第五十六話 自己紹介
レニーがまた厄介そうなクエストを受けたようだ……。それはそれとしても、「忌み地」か。
悔やみの洞窟なる場所らしいが、恐らく訪れたことを悔やむ何かが有るのだろう。魔法的な物が存在するこの世界だ、何らかの魔術的な仕掛けが有ることも考えられるが、もしかしたらという気持ちもある。
そう、俺の装備に関わる何かがあるのでは、という予感だ。俺が居た神の山付近にある洞窟というのが何より引っかかる。レニーに色々と言いたいことも有るが、ここはお説教はせずに任せてみることにしよう。
……となれば。
レニーに連絡をして今後の予定を伝えた。
「あー、なるほどなるほど、そうですね。じゃあ、今から外に出ますので向かいましょう-」
と、やってきたのは前も来たカフェだ。ここは俺やオルトロスも一緒にお茶が出来る貴重なスポット……とは言っても飲むことは出来ないのだが……。
「じゃあ、改めて。私はレニー・ヴァイオレット。3級ハンターでパーティブレイブシャインのリーダーよ」
「あたいはマシュー、ただのマシューだ。レニーと同じく3級ハンターでブレイブシャインのメンバー、そしてトレジャーハンターギルド赤き尻尾の頭領もやってる」
「俺の名はカイザー!レニーが乗る君たちが言うところの機兵さ!よろしくな!」
「……」
「あ!こら!カイザー!気を失ったぞ!」
「もう!カイザーさん!だから止そうって……!」
流れで誤魔化そうと思ったが失敗してしまった。行けると思ったのになあ……。
『この手が通じないとなると、レニーやマシューのように知能が低くない可能性がありますね』
「聞こえてるぞ!スミレ!」
「スミレさん酷い!?」
『マシュ~より賢いだろうね~』
『口調が上品だったもんねー』
「おめえら!」
と、騒いでいるとミシェルさんとやらが目を覚ます。
「……は!私は?ここは?今、機兵が喋ったような……?」
「ミシェル、落ち着いて聞いて。私の機兵、カイザーとマシューの機兵オルトロスは……喋ります……!」
「そ、そんな悪い冗談は止めてちょうだい?う、うそよね?さっきのはいたずらよね?」
「すまない、ミシェル……驚かすつもりは……」
「……っぐ!」
また気絶するかと思ったが、なんとか踏みとどまったようだ。はあはあと荒い呼吸をしながらもゆっくりと俺やオルトロスを眺め、自分で自分を納得させようと頑張っているようだ。
「……本当に喋ってる……んですの?」
「ああ、申し訳ないが本当だ」
『オルたち~』
『喋れるんですー』
『『ねー』』
「…………ふう。」
ゴクゴクとカフェオレ的な物を飲み干し、一呼吸入れている。熱くないのだろうか……。
「私としたことが、突然のことに驚いてしまいました。私はミシェルです。カイザーさん、オルトロスさん、よろしくお願いしますね」
『実は私も居ますよ。私はスミレ、カイザーの戦術サポートAIを担当しています。お見知りおきを』
「ま、まだいらっしゃったのね!?す、スミレさん?はい、よ、よろしく……」
そう、こうなるから俺達が喋って動けるのはあまり公にしたくは無かったのだが、護衛以来と言うことで暫く一緒に行動することになるわけだ。となると、出来ることを隠して行動を制限されるのはとても面倒だと感じた。
例えインカムが間に合ったとしても、頻繁に使っては怪しまれるし、何より俺やスミレが直接依頼主と会話が出来ないのはめんどくさい。だから無理をしてでも秘密を打ち明ける必要があったわけだ。
「さて、今後の予定だが、みんないいかな?」
こう言う事は本来リーダーであるレニーがやるべきなのだが、レニーが俺に丸投げしている以上しかたない。とはいえ、異世界人である俺だけではどうしようも無い部分もあるため二人三脚+スミレで纏めていく。
「まず、キランビルで得た報酬で俺に図鑑を買って欲しい。別に趣味で読みたいというわけでは無いぞ、何かあった時に敵の正体が分かれば的確な指示を飛ばせるからな。これは必要経費だと思ってくれ」
反論されるかと思ったが、皆素直に頷いてくれた。どうも俺は本好きと思われている節があるからな。
「次に、出発は明日以降とし、今日は準備日とする。一度リックの所に行き、その後は自由に用意をしてくれ。レニー、俺はリックと話すことがあるから申し訳ないが買い物は徒歩で頼む。荷物はオルトロス、持ってやってくれ」
『おっけ~』
『任せてー』
リックの工房に来たが、まだまだリックは奥に籠もっていた。そろそろ出来るのでは無いかと淡い期待をしているが、こればかりは分からないな。
「じゃ、お買い物してきますね。マシュー、ミシェル行こっかー」
レニーがミシェルの手を引き、マシューはそれに併せてゆっくりとオルトロスを歩かせ街に戻っていった。
洞窟までは多めに見積もって1日ちょいか。洞窟の規模が分からないので仮に攻略時間を2日、予備に2日をみて10日分くらいの用意をしていけば間違いは無いだろう。余裕があれば遭遇した動物を狩れば食料の足しになるだろうな。
レニーに通信を入れ、その旨を伝える。これから本屋に向かう所だと言うことでちょっと嬉しくなった。あくまでも戦闘の役に立てるために欲しい図鑑ではあるが、魔獣図鑑、つまりは動物型メカの設定資料集的なものである。ああは言ったが個人的に欲しいというのもまた正直なところである。
どんな本なのか期待に胸を躍らせているとリックの雄叫びが聞こえてきた。
どうやら完成したようだ……。




