団が設立された。


後の「機兵帝国シュヴァルツヴァルト」の前身となるものであった。

 

 これを聞いたときは噴き出してしまった。「シュヴァルツバルト」はドイツ語で黒い森だ。この世界の言葉は自動翻訳され違和感なく聞いたり喋ったり出来るが、娘の口から出たそれはどう考えてもこの世界の言葉ではない、そのまんまドイツ語だった。


 ではなぜそう呼ばれるのか?答えは簡単だ。どうやらこの世界がこうなってしまったのは完全に俺の責任のようだ。つまり、ロボで無双出来なくなったのは俺の自業自得ってことだ。


 まずこの機体、カイザーはクロモリ重工の民間軍事部門が開発したものだ。そしてそこの取締役である南海みなみ すすむがいい具合に邪気眼を拗らせたおっさんで、第一線で活躍する機体達…残念ながらこのカイザーも含まれるがそれのコードネームに「シュヴァルツバルト」と名付けていたのだ。


 コードネームなのだからそのまま封印すれば良かったものの、設定上はマニュアルにもしっかりと「カイザー:コードネーム シュヴァルツバルト01」と記載されているそうで、どう頑張って翻訳したのか分からんが、マニュアルを解読した昔の賢人どもからそのシュヴァルツバルトが変な具合に後世に伝わり、ついには国名にまでなってしまったのだろう。

 そう、あの日強奪されたマニュアル、それがこの世界をねじ曲げてしまったんだ……。


 娘の話には聖典というものがチョイチョイ出てくるが、それはどう考えてもマニュアルのことだろう。2000年くらいで完全に解析して、模倣とはいえ再現してしまったわけだ。恐ろしいな、人類とは。



 で、その後建国された騎兵帝国シュヴァルツバルト()は機兵団で身を固めた強固な軍事国家として恐れられている。


 その他の国家にも勿論機兵は配備されているが、シュヴァルツバルト程の性能は出せず、伝承による戒めもあることから今日まで大戦には発展していないということだ。


 シュヴァルツバルトが無双状態なのは聖典の存在が大きいのだろうな。メンテナンスマニュアルも記載されてるし、分解図も記載されてるしさ…どこまで理解されてるのか考えたくないな。


 そして民間にも機兵乗りが居るらしい。その多くがハンターズギルドに所属していて、機兵に乗るハンターはライダーとも呼ばれ其れは一種のステータスになるそうだ。


 ただし、その殆どは発掘されたパーツを元に適当に魔改造された手作り感溢れる機兵らしく、見た目こそバラエティに富んでいるが国家所有の機兵のスペックには遠く及ばないらしい。だが、魔獣討伐には十分な成果を上げられるため、ライダーは重宝されているそうだ。


 娘の話に出てきた魔獣というのがとても気になった。俺が眠る前は聞いたことが無い単語だなと思ったが、どうやらあるときからこの森を中心に各地でじわじわと現れだした新種の生物らしい。


 連中はとても強力だが、倒せれば機兵を強化する良い材料になるとのことだ。


 ……まさかね?


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