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第四百三十二話 VR訓練再び

新必殺技を覚えよう……というわけで、我々はキリンとフィアールカが共同で用意したVR訓練プログラムを実行し、現在VR空間内で待機している。


 最大まで時間が引き伸ばされたこの空間内でならば、"外での"時間を考慮せず、思う存分訓練することができるよ、とキリンは嬉しそうに言っていた。


 ……俺達は別に構わないのだが、レニーやミシェル等、生身の人間達にはそれなりに負担が掛かりそうな気がする……が、フィアールカ等がキチンとモニタリングして体調管理に努めているらしいので、それを信じるならば問題は無いのだろう。 ……多分。


 というわけで、VR空間内にいるのはこれから技を授けられるレニーと俺、スミレとまだ見ぬ技を披露してくれる手はずになっているミシェルとヤマタノオロチ、そして訓練はいくらしても構わないとばかりに付き合ってくれているマシューとシグレ達。


 無論、講師役としてキリンとそのパイロットであるフィオラとラムレットも参加しているわけで、つまりは結局の所いつもどおりの全員参加なのだ。


「さて、訓練と言われて来てみたが……キリン、一体どのような訓練をするんだい?」


「うむ、良い質問だね。結局の所、一番良いのは実戦形式だと私は思うんだ。つまり以前同様に私とフィアールカがシミュレートした強敵達のデータと戦ってもらう」


 以前の訓練ではかつて戦った敵幹部達を再現したデータと戦い、パワーアップした機体の挙動や装備に慣れる事が出来た。


 今回も同様に……ということなんだが、どうもキリンの喋り方に含みを感じる。そもそも、普段であればマシューが嬉しそうに訓練内容を語ってくれるはずなのだが、今日まで一切細やかな話をすることがなかった。


 ……今回の訓練……きっと何かがあるぞ。


 スミレも俺と同じことを思っているようで、注意深くキリンの動向を探っている。


「その気になればハッキングを仕掛けて探ることも不可能ではないのですが……まあ、味方がすることですし、サプライズを仕掛けるというのであればこちらも楽しみに受け止めてあげましょうかね」


 ……とか思っていたら密かに恐ろしいことを考えていたようだ。これでキリンが完全な身内でなければ、どこかの国の協力者―と言った存在であれば、スミレはサラリとハッキングを仕掛けてたんだろうなあ。

 


「……? なんだか寒気がするね。いや、寒気というのがどういうものなのかキチンと知っているわけではないけれど、パイロット達が言う寒気に該当するような現象が起きたような……?」


 キリンに何か妙な現象が発生している……!


「まあ、いいか。後でデータをチェックしてみるさ。というわけで!カイザー君!レニー君!スミレ君!」


 サラリと切り替えたキリンが我々に声を掛ける。


「これより訓練を開始する。まずは手慣らしに雑魚戦からだ。因みにミシェル君の新技披露は君たちの訓練と合わせて行おうと思っているが、それはまあ、後のお楽しみだ」


 では始めるよ、とキリンが言うやいなや、これまで居た待機部屋……何も置かれていない白い部屋から市街地へと転移した。


 ……市街地と言っても、キチンとこちらの世界に合わせた建物になっているようだが。


「あ!カイザーさん!あたしここ知ってます!帝都ですよ帝都!ほら、あのお城見て下さい!あれがナルスレインさんやルッコさんが居るお城ですよ」


 レニーが指差す方向を見れば、なるほど確かに立派な城、ヨーロッパにありそうな城らしい城が建っている。そう言えばレニーは一人帝国に飛ばされた後、ジルコニスタと共に帝都を訪れていたんだったな……。


 レニーが『皇帝が居る場所である』と言わなかったのは少々面白いが、レニーにしてみれば身内以外どうでもいいのであろうな。そしてジルコニスタは勿論のこと、ナルスレインもすっかり身内と認識している。


 ルクルゥシアと言う共通の敵が現れたおかげ……おかげと言って良いのかわからないが、その影響で出会った縁がある。


 鎖国していたリーンバイルとの国交再会、滅んでしまっていた旧ボルツ領の生き残り達の再興、そして長き間の睨み合いにピリオドを打ち、共に手を取り歩み始めたシュヴァルツヴァルト帝国。


 この戦いが終わったら……というのはなんだか死亡フラグのようで嫌だが、戦いが終わればこれまでに無いほどの平和と平穏がこの大陸に訪れることだろうな。


 と、感慨深くなりかけていると……スミレからカツが飛ぶ。


「カイザー……貴方は何かスキを見せるとシミジミとする悪い癖があります。前方2時の方向より敵影、レニー、頼みましたよ」


「了解!んー……飛行タイプの……あ!アニメで見た空飛ぶ雑魚敵……ええと、ブンブーンだ!」


 おっと、ホント悪い癖だな。スミレに怒られるのも無理はない……と、ブンブーンか。随分と懐かしい敵ロボだ。その名の通り、背中に昆虫型の羽根を備えた飛行タイプのロボットで、雑魚兵士が乗り込み、主人公チームを牽制するために現れる俗にいうところのやられメカその1である。


「ウォーミングアップにはぴったりだな。レニー、まずはこちらも飛行し空中戦の訓練だ」


「了解!ふふ、あたしブンブーンと戦ってみたかったんです!……こう、まるまっちくて可愛くて……」


「そうか……ま、油断せぬよう頑張ってくれ」


 妙にテンションを上げニヤけるレニー。そう言えばこの娘は機兵好きだったな……。

 

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