第四百七十二話 地を揺らし地を燃やす蒼き炎と白き炎
マシュー視点です
「ちいっ!あっちの攻撃は屁でもないが、こっちの攻撃も当たらないな!」
『マシューが先に焦れてはだめでござるよ!』
以前戦った相手だし、そん時より大分ケルベロスに馴染んでる。増して、シグレが乗るフェニックスも一緒にいるんだ、2対1だから楽勝だと思ったんだけどな……。
なんだか前に戦ったときより動きが速い……というか、無茶苦茶な動きでデタラメに動くもんだから当たるものも当たらない。
フェニックスがひょいひょい飛んでラタニスクの奴を煽ってくれてるおかげで攻撃は分散してるし、精度も落ちてるけどさあ……。
「いい加減イライラしてきたぞ!」
『だから耐えるでござる!マシューはもう少し忍耐力を鍛えたほうが良いですよ』
「あーうん!わかってるんだけど!こう!当たらないと!がああ!」
これでも以前より射撃は上手くなってるつもりなんだよ。それなのに当たらない!なんで当たんないって明らかに以前戦ったラタニスクより速くて変な動きをしてるんだから当たるもんも当たらない!
一応、あたいにも機動力を上げる秘策が無いこともない。けど、アレは時間が限られているし、かわされちまった日にゃあ、格好の的だ。へたばってる所を蜂の巣にされちゃうだろうな。
もー、ほんとむしゃくしゃするな!レニーだったら多分、とっくに相手に向かってすっ飛んでいってるんじゃないか?
と、あたいのイライラが最大限に高まった所で相棒たちがなにやら言い始めた。
「マシューシグレーちょっと聞いて―」
「あいつ~中に誰も乗ってないんだよ~」
「そりゃあたいだって知ってるさ。あいつどう見ても眷属だもんな。なんか黒いモヤモヤ出てるしさー」
「中に誰も居ないからーデタラメに動けるんだよー」
「でも~僕らみたいにAIとパイロットが協力して動けないから~」
「「そこが弱点だよ~」」
『オルとロスは聡明でござるな。加えて言うのであれば、奴は賢い獣と同じ程度の思考しか出来ないのではないかと推測できます。我々の攻撃に反応こそしていますが、それに知性はあまり感じられない。これで相手が人であれば、まず私をどうにか片付けようとするはずです』
「確かにな。あんだけ速く動けるんだ、まずはちょろちょろうるさいフェニックスを叩き落としてしまおうとか考えるだろうな。いや、あたいならそうするね。フェニックスを落としてしまえばあとは機動力の差でケルベロスが落ちるのは時間の問題だもんな」
それに……、あたい達にはAIがついている。攻撃に集中している間にもオルやロス、ガア助が分析をしてくれたり、本当に危ない時は緊急回避をしてくれるかんな。こいつらにゃスミレ程的確な指示はとばせねーけど、あたいよりよっぽど賢いもん。今だってこうしてあたいを冷静にさせてくれたし、ほんと頼りになるよ。
「マシュー、シグレー。スミレからヒントが来たよー」
「ラタニスクは偽物だから~、今の僕達のことを前の僕達と勘違いしてるんだって~」
前の……? ちらりとカイザー達の方を見ると、どうやら1抜けされてしまったようで、生き残った雑魚を潰しながら余裕の顔でコチラを見物してやがる……。
しかし、前のあたい達と勘違いしている……ね。
『マシュー、つまる所、今の我々は敵が知らない技を使えるということでござるよ』
「てことは……、意表をつけるってこったな!」
あいつは以前のあたい達の姿を見ている。悔しいけど、以前のあたい達なら、この状態のままじわじわと削られて負けちまうだろうな。
でも、今のあたい達はここからさらに動くことが出来る。そして、あいつはその事を知らない。気づくことが出来ずに決まった行動を、あたい達を斃すために効率が良い動きをしているだけだ。
であれば、やることは一つだ!ここはいっちょ派手に決めてやるとするか!
「シグレ、とどめはお前に任せるぞ。アレをどどーんと使ってくれ!あたいが最初に仕掛けるから、勝手にそっちで合わせろ!いっくぞおおおお!うおおおおおおお!」
『ちょ、マシュー!?ああもう!思いついたら即行動する癖は良くないでござるよ!こちらにも準備というものがですね!』
へへ、わるいなシグレ。身体が勝手に動いてしまったんだから許しておくれ。文句を言いつつ、あたいのい想定した通り動いてくれてるじゃないか。だからあたいはお前が、皆が好きさ!
「ヘルズウウウウウウゥ……フレィイイイイムナッコォオオアアアア!!!」
この技は拳に纏った輝力を青い炎に変えて相手に叩き込む技なんだが、発動から数秒間の間、機動力がすんげえ上がるっていう特性がある……ってキリンが言ってた。
欠点として、結構な輝力を持ってかれるから、効果が切れた後に酷いスキが出来てしまう。だから必ず倒せる時に使う必殺技ってわけなのさ。
だけど、今はそんな事を気にする必要はない。
「うおおおおおるぁああああああああ!!!!すっとべえええええええええ!!!」
ラタニスクは突然のことに反応しきれてなかった。ケルベロスの拳が深々と腹部に突き刺さり、このまま倒せてしまうのでは?そう思ったが……が、かってえなこいつ!何をやったのかわからんが、オルの奴が『おなかに防御を集中させてる~』って言ってるな……だけど、倒せねえのは想定内だ。
寧ろ腹を固くしてくれたのは好都合!あたいの拳から、ケルベロスの拳から伝わる力が逃げること無く伝わっていく。
ケルベロスの拳も結構なダメージだが、ラタニスクの奴はそれ以上だ。ガツンといい具合に打ち上がっていったぞ!
「よっしゃ!いっけえええええ!シグレええええええ!!!」
『マシュウウウウウ!!避けるでござるよおおお!!フェニィイイックスゥウウウインパクトオォオオオォ!!』
打ち上げられたラタニスクを再び地に落とすように真っ赤に燃えるフェニックスが上から体当たりをかます。
って、のんきに見てる場合じゃねえ!このままじゃあたい達も焼かれちまう!畜生!キリンが居ればアイギスで悠々と護ってもらえるんだけどな!
何とか逃げる分の輝力は残ってたので、慌てて後ろに飛び退く。大丈夫だよ?そこまで計算してたよ?だからオルもロスも縫いぐるみを動かしてあたいに文句をいうのはやめろよな。
残りの輝力を全部吐き出してなんとか下がると、さっきまであたいが居た場所はグツグツと真っ赤に沸騰していて、土なんだかなんなんだかわかんなくなってた。
あいかわらずおっかねえ技だよ……。
『見たか!忍術炎翼の神鳥!拙者の翼は重いでござるよ!』
トドメを譲ったのちょっと悔しいな……シグレめ、こないだ一緒に考えてた『決め台詞』を早速使ってるし。あたいもかっこいいの考えてたんだけどな……。
『こちらカイザー……二人共、よくやったな……だがな……お前ら……』
『スミレです。マシュー、シグレ。倒せたのは良いでしょう、よくやりました。しかし、決戦を前に輝力を使い切るとは何事ですか。それに、ここは避難所も街も近いんですよ?何かあったらどうするつもりだったんですか?貴方がたは……』
「あーあー!わかった!わかったから!ごめん!ごめんて!お説教は後からたっぷり聞くから!な!」
怒られちまった……けど、今の気分はなんと言うか……
『スミレ殿やカイザー殿がおっしゃるのは最もですが……スッキリしましたね、マシュー』
「ああ、すっげえスッキリした!今ならルクルゥシアの10や20元気よくぶっ飛ばせそうだ!」
『まったく。貴方がたはもう!はあ……、仕方ありませんね、少しの間じっとして輝力回復に努めなさい』
「『はあい』」
確かにかなり疲れてしまった……。けど、今のあたい達なら30分も休めば元通りだ。キリンがくれた怪しい飲み物もあるしな。
さて、ミシェル達もそろそろなにかやらかしそうだぞ。見物しながら一休みと行くかね。
誤字報告ありがとうございます。気をつけているつもりなのですが、
つもりだけなので、結構ボロボロと誤字ってますね!めちゃ助かってます!




