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第八十六話 浪漫武器の提案

 3日目となる今日のAチームは狩りではなく獲物の解体作業をしていた。


 機兵修理用のパーツが取りあえず揃い、後は不足分が出てからと言う具合になったからだ。商人を探しに街道に出ても良かったのだが、もう少し必要な物がまとまってから頼みたいとミシェルに言われたため、マシュー達の手伝いとして解体作業をしているわけだ。


 とは言え、レニーは兎も角、俺には荷物運びくらいしか手伝えないため、暇を持て余してしまう。何か出来ることは無いかと考えていたが、昨日思いついた仕掛けをマシューに相談してみることにした。


「マシューちょっといいか?」


 何かの部品を弄くっているマシューに声をかけると手は止めずに返事をしてくれた。


「ああ、いいよ。このまま聞くから好きに話してくれ」


「うむ、邪魔にならない程度に話す。昨日、レニーと二人銃を試してみたんだが、実際に使ってみるとあの機構を罠に使えないかなと思ってな」


「む?バリスタの事であれば、銃の仕掛けを流用して魔道炉で射出する予定だぞ。あんなデカブツ相手なんだ、弦を使ったただデカいだけの固定弩砲じゃ矢が通らないからな」


 むう、提案しようとしていたことの半分は既に予定に入っていたか。この世界の人達を馬鹿にしていたわけでは無いが、予想していた文明レベルを改めなければいけないな。いやまあ、機兵がある時点で地球より大分進んだ世界とも言えるんだが、バランスがなんともいびつだからな……。


 しかし、バリスタはあくまでも表の作戦用だ。いくら綿密に作戦を立てたからと言って相手は魔獣だ、必ずしも上手くいくとは思えない。


 失敗した場合、無策であればただただそのまま敗北を喫するだけだが、失敗した時用に第2の用意をしておけば勝利の確率は格段に上がるだろう。


 俺がマシューに提案しようと思っていた仕掛け、第2弾それは……。


「流石マシューだな。実は改良バリスタ、銃の機構を応用した貫通力を高めてより拘束の成功率を上げたものの提案もしようと思っていたんだ。ただ、ネタはもう一つあるんだが聞くかい?」


「おう、聞くぞ!あ、ついでにカイザーが考えたって言う改良バリスタの図面もあるならくれよな。あたい達が思いつかない仕掛けがあったら参考にするしさ」


 そう言ってくれるのは嬉しいな。ネタかぶりとは言えせっかく考えて書いた設計図が無駄になるのは悲しいからな。


「で、もう一つの隠し球はさらに巨大な至近距離用バリスタだよ」


「あん?なんだって?」


 あまりにも俺が変なことを言ったがためにマシューは作業の手を止めこちらを振り向いた。


「昔やっていたゲーム……いや、読んだ本でな、超巨大生物を討伐するのに使用したと言われている超大型兵器を見たことがあるんだ。

 それは機兵くらいある巨大な槍を射出するんだが、それは回転をしながら飛び出すため、獲物に強力なダメージを与えるんだ」


「なんてデタラメな話だよ……それを作れってか?一体どう使う気なんだ?」


「そもそも、今回メインで使うバリスタがその超大型兵器くらいの大きさなんだが、俺が考えているのは其れよりさらにデカいもの、バステリオンサイズの槍を射出出来ないか、だ」


「馬鹿野郎!無茶も休み休み言えよ!大体にしてそんなもんまともに飛ばないぞ!」


 無茶は重々承知。問題は資材、資材があれば十分造れると思っている。


「何も普通のバリスタくらい飛ばそうとは考えていないさ。殺傷距離はせいぜい10mもあればいい。先ずはこの設計図を見てくれないか?素人ながらスミレと二人相談しながら書いたんだ」


『一応、今まで調べたデータを元に書き上げましたので、実現不可能な機構はつかっていませんよ』


「ふーん?どれどれ……」


 図面を渡すと面白そうな顔で眺めていた。ふむふむと声を出しながら何かを考えるようにじっくり隅々まで見ていたが、突然「プッ」と噴き出すと、そのまま笑い始めてしまった。


 何か間違えたことを書いたのだろうか、技術者として笑ってしまうほど間抜けな浪漫機構でも見つけてしまったのだろうか?笑っているマシューを困った顔で見ていると、漸く笑いが収まったのか、ハアハアと呼吸を落ち着けている。


「いやあ、すまん。あまりにも馬鹿な発想過ぎて笑っちまった。あ、違うぞ、お前達を馬鹿にしてんじゃ無いんだ、よくもまあこんな恐ろしい物考えつくよなって思ったんだよ」


「一体何がそんなマシューのツボにはまったんだ?」


「いやさ、まさか魔道炉を6基も積んで飛ばす距離が10mってのがまた面白いし、しかもここ、隅っこに『使い捨てを考慮している』と書いてるじゃ無いか。こ、こんな金がかかりそうなブツを使い捨てって!リックの爺さんに見せたらあたい同様めちゃくちゃ笑うぞきっと」


 あー、これの出番はかなりギリギリの状況を想定してるからな。運用方法を考えると使った瞬間壊れるのは予想できるし、いっそ使い捨て用で耐性はそこまで求めない設計にしようと思ったんだよな。


「勿体ないけど、こいつは最後の切り札だからな。使わないで済めば万歳というほんとの隠し球なのさ。ほんとはバステリオンの魔道炉を1基使おうと思ったんだけど、リックに泣かれそうだからな。

 普通の魔道炉6基で代用しようと思ったわけさ」


「バステリオンの部品を使い捨てにしたらリックじゃ無くてもあたいだって泣くよ!」


「レニーも泣くな」


『私もちょっと泣くかも知れません……』


「スミレもかよ!まあいいや!あたいも気に入ったよこれ!そうだな、ちょっと必要な部品纏めるから明日狩ってきてくれよ。機兵用の素材は揃ったから明日の狩りは全部こいつ用として狩ってくれ!」


 マシューの許可も出たし、明日は頑張って素材を集めなくちゃな。一体どれだけの魔獣が必要になるか想像するのが怖いが、そこは浪漫兵器を設計した自分の責任ということで頑張るしか無いな。

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