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第四百七十七話 邪神覚醒

 眼下にシュヴァルツヴァルト城……いや、ルクルゥシアを収め滞空する。


 濃密な霧に覆われたその巨体は禍々しくも壮観であり、少々興奮してしまうのはロボアニメ好きな俺の魂に拠る所なので許してほしい。


「遠目には不気味なただの城にしか見えませんでしたが……近づくとなんと言いますか、圧が凄いですわね……」


「ミシェルも感じるか。あたいもヤバイわ。強い魔獣と対峙してる時のような、なんか知らんが、ヤベー奴が居るな!っていうのがすげー来る」


 パイロット達が苦笑いをしながらモニタ越しに城を見つめている。


 この身体になってから、そういった『肌で感じるピリピリとしたプレッシャー』というものや『ゾッとして鳥肌が立つ』と言う感覚とは無縁になってしまったが、データとして『こいつはやばい』というのはアラートとなって体感することが出来る。


 これはまた人間とは違う感覚なので上手く伝えにくいのだが、ああ、あれだな。緊急地震速報等のエリアメール、けたたましく鳴り響くアレが体内を駆け巡るような感覚と言えばわかるだろうか。


 そんな感覚が今まさに俺の体内を駆け巡っているわけだが……、テレビの中にいるそれとは違い、実物は正しく畏怖の象徴として相応しく、こうしてまだ城の状態の其れを見下ろしているだけでアラートはどんどん強くなっていく。


 一体、本性を表したらどんだけの威圧を受けることだろうか。想像したくはないが、今から嫌でも本体を暴かねばならない。


「いいか、みんな。今から俺は奴を煽り、その姿を暴き出す。現在とは比べ物にならん威圧を受けることとなるだろうが、どうか心をしっかり保ち、奴に飲み込まれないよう食いしばってくれ」


「ふふ……大丈夫ですよ、カイザーさん。今までさんざん予習してきたじゃないですか」


「そうだよルゥ!そりゃあ、お話の中のルクルゥシアと実物は違うと思うけど……私には皆が、お姉ちゃんたちやルゥ達がついてるんだ。ひとりぼっちのルクルゥシアなんかに負けないよ!」


 頼もしい子達だ。そうだな、俺にもまた、この子達が、僚機達がついている。ここが気合の入れどころだな!


「スミレ、全チャンネルオープン。及び、外部スピーカーも最大出力で頼む」


「了解。全チャンネルオープン。外部スピーカー展開。何時でもどうぞ」


 ルクルゥシアに喧嘩を売るには、奴に言葉を届けるにはどうすれば良いか? 奴の説明は設定資料集でも『異界から現れし邪神の様な存在』と言う具合で、詳細な解説はされていなかった。設定を考えるのが面倒だったのか、続編を作りそこで語る予定があったのか今となっては分からないが、どちらにせよ奴の詳しい情報はアニメで得られた物以上に俺は持っていない。


 なので通信チャンネルを全部開け、更に外部スピーカーを展開して中からも外からも伝わるようにしたわけなのだが、これは同時に俺から通信機を貰っている者たち、全員の元に同じ言葉が届くことを意味する。


 ……あんまり恥ずかしいことを言うと後から弄られてしまうだろうな……。


 まあいいさ、一世一代の名乗り口上、とくと御覧じろ!


『ブレイブシャイン及び、連合軍総司令官のカイザーだ。いや……黒森重工防衛隊所属、炎来竜也の搭乗機体、カイザーと言ったほうがお前には覚えが良いか?

 久しぶりだな、ルクルゥシア。何の因果か俺達は世界を超えてしまったが、こちらの世界でもどうやら俺達は相容れないようだ。さあ、城に籠もらず、姿を現せ。出てこい、ルクルゥシア!今回もまた塵も残さず葬り去ってやろう!』


 我ながらあまりスマートなセリフとは思えなかったが、気の利いたスピーチは相も変わらず苦手なんだ、そこは勘弁してほしい!


 生身であれば、全身真っ赤に染まっていたであろう俺のスピーチは果たして奴に届いたのだろうか?


 ……それは間もなく振動を持って明らかとなった。


「地震……いえ、シュヴァルツヴァルツ城、隆起! どうやら貴方のラブコールはルクルゥシアのハートに届いたようですね」


「妙な言い方をするのは辞めてほしいな。ブレイブシャイン一同!ルクルゥシアが姿を現すぞ!重圧に備えろ!」


「「「「了解!」」」」


「フィアールカ!君は次の作戦に備え移動を開始してくれ!」


「了解なの!カイザー、がんばってねなの!」


「ああ!」


 鈍く重い音と盛大な砂煙を立てながら、シュヴァルツヴァルツ城だったものは隆起を続け、ボロボロと外郭として纏っていた石材等がこぼれ落ちていく。


 元々40m程の高さを持っていたシュヴァルツヴァルト城よりもさらに高く伸びるその身体は今もなお隆起を続けている。


「い、いったいどんだけでけーんだよ!」


「まるで山みたいだな……」


 全長60mを少し過ぎた頃、隆起が止まり魔力霧が晴れて……いや、城であったもの、ルクルゥシアの体内に取り込まれていく。


 霧の中から禍々しくも荘厳な畏怖の象徴、邪神ルクルゥシアが姿を現す。


『Ghrfaaaa......ア…‥アア……オボエテイル……オボエテイルゾ……忌々シキ白銀ノ光……』


 その姿は俺が知る触手の塊といった姿に龍の特徴を持った巨大な何か……と言った姿ではあったが、そのセリフからかつてカイザーと戦ったルクルゥシアと同じ存在であるということが伺えた。


『グウ……何故……我ガコノ地二堕サレタノカハワカラヌ……ガ、コノ身二宿ル憎シミが……コノ地ヲ焼ケト我ニ云ウ。ソシテ、白銀ノ光……貴様ラヲ……今度コソ深淵ニ堕トセト我ノ本能ガ叫ブ……』


 どうやら奴が取り込んだ黒龍が内に秘めた悲しみや憎しみがルクルゥシアの行動原理に何らかの影響を及ぼしているのは間違いないようだ。


 もしも、奴の心が其れに負けてしまっていたら、ルクルゥシアは俺との戦闘よりもこの大陸の蹂躙を優先してしまったかも知れない。その場合は俺が立てていた作戦は無駄になっていたと思う。


 しかし、奴は其れと同時に俺の事を、カイザーや竜也達と戦い、敗北した記憶をきちんと覚えていてくれた。本来であればあまり喜ばしい話ではないのだが、今回ばかりは最高だ!最高だぞルクルゥシア!


『ああ、お前が何を企んでいるか、俺には微塵もわからんが其れを許すわけにはいかん!来い!ルクルゥシア!今こそ貴様に引導を渡す時だ!』


『GhrfaaaaaaaaaAAAAAaaaaKhaaayZaaaaAAaa!!』


「スミレ! 耐熱フィールド及び対Gフィールド展開!」


「了解 耐熱及び対Gフィールド展開します」


「よし!シグレ!ブースト出力最大!目的地は真上、宇宙(ソラ)に向け飛翔する!」


「了解!シャインカイザー出力を飛行ユニット及び脚部ブースターに集中!では皆、飛びますよ!舌を噛まないよう気をつけるでござる!」


「ではゆくぞ皆!シャインカイザー発進!」


 ルクルゥシアを地上に置き去りにし、宇宙に向け飛び立つ我々。傍目からすれば煽るだけ煽って逃げているように見えるかも知れない……いや、そうは見えないか。


 我々が飛び立って間もなく、地上からルクルゥシアが飛び上がる姿が捉えられた。余程頭に来ているらしく、凄まじい勢いで飛び立っているな……衝撃で地上は酷いことになってそうだが……其れを考えるのはまた後だ。


「カイザー、ルクルゥシアの反応、急激に接近中」


「ああ、あれだけデカいとレーダーを見るまでもないな……」


 大気圏を飛び出し、先程まで居た惑星の姿を球体で捉えられる位置まで移動をする。ここまでくればアレだけの巨体相手に思いっきりやったとしても周囲に影響を及ぼすことはないだろう。


 何より、シャインカイザーの最終決戦の場は宇宙だ。決戦の場としてこれ以上の場所はないだろう?

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