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第四百五十五話 埋め込まれたもの

 検出された魔石――厳密に言うと魔獣が備える魔石とは少し由来が別の物質なのだが、便宜上魔石と呼ばせて頂く――は、どうやら外部から外科手術的に埋め込まれたものというわけではなく、体内に存在する魔力と結合し結晶化する物質を体内に取り込ませ、大きく成長させたものであることがわかった。


 言葉を選ばず乱暴に言ってしまえば結石のようなものなのだが、これもまた中々に厄介な存在だ。


 さて、この世界における『魔力』というものをおさらいしてみよう。


 この世界には様々な物質内に魔素というものが存在しており、それを抽出・変換し、魔力とすることで魔力炉を可動させるエネルギーとなるわけだが、それは勿論待機中にも存在している。


 地球に生きる生物とこちらの生物達―魔獣も含め―の大きな違いは体内で魔素を変換し魔力に変えることが出来るか否かにある。


 動物や魔獣達は体内に備える魔石を魔素の吸収器官としていて、そこから魔力を得て生体エネルギーの一つとして使用している。


 人間の場合は魔石は備えないが、代わりに心臓の近くに魔素を吸収し、魔力として蓄えている器官が存在しているようだ。


 そこに溜め込まれた魔力は魔術や魔導具の使用により消費されていくが、使わなくとも自然と抜けるようになっている。


 ……が、その容量には個人差がある。


 古くはその器官が発達した者達が宮廷魔術師として活躍していたのだと、何処かで読み取った資料に記されていたが、魔術が途絶えつつ有る現在においてはそれが役に立つのは魔力を使用し機体を動かすシュヴァルツヴァルトくらいのもので、それ以外の国では『身体が弱い者』扱いされてしまっているのが現状だ。


 なぜかといえば、面倒なことに魔力の貯蓄量と許容量が等しいわけではないからだ。


 雑に言ってしまえば、どれだけ胃袋が大きな大食らいでも、酒に強いというわけではなく、胃袋の容量いっぱいまで酒を飲んでしまえばとんでもないことになるわけで、魔力もまた無駄に溜め込んでしまうのは体調に影響がでてしまうのだ。


 それを解消するのが吸魔草、マギアディスチャージの元となった薬草なのだ。


 かといって、その魔力も使いすぎてしまうとそれはそれで体調に影響を及ぼす。どうやらこの世界に生きるもの全て、カロリーとはまた別のエネルギーとして身体を動かすのに魔力が必要らしいのだ。


 なので魔力を使いすぎるとフラフラになり、枯渇させてしまえば気を失ってしまう。


 魔力枯渇は直接命に関わるような事ではないが、戦闘中に枯渇させてしまえばと考えるとゾッとする。


 さて、スレイブ被害者達の体内はどういう状態かと言えば、魔力を貯め込む器官に魔石が結晶化している状態である。


 その魔石は本来の許容量を越えて魔力を蓄えることを可能とさせ、機兵の長期稼動を実現させるのにも一役買っているのだろう。


 そして本来体内を循環し、エネルギーとして使われるはずの魔力は全て魔石に吸収され、結果として意識は朦朧としてしまう。人間としては致命的な状態だが、スレイブとして操るにはこれ以上無いほど適した状態。


 どういう仕組なのかは分からないが、ルクルゥシアはその魔石に干渉し、操る能力を持っている。それは天然の魔石を持つ魔獣にも有効であり、使役可能であることは以前の戦いからも明らかだ。

 

 知能が高い人間であればそれに抗い使役化を避けることも出来そうなのだが、魔力が枯渇している状態ではそれも叶わない。


 さて、この魔石だが、一定期間ルクルゥシアの干渉から離れることにより自然と崩壊するのではないかと推測される。


 その根拠となるのは以前救出した帝国兵達だ。


 彼らはルクルゥシアの干渉波が出ていたと思われるコクピットから離すことにより、眷属化が解除された。暫くの間は体調が戻ることはなかったが、ある一定期間が過ぎた途端体調が向上したと聞いている。


 しかし、念には念を入れておきたい。


 干渉波を発生させている装置を破壊したとしよう。その影響下にあったスレイブ達は解放され、自我を取り戻すことだろう。


 しかし、それをルクルゥシアが知ればどういう行動に出るだろうか? 子供向けに若干甘い行動を取っているルクルゥシアだが、逆に言えば子供向けロボットアニメはしばしば『上げて落とす』


 やったぞ!俺達の勝利だ! と、油断をして喜んでいると『馬鹿め何の用意もしていないと思ったか』とばかりにやらかしてくれる。


『な、なんだって……!俺達が苦労はなんだったんだ? さっき倒したやつが5体も!?』


『貴様らにとっては強敵だったのかも知れぬが、たかが量産機、いくらでもくれてやろう』


 ……と、苦労して倒した強敵が実は雑魚でした!と、ワラワラと現れ、敗北する―という展開は良くあることだ。


 おそらくルクルゥシアは第2第3の策を用意していることだろう。


 必ずしも装置を使って眷属化を維持するというわけでもあるまい。いざとなればルクルゥシア自体がその干渉波を放つことだってありうる。


 となれば……だ。


「スミレ、応用できそうか?」


「私を誰だと思っているのですか。簡単ですよ、少し変質させればよいだけなのですから」


「流石俺のパートナーだな。よし、では精製をたのむ」


 


 

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