表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
462/498

第四百五十一話 無力化のために

「こちらカイザー。30分後に作戦を開始するぞ」


 今から向かうことを告げるため、マシューに連絡をすると、呆れた声が返ってきた。


『作戦を開始するのはわかってるけどさ、何をするのか教えてくれないとあたい達も動きようが無いぞ』


 ごもっとも。今説明しようとしてたんだ、本当だぞ。


 ……スミレがなんとも言えない顔をしている……本当だってば。


「時間が無いので手短に説明するが……概要としては……」


 ざっくり雑に言えばグランシャイナーでの強襲だ。艦砲射撃にて広範囲にマギアディスチャージを放ち、稼働中及び降着姿勢で停止中の機体達をそっくり使い物にならなくする、と言う物で、もうグランシャイナーだけで良いんじゃないかな?という酷く雑な作戦である。


 ただし、この作戦に効果があるのは機体と、それに乗っているパイロットだけである。マギアディスチャージにより魔力供給が滞った魔力炉はさらに魔力を得るためパイロットからさらなる魔力を吸い取ろうとする。

 パイロットが正気であれば、魔力炉が暴走したのに気づき、脱出をするのだろうが、スレイブ状態のパイロットにはその判断能力は無い。


 魔力欠乏症を起こし、意識を失うまで魔力を吸われ続けることになり、結果として無力化する。これで冒険者達が乗っている給油タイプ――給魔と言うべきか?の魔力炉であればエーテリンタンクが空になるだけで済むのだがな。


 さて、この作戦においてグランシャイナー以外の人員、俺達とマシュー達、そして白騎士の役割は残っているのだろうかと言う話しなのだが、実は此方の方が重要だ。


 マシュー達が居るのは宿舎と言う事で、多くのスレイブ達が生身で待機している。そしてマギアディスチャージの効果があるのは機体と、それに乗り込んでいるパイロットのみ。


 つまりは宿舎内で待機しているスレイブ達にはそれは効果が無く、無力化するため行動に移す必要がある……のだが、流石にロボの巨体でなんとかするのはちょっと辛い。


 そこでキリンとフィアールカと言う残念な天才メカニック達が組み上げたオーバーテクノロジーな白兵戦専用兵器の出番だ。


「グランシャイナーで強襲すれば幾ら朦朧としているスレイブとは言え、防衛体制に入るだろう。そこでマシュー達に働いて貰う。ケルベロスではなくてマシュー自身にだ」


『あたい自身……?』


 俺がグランシャイナーに先立って現地に到着し、マシューや白騎士達に『パラライザー』を装備して貰う。無論、この作戦にはレニーにも参加して貰う事となる。


 パラライザーはハンドガンタイプで、一つのカートリッジで60発の麻痺弾を撃つことが可能だ。麻痺弾は実弾では無く、出力を絞られたフォトンをベースにしていて、ちゃんと記録して(聞いて)いないので仕組みはあやふやだが、兎に角人体に当たれば昏倒させてしまう恐ろしい武器だということだけは聞いている。


 事前にグランシャイナーからパラライザーと共に受け取ることになっているカートリッジは一人あたり2本、一人に付き120発の割当だ。これが多いのか少ないのかは腕次第だが……、いざとなれば俺も居る。なんとかなるだろう。


 そしてレニーやマシュー、白騎士達が白兵戦をしている間、俺とケルベロスはそれぞれ自律稼動でスレイブ化を維持していると思われる機材の対処をする。


 ポーラと接続可能な俺がスミレと協力し、周囲を隈なくサーチする。発見し次第、ケルベロスに向かってもらい、機材の回収又は破壊をしてもらう……というわけだ。


 キリンから『出来れば回収してほしいんだよね』としつこく言われているため、なるべく回収するようには務めるが、それによって危険が及ぶようであればその限りではないがね。


『こちらフィアールカ。間もなく上空に到着するの。トランスポートエリア内に入り次第パラライザーの転送をするの……ん、転送完了なの。ストレージチェックよろしくなの』


「間もなくというのを数秒前という意味合いで使われると困るのだが……うん、ストレージ確認完了だ」


 光子力エンジンで可動するグランシャイナーには謎技術により音もなく浮遊し、低速であれば移動時にも稼働音を発生させないため、きちんとレーダーで見ていなければ接近に気付くことが出来ない。


 ロボである俺にとってレーダー反応というのは息を吸う様な感覚で自然と感知出来るようになっているのだが、考え事をしている時に声をかけられても中々気づけ無い現象と同様に見逃してしまうことが稀にあるのだ。


「それはカイザーがたるんでいる証拠です。さあ、支度が出来たのなら向かいましょう。レニー、移動しますよ。早く飲み込んでしまいなさい」


「んぐ!?ぐ~!……はぁはぁ……危なかった……」


 パンを食べていたらしいレニーが急に声をかけられ、喉に詰めてしまったようだ。思えば今日は朝から動き詰めだ。落ち着いて食事を摂る時間と言ったら倉庫での配給だけだったからな。


「レニー、この作戦が終わったらうまいもんでも食おう!もうひと頑張り頼むぞ!」


「はい!カイザーさん!ふふ、いっぱいお腹空かせておきますね!」


 スミレが『妙なフラグを立てないでください』と変なことを言っているが気にしてはいけない。もう直ぐ日が暮れてしまう。今日の締めとしてきっちり仕事を済ませてしまおう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ