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第八十四話 資材調達

 今日から暫くは準備期間だ。資材を用意したり、機兵を直したり。機兵が揃ったらちょっとした訓練もする予定だ。

 ギルド前には朝から沢山の人々が集まり、ミシェルの指示を聞いている。俺がバックアップ隊の指揮官として指名したのもあるが、何より敢えて家の名前を出し信頼度を上げたのが大きかった。


 家名を出すのは少しズルい気もしたんだけど、そうでもしないとミシェルの手腕を疑う者もきっと現れるからな。大きな商家の娘として幼い頃から様々な学習をしていると説明されれば文句のしようが無いだろう。


 本日はミシェルの指示によりA隊、B隊、C隊に分けられた。


 B隊はマシューチームだ。マシューが中心となり機兵の修理やカスタマイズを執り行う。チームリーダーは別にマシューじゃ無くて他の技師でも良いと思っていたのだが、俺と直ぐに連絡を取れるマシューが良いだろうと村の技師達が逆に推薦してくれた。


 確かに、連絡係とリーダーが同じであれば伝言の手間が省けるもんな。


 C隊はミシェルチーム。指揮官を兼ねつつ資材管理チームのリーダーを務める。ミシェルが必要な資材をリストアップし、チームの者達が村中を回って在庫を集める。それでも足りない物があれば速やかにミシェルに報告し、それを纏めていくと。


 その際、狩りで手に入れにくい物等があればそれも纏めておき、ギルドに相談する。


 元々街を魔獣から護る私兵団が元となって産まれたこの国のギルドはそれぞれの街を維持する役割を国から与えられている。


 勿論、街道の件も国に上げているのだが前に聞いたとおり後回しにされているわけで、それでも自分たちで解決するとなればそれは自由。其れにかかった経費に正当性が認められれば後ほどきちんと精算される。


 狩りで手に入らない物はギルドに相談し、ギルドから承諾されれば商人達を捕まえて購入という手筈になっている。


 その際必要な書類等はミシェルが書けると言うことで、それもあってC班のリーダーになっているわけだ。


 さて、残るはA班だ。レニー率いる我々A班は取りあえず狩りに来ている。何が必要かは分からないが適当に狩りながらミシェルの連絡を待つ、というわけだ。ここは村に限りなく近い狩り場で、ギリギリ通信装置のエリア内。何かあれば直ぐに連絡がつくというわけだ。


 さて、我々A班はカイザーの他に4機の機兵で出撃しているわけだが、流石本職動きが良い。同じ機兵に乗って手合わせすればレニーはまず敵わないだろう。


 そんな連中がひとたまりもなくやられ、俺達が来るまで何も出来ずに居たのだから奴の恐ろしさが身に染みて分かるというものだな。


 「よし!嬢ちゃん!そっち行ったぞ!いいか!今度は頭を潰すなよ!頭は使うからな!殴るならせめて胴体にしてくれ!」


 顔を殴るなボディを狙えか。狡猾ないじめっ子のようなセリフだが、討伐が目的ではなく資材確保が目的の狩りだからな。


 わざわざ注意されているのはレニーがやらかしてしまったからだ。


 レニーが得意としているのは近接格闘。正面から飛びかかってきたブレストウルフは良い具合にカウンターの的となる。


 何時ものように全力で頭にカウンターを入れベコベコにしてしまったからたまらない。獲物を見て苦笑いをするのはハンター達だ。


 それからいちいちレニーの所に獲物が向かうたび注意をしてくれてるのだが、そのたびレニーは顔を赤く染めながらぼやいているのだ。


「もー!わかりましたってば!もう潰しませんから!」


「ははは、まったく恐ろしい嬢ちゃんだぜ!ビリー、誘う時は気をつけろよ?ひでえ顔がまともになるかも知れねえぞ!」


「な、なにいってんだくそ!ダニー!ひでえ顔がまともにっておめえ……あれ?殴られた方がいいのかな?」


 馬鹿で愉快なハンター達だ。彼らが安心して暮らせるようにしなくちゃな。


「もー!今度は!ちゃんと!ボディ!」


 しっかりとボディにパンチを叩き込むレニー。しかしそこは燃焼タンク、破裂したタンクから噴き出した油をかぶり俺やブレストウルフは火に包まれてしまう。


「きゃー!ごめんなさい!みんな!カイザーさん!」


「俺はこんくらい平気だがブレストウルフはだめだろうな」


 体表から消化剤を噴き出しつつレニーを諫める。


「殴っちゃいけない場所は顔と燃料タンク、わかったね?レニー?」


「はい……分かっていましたが……うう、今度はブレストウルフじゃ無い獲物を殴りたいですね」


 ブレストウルフじゃ無ければ失敗しない、そう言っているのか?いやいやそうじゃない、そうじゃないんだ。


「あのなあ、フッゴ・ロッグもここらじゃ獲れるけどよ、奴だって顔は殴っちゃ不味いし、脚だって使うんだからな。獲物によって使う部位は違う、俺達ハンターはそこをなるべく避けて狩る必要があるんだ。それはちゃんと勉強しておけよ」


 ほら見ろ、怒られた。帰ったら図鑑を見せながら勉強会をする必要があるな。いろんな事に詳しい割にいろんな事が抜けているのがレニーだからなあ。


 結局この日集まった素材はブレストウルフ4体、フッゴ・ロッグ2体。それにレニーが潰したジャンクパーツ2体。思ったより数が狩れたような気がするが、他にも狩りたい魔獣が居るそうなので明日も引き続き狩りに出る必要があるな。


「さて、獲物をどう持って帰るかだが、リーダー、何か用意はしてあるのか?荷車もなにも無いようだが」


 そういや普通は荷車を引くんだっけな。荷車に乗せてまるごと運ぶか、必要な部位のみ箱に入れて持って行くか、それが一般的な獲物の運搬方法だ。


「あー、荷物は私が全部……というかカイザーさんが持ってってくれるので心配要りませんよ」


「はあ?一体どうやって……うおおお」


 細かい説明は面倒くさかったのでポイポイとバックパックに収納してしまう。俺という存在自体がおかしいのだ、今更バックパックくらいで驚かないで欲しいものだ。


 驚きつつも羨望の眼差しで見つめるハンター達を連れ村へ帰った。

 

 

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