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第四百四十六話 触手を絶つには

「キリン!シールドを展開してくれ!範囲は倉庫全域だ!」


「ああ、任せてくれたまえ!」


 何をするにしてもこのままでは倉庫が破壊されてしまう。かといって避難民を倉庫から出せるかと言えば、無理な話だ。


 連鎖的に触手共が暴れ始めているし、運良く港湾エリアを抜けられたとしてもその先には眷属や眷属化した機体がウロウロしていることだろう。


 白騎士達が上手くやっていてくれているかも知れないが、一番の安全策はこのまま倉庫でじっと耐えることだ。破壊されないのならば、倉庫は触手から身を守る何より安全なシェルターとなる。


 キリンのイージスならばそれが可能だ。キリンがこの場から動けなくなると言うデメリットはあるが、触手を掃討する程度ならキリンの護りが無くともなんとかなるだろう。


「残りのメンバーは俺に続け!触手を無力化する!」


「「「はい!」」」


 触手は港湾エリアから顔を出し、海に向かって潜り込んでいる状態だ。海底にあるのが頭であり、それはフィアールカ達によって潰されつつある。


 それによる反応で現在大暴れしているのは地上に露出している胴体部分。そして尻尾に当たる部分は帝都地下を通り、城の地下に続いている。


 おそらくは城の地下でも面白いほど大暴れをしているはずであり、避難民のことが無ければコノママ掘っておけばかなり面白いことになるはずなのだが、そうも言っては居られない。そもそも、あの城は不法占拠されているだけであり、その犯人共を討伐した後はきちんとナルスレイン達に返還される大切な施設である。


 なんにせよあの触手はさっさと大人しくさせないといけないな。


 見た目から『触手』と呼んでは居るが、厳密に言えば内側が空洞になっている配水管型のロボットだ。スキャン結果を見てみればその構造がよくわかるのだが、内側にはコンベア状の可動部が有り、それによって海底で採掘された鉱石類が運び込まれているわけだ。


 さて、こいつがロボットだというのならその動力炉はどこにあるのだろう?答えは単純な話しだ。城の地下にやたらと大きな反応がある。それに気付いたときはルクルゥシアの反応かと思ったのだが、よくよく調べてみればどうも違う。


 ではなんなのだろうかと思って居たのだが、どうやらそれはこの触手の本体のようだ。


 触手は蛇型ロボ……というわけではなく、イソギンチャクのような物、巨大な本体から無数に触手を伸ばす採掘特化型のロボ。


 問題はこの触手達を完全に沈黙させるには地底の本体を破壊する必要があるのだが……、そこまで向かうルートの確保は勿論のこと、今この状態で向かえる場所ではない。


 そもそも、城ではルクルゥシアが待ち受けている。急いで触手を倒そう!と、今この状態で向かって良い場所ではない。


 ではどうすれば良いのか? 実は妙案があるのだ。


「マシューとミシェルは倉庫に近づく触手を牽制してくれ!シグレは上空からの映像を送りつつ、俺の援護を頼む」


 メンバー達に邪魔な触手の相手をして貰い、俺達は俺達の仕事の支度をする。


「スミレ、簡単な組み立てならお前でも出来るんだったよな?」


「ええ、キリンの様に加工や大規模な装置の作成は出来ませんが、簡単な組み立てや合成であればストレージ内で作業可能です」


「うむ、それを聞いて安心した。こんな感じの物を作れるか?」


 採掘特化ロボを無力化するためのちょっとした兵器の図面をスミレに見せる……と言っても、データを共有、人間の感覚で言えば頭の中で図面を思い浮かべたような具合だろうか。


 スミレと俺のシステムはある程度接続されているため、このような時は非常に便利だ。……油断すると心を読まれるのと等しいとんでもない辱めをうける羽目になるが。


 スミレは暫く難しい顔をしていたが、どうやらなんとかお眼鏡にかなったようだ。


「なるほど……幸いサンプルとして確保しておいた素材は残っていますし、この程度であればカイザーの設備でも十分可能です」


「では直ぐ取りかかってくれ」


「はい。予定完了時刻は10分後となります。その間はなるべくリソースを節約して下さいね」


「……善処する」


 カイザーという機体が本来行う作業ではない生産作業だ、通常動作と比べ多くのリソースを消費する。そのリソースを回せば回すほど作業効率は上がり、結果として兵器の完成は早くなる。


 逆に言えば作業中に戦闘行為等で動き回るとその分作業効率が下がり、予定完了時刻より余分に時間が掛かる羽目になる。


 触手達に知能があるとは思えないのだが、そういった物も時には空気を読むことがある。いや……この場合空気を読めていないと言うべきか。


 触手共が3つ、此方に向かって伸びてくる。跳躍して躱し、反撃でもすれば容易く対処出来る相手なのだが……、今この状態でそんな真似をすれば予定完了時刻は倍以上膨れ上がってしまう。

 

 かといって、機体を犠牲にするというのは愚策……さて参ったなと思って居ると、触手達がはじけ飛ぶ。


『すまねえカイザー!レニー!ちょっと漏らしてしまったわ!』

『私も気付くのが遅れました!カイザー殿、申し訳ない!』

『カイザーさん、なるべく援護しますのでもう少し耐えて下さいな』


「ありがとう、助かった!余分に負担をかけることになるが……あと少しだけ手伝ってくれ!」


 完成予定時刻まであと7分。短いようで長い時間だな……。

 


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