第四百五十八話 発表を控えて
新機歴12月20日19時38分 スレイブ解放作戦終了―及び避難所着
本日昏倒させたパイロットの数、計256名。なんだかとってもキリが良い数字だけれど、特に何かの意味があるわけではない。
現在私達は帝都から少し離れた例の平原に作られた避難所に来ている。
解放作戦は時間こそ掛かったが、特に脅威は存在しなかったためあっさりと終了した。面倒だったことと言えば、例の装置の扱いくらい。
壊してしまえば簡単だったのに、一通り治療が終わった後、患者達の保護・運搬をグランシャイナーにお願いした時うるさい連中から物言いが入ったんだ。
『例の装置の所にケルベロスを向かわせるんだよね?』
『当然装置は回収する流れなの!』
『いやいや、ちょっとまってくれ。あんな物回収してどうするんだ?』
『ルゥくん……疲れているのかな? 貴重なサンプルを回収しないでどうすると言うんだい』
『今後ルクルゥシアが同様の悪さをした時に役に立つの!カイザーは馬鹿なの?』
『ぐっ……!だ、だってあれ、回収しようと思えば中々手間がかかりそうで……』
『やってやれないことはないだろう? なあに、固定金具かなにかを外したら後は簡単さ』
『そうなの。ストレージに収納してしまえばいいの。お手軽なの』
と来たからたまらない。
結局当初の予定から変更し、私もケルベロスの手伝いをする羽目になった。というのも、装置を壊さず停止させるには、それを解析し、動力を遮断するなりシステムに潜り込むなりの作業が必要となる。
その手の機能を単体で出来るのは私やスミレ、キリンくらいのものだ。ヤマタノオロチも解析こそ出来るけど、高度なシステムハックは無理。なので私が出張る羽目になったわけだけど……これがまた。
もう、思い出すだけでうんざりするので詳細は省くけど、生意気にもキチンとOSらしきものを搭載した立派な装置で、魔力的な要素を持つ魔導具ではなく、科学的な要素を持つ物だった。
で、停止させるためには認証が必要と言うわけで、幹部も居ないのに誰がその認証をするんだよ!と突っ込みながらシステムに突入。ああ、もう思い出したくない!とにかく、システム停止作業はとってもうざくて面倒だった!
どれくらい面倒だったかと言うのは、私の様子をモニタリングしていたスミレが上機嫌であると言えば分かって貰えることだろうね。
というわけで、今の状況としてはキリンとフィアールカは上機嫌で装置を解析しているし、レニー達パイロットたちは遅くなった夕食に舌鼓を打っているとこ。
ちなみに運び込まれた患者達は、急ごしらえにしては中々に立派な救護施設でスヤスヤと寝息を立てている。とっくにパラライザーの効果は切れているんだけど、身体が回復しきらない内に目を覚まされると色々と面倒だとキリンが言い、安定剤を投与して翌朝までぐっすりと眠ってもらうことになったのだ。
酷い言い分に見えるけど、洗脳され昏倒させられ目を覚ませば知らない天井……ともなれば混乱するだろうし、中には怯えて逃げようとする人もいるだろう。回復しきっていない身体でそれは危ない。
それを考えれば、理にかなった選択だと言えるね。
安定剤を投与した後に体の回復を助けるアヤシゲな点滴を投与しているので、明日の朝には大分回復しているはずだ。
さて、私はご飯も食べずに何をしているかと言えば……、21時から皆を集めて行う発表の準備だ。
準備と言っても会場の設備を整えるーという様な作業じゃなくて、参加者達への告知。パイロット達だけなら声をかければ直ぐに集まってくれるけれど、それ以外の偉い人達はそうも行かないからね。
忙しい人達に突然『今日21時から重要発表します!』なんて言っちゃうわけだから、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
……別に話さなければ今後の作戦に支障が出るというわけじゃないんだけど、やっぱりケジメとして聞いておいてほしいからね……。
というわけで、私がせっせと連絡をしたのは以下の通り。
ルナーサ商人連邦 大店長であり、私達とやたらと縁が深いルストニア王家の末裔であるアズベルト・ルン・ルストニア、マリエーラ・ルン・ルストニア。
トリバ共和国からは、大統領であり、トリバ国の英雄でもあるレインズ・ビルハート、トレジャーハンターギルド 紅き尻尾 元頭領 ジンと今やその相棒となってしまったフォレムは機械工房店主のリック。
リーンバイルからは旧リーンバイル王国の末裔であり、現リーンバイルの代表であるゲンリュウ・リーンバイル、タマキ・リーンバイル両名……彼らもまた、神に人生を変えられた人々だね。
そして、旧ボルツ領を今後末永く収めていくことになるであろう、リムール代表のガシュー・リム、レニーとフィオラの両親であり、創作物からの召喚という私の理解が追いつかない存在であるグランシャイナークルーの末裔であるジーン・ヴァイオレット、アイリ・ヴァイオレット両名。
急ぎ連絡を入れたのは以上の人物たちだ。彼らには通信端末を用いて私の発表を聞いてもらうことになっている。
シュヴァルツヴァルトの人達、皇帝となったナルスレイン・シュヴァルツヴァルトと元黒騎士団団長であり、現白騎士団団長のジルコニスタ・ヴェンドラン、その保護者であり、鋼鉄の魔女の異名を持つリナバール・ラムトレインに関しては同行しているため口頭で伝えておいた。
まだ私の正体というか、ルーツを知らない人も居るし、何よりこれまで世界に起きた出来事に関するお話だ。捉え方に寄っては私達が歴史の黒幕とも言える内容になるので、皆の反応を考えれば怖いし、決戦前というこのタイミングで話すべきことではないかも知れないという葛藤は有る。
でも、決戦は皆の人生を預かり挑むこととなる。
だから――私は識ってもらおうと思う。この世界に今起きている自体の原因を……その原因となった存在、やらかした神の事を。




