第四百六十七話 前哨戦
『承認来たの!薙ぎ払われるがいいのー!!』
尖兵達との戦闘はフィアールカの嬉しそうな雄叫びとともに始まった。グランシャイナーから放たれた主砲はワラワラと押し寄せる眷属達を宣言どおりになぎ払い、軽く1000機近くは戦闘不能にした。
「よくやったフィアールカ!ひとまず主砲は温存。引き続き上空より援護を頼む!」
『承ったの!』
主砲は輝力をそれなりに消費をするが、艦には巨大なジェネレーターが搭載されており、数発撃った所で枯渇することはない。さらに言えば、空に浮かぶポーラが太陽光を変換し蓄えた輝力を受信するトンデモ機能まで備わっているため、その気になればグランシャイナーだけでも十分に殲滅することが可能なのだが、この地においてはそれをするには少々問題があった。
眷属達の背後に控える帝都である。
以前の戦闘でもそうだったが、使用した主砲はフィアールカの演算により、帝都に影響を及ぼさないポイントを導き出して放った物である。
もしも遠慮なく敵が居るところに片っ端から放ってしまえば大変だ。ある程度の貫通力があるフォトンビームは眷属達を斃してもまだ止まらず、帝都にまで到達することだろう。
高温のビームが帝都に到達してしまえば大変だ。直接の被害が僅かであっても、そこから火災が発生し、大火を招くことも考えられる。
故に、使用の際には慎重に計算を重ね、余計な被害を生み出さないようにする必要があるのだ。
「では、俺たちも行くとしよう!」
「「「「了解!」」」」
左舷、右舷に飛び出すはケルベロスとヤマタノオロチだ。共に近接攻撃に優れた2機は敵陣営でも層が厚いところに向かってもらうことにしたのだ。
ケルベロスは高火力で、ヤマタノオロチは手数の勢いで敵勢力を削ってもらう。彼女達は近接攻撃の他にフォトンランチャーも搭載されているため、我々5機の中で1位2位を争う殲滅力を持っている。
両舷に比べ、敵の数が薄い中央を担当してもらうのはキリンだ。サポートタイプの彼女の殲滅力は汎用型の俺に劣るほど低いのだが、それはあくまでも素の状態でのこと。
彼女は今、本来であればこういった場所で使うことがないであろう追加兵装を機体前面に装着し、ゆっくりと眷属たちに向かい歩みを進めている。
……以前洞窟を抜けるのに使用した掘削機を改造したものである。といっても、アレをそのままというわけではなく、攻撃用に改造されていて、中々に物騒な見た目にはなっているのだが。
さて、残る俺とフェニックスは遊撃である。共に飛行ユニットを備え、空からの攻撃を可能とする我々は戦場を飛び回り、僚機達の援護に回る。
さらに、先に指示を出したようにグランシャイナーからの援護も有るため、数としては頼りがない我々では有るが、火力の暴力と機動力で敵勢力2000機の相手としてこの地に立てるのである。
「とは言え……、ウンザリするほどの兵数だな……」
「レーダー反応からすればざっくりと2032機ですね。フィアールカは『全部落としてしまっても構わないのだろうなの!』と張り切っていましたが、甘いですね」
「そんな事言ってたの……。まあ、それでも1000機は落としてくれたんだ。ありがたい話だよ」
下を見れば、キリンが巨大重機の様に立ち振舞い、敵機を次々と粉砕している……。
前面にせり出している掘削用ドリルはほぼそのままの凶悪さだが、両腕につけられたアタッチメントがさらに輪をかけて凶悪だ。有名な巨大重機のように巨大な回転刃がつけられていて、腕を動かし攻撃範囲を広めて居るのだ。
本来は掘削などに使われる重機だと思ったが……いやまあ、確かにあの重機を見た時は『やべえ!巨大ロボットじゃんか!』と興奮はしたけどさあ……。ううむ、知らぬ人が見れば、見た目の厳つさからして、どちらが敵機なのか判断に困るかも知れないな。
「……フィオラ達、なんか楽しそうだね……」
『わははは!凄かろう!私が作った兵器は素晴らしかろう!』
『凄い凄い!パイロットが居ない人形だから遠慮なんていらないしね!さあ!やられたい奴は前に出ろー!』
『凄いけどさ、アタイはなんだか戦いと言うものがわからなくなってきたよ……』
「ラムレットだけはまともで居てくれな……」
「私としてはアレくらい装備したほうが頼りないカイザーにはちょうどよいと思いますけどね」
「スミレぇ……っと、下を通る以上見逃せないぞ。レニー」
「はい!」
僚機達の包囲を抜け、避難所に向かおうとする眷属に上から攻撃を加える。俺が装備している飛び道具と言えば、リボルバーくらいしかないのだが、最近ではレニーも練度を上げていて命中度は以前に比べればかなり上昇している。
それでもリボルバーはリボルバーなので、斃すまでに数発要るのが難点なのだが。
「あーもう!面倒!ね、カイザーさん!下に降りて殴ったほうがきっと早いよ!」
「……そうかもしれないな……。だが、忘れるなよ。俺達の役割は攻撃だけではなく、索敵という重要な仕事も有るんだからな。レーダーだけではなく肉眼で確認しなければいけないことも……って」
「……カイザーは余計なことを言わないほうが良いようですね。貴方の発言はフラグとあの神が捉えかねませんから……皆さん、新手です」
これまで一切レーダーに反応がなかった場所に複数の新たな反応が現れた。
「いったい何時の間に移動したんだ?」
「わかりません。ただ、他の眷属よりも魔力反応が大きい……これだけの反応、カイザーは兎も角、私が見逃すはずはありません……ああ!カイザー、レニー!あれを見て下さい!」
スミレがマークしたポイントにカメラを向けると、足元からゆっくりと姿を表す眷属の姿が見えた。
「これは……転送……されているのか? しかし、それならはじめからこの眷属達もそうすれば……」
「恐らくはあまり多用は出来ないのかも知れませんよ。その証拠に転送されてきた眷属達は他の機体よりも……!?」
「なっ……あれは……まさか? 召喚されたのは奴だけのはずでは……」
「カイザーさん……そうだよね、やっぱりあれって……」
戦場に部下を伴い転移してきたのは……シャインカイザーの敵幹部機体、ラタニスク、シャーシル、バラメシオンの3機であった。




