第四話 迫り来る脅威
山の内部より感知された高エネルギー反応、それは噴火の前兆だろうと推測した。スミレもそれを肯定し、噴火までどれくらいの猶予があるか教えてくれたのだが……。
『はい、カイザー。データによると残念ながら2週間後には大規模な噴火が発生するようです…そしておそらくこの辺りはお城や街を含めて……』
戦争を好まないこの平和な国家になんて仕打ちだ。人間が来ないなら自然が敵となるっていうのか?穏やかに日々を過ごす人達を、この優しい国民達に一体なんて試練を与えるんだよ!
「くそう!なんとかして…なんとか権限を無視して動けないのか!?」
『カイザー……それは……』
「俺が!俺さえ動ければ!噴火の一つや二つ!何とかできただろうに!くそっ!!!」
力があるのに見守ることしか出来ない、例え無力であったとしても出来ることはいくらでもあるはず何だ。それなのに、力も知恵もあるのになにも手助けが出来ないなんて……!
『カイザー、先に謝っておきます。ごめんなさい』
「どうしたスミレ?」
『一つは内緒にしていたことがあるからです。実は異言語発声システムは先月をもって完成、既に実装可能な状態でした。実装を遅らせていたのは…私のわがままです』
わかるぞスミレ。お前はカイザーが大好きだ。大好きだからこそ、原住民と会話可能になるとカイザーは自分との会話よりそちらを優先すると思ったんだろう?不安やヤキモチ、そんな感情から秘匿していたんだな、いいぞスミレ。俺はそういう人間臭いAIは大好物だ。
そしてなにより……このタイミングで報告するとは分かってるじゃ無いか。
「スミレ、謝らなくていい。そして安心してくれ。今後原住民と会話するようになってもスミレとの時間は大切にするよ」
『カイザー……ありがとう、とても嬉しく思います……。そして、もう一つのごめんなさいは貴方を護れないかもしれないということです。折角原住民との会話を楽しみにしているのに……ごめんなさい……』
「噴火か…動けないからな…しょうがないよそれは。スミレ、お前が謝ることじゃない……」
『ですが……、いえ、わかりました。でもカイザー、忘れないでくださいね。私はいつでもあなたと共に……」
「ああ…、もちろんだ!」
そして、俺はゆっくりと、そして驚かせないように慎重に小さめの声を出した。
「あ、あーあー、びっくりさせたらごめんなさい。俺の足元の人たち、聞こえますか?」
不思議そうな顔でキョロキョロしていた人たちだったが、一人が「神像がしゃべってるぞ」と俺を指さした。
途端、次々と声の出所が俺だと気づき、それを見た人々は腰を抜かしたり、祈り始めたり大変な騒ぎになった。
良く来る婆さんが腰を抜かしてやしないか心配したが、泣き笑いのめっちゃ信仰するする顔、正しく神を見たかの顔で凄い勢いで拝みまくっている……。婆さん、分かったからムチャしないで……。
「あ、うん。そう、畏まらなくていいから……。あー……まあいいや、じゃあそういうノリで行くね。
今から皆さんに大切なお告げをします。これは嘘や冗談では無く、真実です。驚かず、そして決して慌てずに話を聞いて下さい」
思いのほか俺の声はあたりに響いた。そのおかげで周囲に居た人や兵士たちも何事かと集まってくる。この話はできるだけ多くの人に聞いて貰い拡散して欲しい。王都や街まで届く声量で話せばいいか?とも思ったが、婆さん含めこの場の人達がとんでもないことになるのは想像にたやすいので流石に其れはよした。
「三日後…ええとスミレ、何時ごろ?え?朝4時?ありがとう。ごほん!!!14日が過ぎ去った後の早朝、我の後方にそびえる山が火を噴く。その火は山のみならず野を焼き道を焼き、やがては王都、城は勿論のこと西の街にまで到達する」
突然の滅亡宣告に気を失う物、涙を流し立ち尽くす物、オロオロする者……様々だが、皆どうしたら良いのか分からなくなっていた。そりゃそうだ。「明日隕石が落ちまーす半径50kmほど焼けちゃうよーじゃ、グッドラック!」なんて言われても脅かすだけ脅かして助けてくれないんかーい!って突っ込みを入れたくなってしまうだろう。脅かした後はアドバイス、これ大事。
「案ずるな、人々よ。我からの願いは人類の生存である。東だ、東へ向かう街道を通り海辺の街ルンシールへ避難しろ。そこまでは山の火も吹き上がる毒も届きはしない。天を覆う曇天は暫く続くだろうが、我を信じて待てばやがてその雲は晴れ、生の喜びを分かち合えることだろう。今から避難すれば十分に間に合う。速やかに大切な者たちに告げ、逃げなさい」
ふう、もっともらしく言えたかな……何人かは既に街や城に向かって走り出していたが、半信半疑でざわざわしているものが多かった。かなり上手くいったつもりだが、後一押しだな。
「疑うのも仕方あるまい。しかし先ほど大地を揺らした前兆、今までに感じたことがあるものは居るか?居ないだろう。あれは山に溜められし火の精霊が活性化し暴れだす前兆である。我は来たりし日にこれを伝えるため、ルストニアの民を救うためこの場所に降り立ったのだ。ここにいる者たちよ、わが身の代わりとなり、この言葉を広く伝え、多数の命を救ってくれ。それが我の願いだ……」
これだけ言っておけばいいだろう。後はもう喋らなくなりましたよーって顔でじっとしてれば信憑性も上がるってもんだ。
『カイザー、周囲の反応…原住民達ですが、街や城に向かったようです。』
「ありがとうスミレ。少しでも多くの人達が救われるとうれしいな。……例えこの身動かずともシャインカイザーの名の元、真・勇者の名の元ッ!この身燃え尽きようとも護り抜くッ……!」
『カイザー…はい…、私も同感です……』
シャインカイザー43話 「決戦!ジャマリオン!」で 敵本拠地に強襲したシャインカイザーだったが、ジャマリオンでも屈指の憎まれ役により罠にはめられてしまう。今まさに焼却施設に飲み込まれようとするカイザーは拒否する竜也を無理やり強制射出、誰にいうでも無く先のセリフを言うんだ……。その後駆け付けた仲間たちにより窮地を脱出することとなるわけだが、覚悟を感じさせるあのシーンはとても熱かった……。言ってみたいセリフベスト10だ。
実際言ってみるとやっぱりかっこいいが、なんだかやっぱりじわじわと恥ずかしくなってくるな……。きっと人間体だったらば顔が赤くなっているに違いない。
『カイザー、センサーに微弱な異常反応が見られますが……?』
「……大丈夫、オールグリーンだ」