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第四百五十四話 レシーバー

 グランシャイナーに寄るマギアディスチャージの斉射により、多くの敵機は無力化されたが、それでもまだそれを免れた機体が一定数存在し、ケルベロスを大いに喜ばせることとなった。


 パイロットであり、ある意味では主であるマシューのことは好ましく思っているし、マシューに操縦されるのが大好きなAI達ではあるのだが、やはり自分で動くというのは格別のようで、先程から嬉しそうに狩をする声が聞こえてくる。


 僅かでは有るが、バーサーカーやワイトが配備されていたのが良かったのだろうな。


 スレイブはあくまでも保護対象であり、それが乗っているシュヴァルツはあくまでも無力が目的で思いっきり破壊していい物ではない。


 幻獣がモチーフとはいえ、AIの正確にどこか犬の要素があるオルとロスは動き回るのがとても好きだ。手加減をしなくても良いバーサーカー達の存在は非常に喜ばしく、良い息抜きになると張り切っている。


「わかってると思うが、スレイブ機の無力化もきちんとこなしてくれよ」


『勿論だよー!』

『遊びも仕事も出来るハイスペック~!』


 良くわからない謎の自信で答えてくれたが、実際あの子達はよく働いてくれているからな。信用に足る存在だ。


 レニー達もどうやら順調に無力化を進めているようで、今の所危なげなく動けている。となれば我々もきちんと仕事を頑張らなきゃな。


 さて、実の所だが、既にスレイブ化を維持するために稼動しているであろう端末の位置は抑えている。


 そもそもだ、こちらには高性能レーダーが多数備わっており、到着直後に白兵戦に向けて精密探査をかけていたため、その時点であっさりと発見できていたのだ。


 正直な話、もう少し偽装工作というか、なんというか……。あちら側の世界で使っていた謎技術なり、こちら側の世界で使われている魔導具なりで何らかの隠蔽処理がされているとばかり思っていたのだが、ひどい言い方をしてしまえば丸裸のままゴロリと地底に設置されていたのであった。


「ルクルゥシアにもう少しあちら側(・・・・)の影響があったのならば、レーダーの存在も把握している事でしょうし、もう少し難敵になったと思いますが、どうやらそうではないようですからね」


こちら側(・・・・)の影響が濃く出てしまっているというわけか。"子供向けの甘い戦略"というあちらからすれば悪い影響は受けているだけに、なんだか気の毒に思えるな」


「我々からすれば好都合です。それにあれは同情していい存在ではありませんよ」


「違いない」


 というわけで、その気になれば直ぐにでも装置の破壊に迎える状況では有るのだが、俺は今もこうして陣地の防衛をしつつ、戦況の観察を続けている。


 何故そんな暢気な真似をしているかと言えば、あまりにも無防備な"眷属化維持装置"は位置だけではなく、その詳細までこの場から解析することが出来てしまった。


 そう、出来てしまったのだ。


 無論、その事自体は喜ばしいことだ。ただしそれと同時に面倒な事実も明らかとなり、現在それの対策を練るべく、さらなる解析を続けているところなのだ。


 よくよく考えれば当たり前の話で、それを危惧していなかったわけではなかったのだが、明らかにそれが事実であると分かってしまうと、問題が有ると分かってしまえば先に対処方法に取り掛からねばならぬのだ。


 その手の作業が得意なキリンとフィアールカ達はマギアディスチャージの斉射を済ませるとさっさと他の場所に向かってしまっている。

 

 装置を壊してしまえばその解析もできなくなってしまうため、壊すに壊せない面倒な状況になっているわけなのだが……。


 まず、スレイブ状態を維持するためには特殊な波長を持つ魔力を浴びせる必要が有るらしい。その魔力を発生させる装置は魔改造されたシュヴァルツのコクピットと、これから破壊しようとしている地底のデカブツから発せられるというわけなのだが……、問題はレシーバーの方なのだ。


 装置から発せられた魔力を受けるのは勿論、スレイブ化した人々だ。


 さて、そのけしからん魔力を通常の人間に照射した場合どうなるか? きちんと実験したわけではないのであくまでも推測の話だが、恐らくは無害なのだろう。


 当たり前のように白兵戦をしているレニー達こそがその証拠である。


 そもそもだ。通常の人間に影響が有るのだとすれば、しっかりと外気から遮断されているコクピットに乗り込んでいるマシューはともかくとして、気密性が甘く、魔力くらいなら通してしまう機体に乗っている白騎士達がスレイブ化していないのはおかしい話。


 スレイブ化を維持する装置がありそうだ、それを考えた時点でまず初めにパイロット達の身を案じたのだが、こちらに連絡をした時点でかなりの時間、魔力を浴びていた。


 その事から通常の人間、つまりはスレイブ化の処置を受けていない人間には無害なのではないか? そう、推測したのだ。


 無論、万が一パイロット達がスレイブ化してしまっても直ぐに無力化し、回収できるよう用意はしてあったのだが、それでも何事もなかったのは嬉しい話だ。


「カイザー、解析は終わりましたが、裏付けのためスレイブのスキャンもするべきです」


「ああ、俺もその必要があるなと思っていたところだ」


 ……手近なと言ったらあれだが、待機ポイントから近い場所に寝かされていた被害者を精密スキャンしたところ、恐ろしい事実が明らかとなった。


 以前保護をしたスレイブ被害者達をきちんと精密スキャンしていればな、と思う。


 あの時は『コクピットから離せば開放される』その事からコクピットの調査に目が向いてしまった。これは大きな失態だ。


 スレイブ化されている人間とそうではない人間の違いとはなにか?それは先程から言っている通り、レシーバーの有無である。腕輪や首輪的な物が定番だろうとスキャンをしてみたところ、その反応は予想したくはなかった部分から戻ってきたのである。


「少しはそのパターンも予想していたが、まさか体内とはな……」


 レシーバーとなる魔石の反応が被害者たちの体内から検出されたのだ。



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