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第四百四十一話 進軍

 剣戟と土埃、爆発音と舞い上がる砂煙。硝煙の匂いこそしないが、敵味方入り乱れる戦場は白く霞み美しき草原は戦火に焼かれている。


 先の戦争、ルナーサ防衛戦もまた、美しく広大な平原に大きな爪痕を残している。落ち着いたら彼の地の修復を手伝おうと思っていたが、それにプラスしてヘビラド半島にも来なければいけないな。


 戦闘開始から1時間弱が経過した。


 敵機の数は大分減ったが、こちらにも少なくはない被害が出ている。ダメージを負った機体は速やかにグランシャイナーに退避後、予備パーツやグランシャイナーの謎機能による急速修理により即座に修復されてはいるが、機体と違ってパイロットの怪我は直ぐに治るものではない。

 

 なので修復が完了した機体には予備パイロットが乗り込み、代わりに戦地に戻るという作戦が取られている。


 もっとも、これが出来るのは人員に余裕があった連合軍だけであり、元々数が多くはない白騎士団は代えが効かない。それを練度と気合で補っているのが白騎士団なのだが……いくら彼らが逞しいとは言え、限界もある。2機、3機と徐々にではあるが撤退する機体の姿もあった。


 彼らは最後まで戦地で剣を振るおうとしたのだが、アランの一喝――


『こんなつまらねえ戦場で散ろうとしてんじゃねえ!俺達の仕事はここで終わりじゃねえんだ!この戦いの向こう側に待っている新たな国を護るのが白騎士団の役割だ!つまんねえ死に方する前に引け!』


 それにより、犠牲は最小限に保たれていた。


「カイザー、中央部の敵残存勢力5%を切りました。こちらに敵増援が向かっていますが、今なら突破可能です」


「よし。ブレイブシャインはフォーメーションBを取れ。進路上の敵機のみ撃破……白騎士団の傘になるぞ!」


「「「「了解!」」」」


 フォーメーションB、それらしく名前をつけてはいるが、大した陣形ではない。元としたのは所謂『魚鱗』と呼ばれる陣形で、『ヘ』の字の様な陣形なのだが、機体の特色を活かすため少しアレンジを加えている。

 

 ……いや、当初からどんどん形を変え原型はほとんど残ってないか。


 左から【ヤマタノオロチ】【カイザー】【ケルベロス】と並び、俺が先行して進軍する。上空には【フェニックス】が飛び、情報収集と援護射撃を担う。

 

 そして中央部内側に配置するのが白騎士団なのだが、同じくそこには【キリン】が配置されている。キリンの特性は『防御』少しでも白騎士団の損害を減らすため、シールド展開役として中央後列に配置している。


 優秀な修復機能を備える我々と違い、白騎士団は少しの被弾が命取りだ。彼らの役割はこの先、王都での眷属化機体(スレイブ)開放任務だ。それ故のフォーメーションBなのであった。


「敵に近寄る隙を作らせるな!ゆくぞ!」


 左右からそれぞれヤマタノオロチとケルベロスのフォトン弾が飛び出し、敵機を牽制する……いや、牽制どころか吹き飛ばしているな……。


『邪魔だ邪魔だー!道を塞ぐ連中はあたいとミシェルが食い散らかしてやるからなー!』


『ちょっとマシュー!?私はそんな野蛮な真似はしませんわよ!?』


 緊張感のない言い合いをしながら、淡々とフォトン粒子砲を動かし確実に敵機を仕留めていく……。砲塔付きサブアーム持ちはずるいな……!


「あたしも!負けてらんない!」


 見ろ、触発されたレニーが爪を構え突撃をしてしまった。


「レニー、抑えろ。今俺達がやることは殲滅ではない、移動だ……が、陣形を崩さぬ程度になら動いて構わんぞ」


「はい!勿論です!」


 ……スミレがすごい顔で睨んでいるが、言い訳をさせてくれ。今後の戦いを考えると少しでも実戦経験を積んでおいたほうが良いはずなんだ。単機での実践訓練は最終作戦で使用する必殺技を考えれば大いに役立つはずなんだ。


 決して俺もフラストレーションが溜まってきてるとかそんな……くっ!スミレの視線が痛い。


 と、呑気にしているように見えるのだが、薄いところを通っているとは言え、敵の攻撃は穏やかではない。フェニックスから送信されてくる鳥瞰映像にレーダー反応を重ねて見れば付近に展開している敵の位置は丸わかりなのだが、あらん率いる白騎士団や連合軍の攻撃を免れた敵機達がじわりじわりと左右からこちらを追って迫ってきている。


「フェニックス、左舷後方に砲撃!」


『心得た!ゆくぞガア助!』


 フェニックスにもフォトンランチャーの砲塔が備わっている……というか、後継機体でフォトンランチャーを標準搭載していないのは俺とキリンだけだ。


 キリンの場合は攻撃タイプではないので仕方がないが……俺にないのはちょっとさみしい。合体する際に中心となる機体、各機体を鎧として着込む主人公機と言う事を考慮すれば、単機での装備がシンプルなのは玩具の事を考えれば納得できるのだが、いざこうしてリアルな世界にその設定を持ち込むとやっぱり釈然としない物はあるな。


 空からの砲撃で後方を抑え、左右の砲撃で突破口を開く。時折飛んでくるやけくそ気味な敵機砲撃はキリンのバリアで防御をし……そしてとうとう。


「見えたぞ!王都だ!ナルスレイン!俺達は今暫くここを抑えてから後を追う!君はM作戦を進行してくれ!」



『ああ!わかった!また後で会おう!』

 


 新機歴121年12月20日14時19分―


 王都付近到着。M作戦――、マギアディスチャージによる【スレイブ】の無力化及び生存者の救出・保護のためナルスレイン達は先行して王都に入った。


 俺達もその作戦を手伝うことになっているのだが……、それはしぶとくついてきている眷属共を片付けてからだな。

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