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第四百七十話 VRバラメシオンと眷属バラメシオンの違い

 バラメシオンのパイロットはノワールという女性で、ワインレッドのロングヘアがよく似合うおっとり系の女幹部だ。


 豊かな胸部装甲を持つ大人のお姉さんという見た目だが、実はかなりの食いしん坊キャラであり、敵ながら、ちょいちょい日常回に登場しては竜也達と大食い対決をする等していた。


『あら、どうして貴方達がこのお店にいるのかしら?』


『それはこっちのセリフよ!竜也!迅!謙一!やるわよ!』


『やるわよって飯屋で何しようってんだよ、雫』


『何って、ノワールよ?ここで仕留めておくべきなのよ!』


『全く……お嬢ちゃんはここが何のお店なのか忘れているようね?私だって空気くらいは読めるわ……というか、非番の日にわざわざ仕事なんてしないわ。馬鹿らしいじゃない』


『なっ……』


『そういうわけだ、雫。ここは俺とノワールで大食い対決と行こうじゃねえか』


『た、竜也!?』


『うふふ……だから貴方は好きよ。いいわ、非番の日に相応しい方法で叩きのめしてあげる』


 なんて具合にカツ丼大盛り対決や、カレーライス大盛り対決、お好み焼き耐久バトルなど……、街でノワールと遭遇した時点でギャグ回が確定してしまうほど、非番時のノワールは穏やかなキャラで、これまたリムワースとは別のベクトルのファンが多数ついていた。


 しかし、そんなノワールもシリアス回には豹変してしまう。むしろコチラが真の姿と言うべきなのだろうが、彼女が乗る真紅の機体、ノワール専用機バラメシオンは腰にミサイルポッドを備え遠距離から牽制し、懐に飛び込もうとすれば手に持つ槍でブスリとやられてしまう。


 そして飛行タイプということで、空戦を得意とする彼女は高機動のバラメシオンで踊るように天を舞い、しばしば竜也達を翻弄していたっけな。


 さて、俺の目の前にいるバラメシオンはどうだろうか。以前、仮想空間で戦ったバラメシオンはきちんとノワールまで再現されていて、中々に手強く、カイザーアルティメットのちからを手に入れ漸く斃した相手であった。


 一度倒した相手だからと、余裕の考察をしていたわけだが、スミレやレニーからのヘルプが入るとおり、今相対しているバラメシオンは以前戦ったものよりも強化されているようだな。


「推測ですが、以前戦ったバラメシオンはパイロットレベルまで再現された物で、ある意味では本物と言える存在でした。しかし、今戦闘中のバラメシオンはその姿を模した眷属であり、パイロットが乗っていません」


「パイロットの存在は俺達にとって有り難いものだが、場合によっては枷となる、そういうことだな?」


「はい。レニー、これは他所の話でうちの話ではありませんからね」


「わかってるよお姉ちゃん。私のことは良いから続けて……っと、危ない危ない!」


 こちらに飛んできたミサイルをレニーが危なげに躱す……現在何をしているかと言えば、バラメシオンから距離を取りつつ、作戦会議中なのである。何を悠長な……と、思うかも知れないが、今説明している通り、少々予定が狂ってしまった。それをどう修正するか、改めて敵データを収集しつつ作戦を練っているというわけだ。


「パイロットとは目で見て音で聞いて、そして感覚で判断をして機体を操縦する存在です。今のように飛来するミサイルの存在を目視で確認、その軌道やシステムアラートにより被弾を予想、適切な回避方法を思考し、実行と言うプロセスで『ミサイルを躱す』と言う行動を取るわけなのですが、自分の体を動かすのとは違い、操縦の分だけ動作にラグが生じてしまいます」


「以前戦ったバラメシオンも強敵だったが、ノワールの性格から出る油断がちょいちょい見られたな」


「はい。人間が操縦する以上、どれだけ熟練していても何かしらの隙が生じてしまうわけです」


「つまり、あのバラメシオンは眷属だからラグもなく、無駄な思考も無く、スキが産まれにくいってことなのかな?」


「そうですね、流石レニーです。そして、パイロットが居ない事による利点はもう一つあります」


「……安全マージンをガン無視した無茶な機動が出来る……ということだな?」


「はい、カイザーもたまにはやりますね。その通りです。我々の機体はパイロットへの負担を考慮し、コクピット内に生じるGや衝撃をある程度軽減するように設計されています」


「が、それも万全ではない。それはレニーも身をもって知っているだろう?」


「はい。攻撃を受ければガツン!と衝撃が来るし、無理に避けるとお腹がグワー!っと締め付けられて頭がズーンとします!」


「はい、よく出来ました。しかし、それ以上酷いことにならないよう安全装置が働いています」


「カイザーさんやケルベロス達はもっと無茶な動きが出来るってこと?」


「パイロットが居なければそうなるな。しかしな、機体にだって負荷がかからないわけじゃない。安全装置はパイロット、機体。その両方を気遣っているんだよ」


 パイロットが存在しない『眷属バラメシオン』はそれを気遣う必要はなく、また、魔獣のように本能で動く眷属は我が身を気遣うと言う思考に至らない。


 火事場の馬鹿力というのは、極度の興奮時、一時的に身体のリミッターを外して普段は身体の負担を考慮して出し切れていない力を出すものだと言われているが、現在我々の前に立ちふさがっている幹部機達はそのどれもが常時リミッター解除をしている状態と言っても過言ではない。


 戦いが長期化すれば無理が生じて自滅する可能性は高いが、このままでは先に我々がやられてしまうかも知れない。


 事実、2対1だと言うのにミシェル達は中々に苦戦をしているようだ。


 が、我々とて以前のままではないのだ。


「スミレ、データの収集は済んだな?」


「はい。眷属バラメシオンの戦力データ、解析終了しました」


「ならば良し。ではレニー、スミレ。これより攻撃に転じる。ゆくぞ!」


「「了解!」」

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