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第四百七十八話 らしくあれ

 足下から迫る凄まじい重圧。


 体内に夥しい量の魔力をその生命力として蓄えているルクルゥシアは、圧倒的な破壊力と人類への憎しみを負の力へと転換し、収めきれなくなったそれは周囲に漏れ出し、近くに居る者に大きな畏れを抱かせる。


 普通の人間であれば畏れのあまり即座に気を失うか、運が悪ければ発狂してしまうことだろう。


 そして、その重圧は内包しているエネルギーのせいだけではない。


 その巨体、全高は80mを超え、形状のベースは黒龍であるものの、半身にはぬらぬらと蠢く太い触手が生えており、また、体の彼方此方は絶えず形状を変化させていて、大きさも見た目の不気味さも中々でヴィジュアル的に大層堪える存在である。


 元のルクルゥシアも結構デカかったが、この半分くらい……いや、もう少し小さかった筈だし、全体的にもう少し某邪神的な物に近い風貌をしていたのだが、黒龍を喰らい、ある意味では帝国すらも喰らったこいつは俺が知るルクルゥシアより大分グレードアップしている。


 数々の戦いをくぐり抜けてきたブレイブシャインのパイロット達でさえ、ウンザリとした表情を浮かべ、若干気持ちが押され気味なのは仕方が無いことだろう。


 さて……どこから手を付けてやろうか。


 合体し、背丈が伸びた俺の全高は16.2m。対して奴は80mを超えている。例えるならば、人が生身で巨大ロボに立ち向かう位のサイズ差があるわけだ。


 これまでも大きな魔獣との戦闘を切り抜けてきたが、縦にも横にも大きく、頭部意外は不定形にうごめくルクルゥシアは何処から手を付ければ良いのか少々判断に困る。


 一番わかり易い頭部を狙うのがやりやすいのだが、そう安々と触らせてはくれまいて。


 ま、ゴチャゴチャ考えていても仕方が無い。ここはマシューに習って出たとこ勝負と行こうじゃないか。大まかな流れ……というか、どう立ち向かってやるかはもう決めてあるしな。


 となれば、まずはお約束から片付けるか。奴がわざわざ此方の舞台に上がってきてくれたんだ。此方も礼を持って答えてやろう。



「よし、ブースト停止。これより奴と最後の対話……いや、あいつに改めて喧嘩を売るぞ。その後は出たとこ勝負だ!スミレ、フィアールカ、キリン!バックアップは任せたぞ!」


「喧嘩を売るって……カイザー、まるでマシューの様な発言ですね」


「なんだとー!あたいは誰彼構わず喧嘩を売るような馬鹿じゃないぞ!」


『ははは、良いじゃないかスミレくん。物語の最後は口撃から始まらなくてはね。それが得意な竜也君が居ないんだ、カイザーに頑張ってもらおうじゃないか』


『やってやれなのカイザー!あいつデカくて生意気なの!』


 スミレは呆れた様な表情を浮かべていたが、何か自分の中で納得がいったのか小さくため息をつき、何故かにっこりと微笑んだ。


「はあ……ま、確かに言われてみればそうですね。後は任されました。思う存分煽って差し上げなさい、カイザー」


 恐らく、アニメの最終話付近の流れを思い出していたのだろうな。アニメの世界から召喚された形に近い他の僚機たちとは違い、スミレはこちらの世界で新たなスミレとして生を成した存在だ。


 故にアニメの中で起きた出来事を我が身の記憶として覚えているということはなく、俺から共有された『現実世界日本』の知識と、皆で一緒に見たアニメの知識としてシャインカイザーのお話を記録している。


 故に最終決戦前の流れについて、他のメンバーと若干の温度差があったのだろうが、俺の記憶やこれまでの思い出を振り返り、何か思うところがあったのだろうて。


 さあ、スミレ先生の承諾も出た。改めて奴に挨拶をしてやろうじゃないか。 


『来たかルクルゥシア!お前を無に帰すにはこれ以上のない場所だろう?』


『KkkkhaaaaizzzZa...カイザアアアアア!! 貴様モ喰ライ……コノ惑星(ほし)モ喰ラッテクレルワアァaaAAAaa......!!!!』


『嘆かわしいな、ルクルゥシアよ。以前の貴様にはまだ知性というものが感じられたのだが、今の貴様はただ大きいだけの獣……対話するに値しないな』


『OOoooooohhoooonOrE......オノレオノレオノレ……!KkkkhhaaaizzzZaaaaaaAAaaaa!!!!!』


「ルクルゥシア左腕部に高エネルギー反応!」


「せっかちな奴め、もうお話をするのに飽きたらしいな!フィオラ!ラムレット!アイギス展開!」

 

「「了解!モード:アイギス!」」


「一同衝撃に備えろ!デカい先制攻撃が来るぞ!」


 両腕を前に突き出し、全身を覆う巨大なシールドを展開する。オレンジ色に輝く多角形の集合体が機体を粗方覆ったタイミングでルクゥシアの左腕が一瞬キラリと光り、俺達は紫色の光に包まれる。


「高濃度の魔力に拠るエネルギー波到達!これは魔導レーザーと仮称しましょう」


 絶賛敵の攻撃を受けている最中だと言うのに、スミレさんは呑気なものだ。ま、彼女が呑気で居られる内は俺達もある程度安心できる状況だということなんだけどな。


『魔導レーザーか、ルクルゥシアも中々面白い攻撃を覚えたものだねえ。しかし、私のアイギスはこの程度の攻撃じゃなんてこと無いのさ』


 キリンが少々ウキウキとした声を出しているが、これは研究者としての彼女が持つ探究心がムクムクと湧き上がっているせいだろうな……。


『データはこちらでも抑えたの。なかなか興味深い攻撃なの!参考にさせてもらうの!』


 フィアールカからも呑気な通信が届く。全くコイツラときたら、最終決戦中だと言うのに全くしまらないな……。


 ま、これくらいしまらないのが俺達らしい……な。


 竜也達が描いた最終決戦とは若干趣が違うが、俺達は俺達らしくやればいい。


「魔導レーザー照射終了。ルクルゥシア、動きます」


「うむ、ではこちらも行くぞ!遠慮はしない!最初から全力でゆくぞ!ついて来れるな、皆!」


「「「「「はい!」」」」」


 見てろよルクルゥシア、出たとこ勝負とは言ったが、決戦の地に大気圏外(ここ)を選んだ理由はまだもう一つ有るんだ。


 奴がそれに気づくまではまだ時間が有るが……、戦っていれば直ぐにその時は訪れる。


 輝力とはどんなものなのか、とくと味あわせてやるぞ!

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