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第七十七話 森の村 パインウィード

分岐を東に曲がり一時間ほど進んだところで木製のゲートが見えてきた。レニーによるとフォレムと国境の街リバウッドとの間にある中間拠点とも呼べる村だそうだ。


名物は村の南からリバウッドに繋がる街道沿いで見られるキノコや鹿の料理だそうで、それを聞いてからマシューがやたらと先行するようになってしまった。


「ようやくだな!さあ、早く門番に声かけて中には入ろうぜ!お腹へりまくりだよお!」


そんなに急がなくても飯は逃げないだろ。宿が混んですいて取れない心配はあるかも知れんが、最悪食事くらいはなとかなるだろう。


門前に到着し、レニー達がそれぞれ門番にギルドカードを見せているようだ。


「いやあ、ずいぶんデケえ馬だと思ったら機兵だろ?んでもってそっちのもすげえし、乗ってるのがどっちも女の子だ。たまけたぜ!」


若い感じの門番は一応武装しているが、フォレムの門番同様にそこまでの重装備ではない。門の両脇に立つ2機の機兵達こそ防衛の要であろう。


全長6m前後のごっつい騎兵で、顔は熊のようなパーツを使っている。その太い腕には斧を装備していて、如何にも森の村に相応しい見た目である。


「あはは…まあ、ここに来るまで嫌というほどそのやり取りしてきましたからね…」


そのせいでこの村に泊まる事になったのだが、村を通り南に抜ければリバウッドに繋がる街道に出られるそうなので戻ることもない。


結果として良かったのかもしれないな。


ちなみにミシェルが身分証として使っているのは商人ギルドのカードのようだ。それにはしっかりとルストニア商会の名前が刻まれているらしいので、見る人が見ればそれなりのリアクションをしそうだな。


「しかし、まずい時に来たな嬢ちゃんたち。宿は選ぶほど空いてるが……、あまり良い時期とは言えないぞ」


何だか不穏な情報が出て来たな。レニーが詳しく聞こうとしたが、後ろに別の商隊が並んだため詳しい話は中で聞くことにした。


「うーん、情報収集がてらギルドに顔を出してみますか。寄った先で顔を出すのは半分義務みたいなもんですからね」


いつ何処のギルドに誰が寄ったかと言う情報は各地で共有される。それによりハンターが今何処にいるか大体の情報が分かるわけだ。

それにより重要な使命依頼などが入った場合は特殊な方法で連絡を取ることが出来るそうだ。


ギルドに入ると荒々しい風貌の男達が一斉にレニー達の姿を見る。お約束の絡みイベントか?なんて思ったが、何か残念そうな顔をして酒に視線を移す。


「フォレムの3級(サード)パーティ、ブレイブシャインのレニー・ヴァイオレットです。ルナーサまでの護衛任務の途中、宿を取るため寄りました」


赤髪から猫耳を生やした係員はレニー達のギルドカードを預かり、何か書類に記入するとにこやかに挨拶を返す。


「ようこそ、パインウィードへ。ここの名物は…と、言いたいところなんですが……、今ちょっと困ったことになってまして、ご飯には期待できない感じで…」


困ったような顔でそんなことを言う。それに素早く食い付いたのはマシューである。さっきから空腹の歌を歌いながら夕食を心待ちにしていたマシューにとってご飯に関わる事態が起きていると言う話は青天の霹靂だろう。


「一体何が起きたんだ!?あたいの鹿料理は!?だめなのか!?食えないのか!?」


「鹿料理どころか普通の食事を摂るのも満足な状況とは言えなくてですね…」


「えっと、詳しくお話を聞かせて貰えませんか?」


そうですね、と係員は暗い表情のまま村の問題を語り始めた。


問題が起きているのは村の南から繋がる街道らしい。


その街道を村から少し進んだ先で土砂崩れが発生し、街道を塞いでしまった。


普段であれば南の街道から村に入り、用が済んだら西の街道から出ると言うルートで手間なく補給が出来るため商人達が重宝していたわけだが、街道の片方が潰れてしまうとそのメリットが無くなってしまい、寄らずに進んだ方が良いと判断されここ最近商人が来なくなってしまったらしい。


「そんな大事な道ならどうしてさっさと復旧工事しないんだ?」


何気ないマシューの質問に呑んだくれていたハンターが反応する。


「そりゃあ無理ってもんよ。俺たちだってなんとかしてえ。だが、あんなのに住み着かれちまったらどうもこうもねえよ!」


「あんなの?」


「ああ、魔獣だよ。どっから来たのかしらねえが、ブタみてえなツラをしたデカい魔獣さ。どういうわけか土砂崩れの現場に泥遊びに来やがるんだ。近寄ると問答無用で襲ってくるしよ、おまけにめちゃくちゃつええ」


「うむ、奴はデタラメだ。俺たちがなんでこんなとこで飲んだくれてるって、機兵ぶっ壊されちまったからさ」


成る程……、見た目や習性から考えればイノシシの魔獣か。土砂崩れの現場をヌタ場として気に入ってしまい、結果的に復旧作業の邪魔になっていると。


おまけにその周辺が食肉用の狩場として使われていたため、そこを潰されては名物の鹿を狩ることが出来ないと。


厄介な問題だが、どうしたもんかと考えているとマシューが声を張り上げた。


「許せねえ!あたいが…あたいが楽しみにしていた名物を!おい!あたい達がブタ野郎をぶちのめしてやるぜ!」


驚き、嘲笑、興奮……様々な視線がマシューに集まった。


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