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第七十三話 旅の打ち合わせ

 リックのところへ戻った俺達は事の顛末を説明した。


 ……とはいっても、殆どギルドに報告したことと変わらないけどね。リックは身内だからGやゴーレムの話もしたけれど、あくまでもまだ推測の域を出ないウロボロスの件については一応伏せておいた。


 機密がどうのこうのってわけじゃあなくて、もし間違ってたら……かっこわるいだろう?あれっきりウロボロスの二人は黙ったままだし、現時点で不確定な話をするのもな、と思ったのが理由だ。


 ゴーレムの話には食いついていたリックだったが、やがて「明日渡すアレの最終調整するから先に引っ込むぞ」と工房に潜り込んでしまった。


 今日はリックへの報告会にしようと思っていたが時間が余ってしまったな…ならば今のうちに明日以降の予定を話し合っておくか。


「さて、時間が出来たので今後の予定について話し合っておこうと思う」


「そうですね、明日はどうします?」


「明日はそうだな、ルナーサまで移動する用意をしてくれ。食料や日用品、必要なものを買っておけよ」


「ここからルナーサまでの間にも幾つか街がありますし、洞窟探索用に買った資材がまだ余ってると思うんで、あんまり買わなくて済みそうですね」


「じゃあ明日は休暇みたいなもんだと思ってさ、みんなでのんびりブラブラするか」


 紅の洞窟攻略のため用意した食料は10日分だった。実際使ったのは4日分なので残りは6日分。

 俺達にはアニメの謎仕様で入れたときと同じ状態で取り出せる便利なバックパックがついている。余らせたら余らせたで問題なく次回の冒険に持ち越せるから楽でいいよな。


 作中では主人公が食べてる途中のカップラーメンを入れたり、仲間の誰かがアイスクリームを入れたりと便利な冷蔵庫代わりに使ってカイザーが怒ってたっけな……。こっちのカイザーは許容派だけども。


 女子達がきゃっきゃと明日の予定を話し合っている。ジャンク屋がどうとか、カフェがどうとか、店に入れる身体が羨ましいぜ。

 この身体はかなり気に入ってるんだけど、せっかくの異世界をあまり味わえないのは残念に思う。殆どの建物には入れないし、街の人とも気軽に話せない、そしてなにより飯が食えないってのは痛い。


 スミレもまた時折羨ましそうにしている。ウロボロスを見てからなおさらだ。


「スミレもウロボロスのように何か小さいものにバックアップを移して行動したいと思うかい?」


『私はいつも貴方と共に……と、言いたいところですが、正直なところあれはずるいですね』


 スミレの年齢設定がいくつだったのかはわからないが、一応女の子だ。共に楽しみたく思う時だってあるだろう。まして、彼女は日々成長するAIだ。俺と暮らすうち、徐々に人間らしさが増しているのを感じる。


 あまり記憶が残っていないが、恐らく作中でも話数が進むにつれそういった演出が会ったのではないかと思う。

 ただ、作中のスミレの場合は、最初はこのスミレよりもっと無機質な感じで、徐々に徐々に"言うように"なっていったような気がするんだ。うちのスミレはより人間臭いとこあるんだよなあ。


 これもまた、俺が寂しくないよう神様がやってくれたサービスってやつなのかもしれないな。


『ああ…私も小さな身体を持って同行出来れば……、この世界の文化や資材をどんどん集められるというのに……。レニー達がもう少し賢ければそれでいいんですけどね。あの子達はあの子達だから……』


 ああ、そういう……。でもこれもまたスミレの趣味みたいなもんだからな……。何処かで叶うと良いのだが。


「ああそうだ、明日はオルトロスも置いていけよ。今回は手持ちで間に合うくらいの買い物で大丈夫だろうし、ちょっと用があるからな」


「ええー、徒歩かよお……まあいっか、みんな徒歩なら逆に移動しやすい場合もあるしな」


 そう、明日はオルトロスに用事がある。リックに頼んでおいたアレの調整をするのだ。本当はマシューにも立ち会って欲しいんだが、こうしてのんびり出来る時は女の子としての時間を大切にしてもらいたい。


 マシューのことだからオルトロスの調整だって言えば喜んでこっちを選びそうだから其れは黙っておく。


 男世帯で育ったマシューにはああいう場は大切だからな!レニー達と遊びに出かけておっさん達からは学べなかったいろいろな部分をどんどん吸収させてあげなくては。


 しかし買い物か。ホントは地図が欲しいんだけど今回はろくに狩りをしなかったからな。たいてい地図って高いし貴重だったりするからな。金貨1枚じゃ済まなそうだし、市販されてるのは高い上に大雑把だーとかそういう感じだと尚困る。


 また何か狩った時にでもおねだりしてみるか。


 ルナーサは商人の町だし、地図となればここより良いものがありそうだ。向かう途中、少しだけ寄り道して何か狩るのも悪くはないだろうな。


「ミシェル、ルナーサからここまでどれくらいの時間がかかったんだい?」


 「そうですわね……、休憩を入れて……、14日くらいといったところでしょうか。馬を休ませながらの移動でしたし、旧ガンガレア領側は荒れ放題で街道が使い物になりませんからね。中央ルートを使う遠回りでなければここまで来れませんでしたし」


 ガンガレア……、ちらっと名前は聞いたことがあるな。ヴォルツと連合を組んだ国だったか。戦後ほったらかしになったのか?ううむ、地図や歴史書が欲しい、というか衛星ぶち上げてGPS機能使えるようにしたい……。


「14日か。俺達ならばもう少し早く到着することも出来るが、それくらいの予定でのんびり向かってもいいかな?場合によっては途中で少し狩りをして資金調達もしたいしさ」


「ええ、かまいませんわ。宝珠が手に入りましたし、帰りはそこまで急ぎませんので」


 ということは移動含めて一月はフォレムを開けることになるんだな。


「レニー、30日ほど帰らない旨をちゃんと知り合いに伝えるんだぞ。マシューはジンに伝えなくて大丈夫か?」


「あたい?あたいはいいよ。どうせ暫く帰らないって思ってんだから。ルナーサ土産でも持ってって驚かしてやるよ」


「あたしはそうですね、おっちゃんとかシェリーさんとか……、あとは街の人達にちょっと伝えるくらいかな」


 初めての国越え大遠征だ。しっかり準備しなくちゃな。

 

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