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第三百九十三話 その頃キリン達は

◇◆キリン◆◇


 カイザー達を見送った私達だけれども、マシュー君やシグレ君、クルーの人達の体調を考慮して今日の所は作業はせず、それ以外のことをする事にしたんだ。


 まあ、"基地"で活躍をしている優秀な技術者達と顔合わせも済ませておきたかったしね。


 カイザーから聞いていたリックとジン。二人の技術者ともう一人……、ザックという少年が私の元にやって来た。いぶし銀の二人の事は聞いていたが、この少年の話しは聞いていない。リック達と共に来たと言う事は、彼もまた何らかの技術に長けたエンジニアなのだろうが……、一体何物なのだろうか。


「やあ、初めましてだね。リックとジン、それとザックと言ったね。私はキリン。カイザーのサポートをする……君達の言葉で言えば機兵で、フィオラとラムレットにパイロットをやってもらっているんだ。よろしく頼むよ」


 当たり障りのない自己紹介をしたつもりだったのだが、このザックという少年は面白いね。目をキラキラとさせ、私を見上げている。聞けばロボットに並ならぬ興味を持っているようで、フィギュアまで作っているらしいじゃないか。


 そう言えば前にスミレが言っていたねえ。機兵の模型を作っている少年が居ると。その模型を元に作った義体が今のスミレやルゥであると……。成る程、この少年が例の少年なんだね……。


 フィアールカがあっちに言ってしまっているので少々面倒だけれども、やってやれないことはないかも知れないね。作業の合間に1つ頑張ってみるのも悪くない……かもしれないね。


 エンジニア達と熱い話をしていると、マシュー君が大きな肉を片手にこちらにやってきた。共にやってきたシグレ君によれば、マシュー君はなにか言いたいことが有るらしい。はて、何の話だろうか。


「いやさ、どうってこと無い話だし、いまさらおせーって話なんだけどさ。グランシャイナーの置き場がないからカイザー達は離れて待機してるんだろう?」


「……本当に今更のお話だね……。そうさ、その置き場をこれから作るんだ。じっくり英気を養っておきたまえ」


「それなんだけどさ……。カイザーやケルベロス達のバックパックってばかみたいに物が入るだろ? カイザーなんて機兵を沢山積み込んで帝国兵の度肝を抜いたくらいだ」


 ……何を言いたいのか予想が付いたが、最後まで聞いてやろうじゃないか。


「でさ……非常に言いにくいんだが、その……もしかして、グランシャイナーもバックパックに……はいっちまうんじゃないか?」


「そうだね、理論上は可能さ。あのバックパックは異空間に物を転移させるようなものだからね。どれだけ大きなものだろうとしまうことは可能だよ」


「じゃ、じゃあ、わざわざ置き場を作らなくてもバックパックにしまえばおしまいなんじゃないか?」


「言いたいことはわかるよ。でも、それは不可能なんだ。まず、ストレージには生き物は入れられないよう、安全策が取られている。例えばグランシャイナーに誰かが乗っている状態で収納しようとすると入らないんだ」


「……じゃあ、皆降ろしてからしまえばいいんじゃないか? 機兵を運んだときと同じ様にさ」


「やってやれないことはないだろうが、仕舞う前に動力炉を止める必要があるわけだ。輝力炉が動いている状態ではやはり安全機能が働いてしまうことが出来ないからね。遠隔操作で炉を止め、落ちる前に急いで収納すれば入るだろう」


「ほらな!やっぱできるんじゃないか!」


 このマシューという少女は面白いね。めちゃくちゃで間違いだらけの事を真面目な顔で提案してくれる。バカにしているわけではないよ?彼女のように大胆な視点で物事を考える存在こそが我々のようなカチカチの思考に刺激を与え新たな一歩を歩ませてくれるんだからね。


「じゃあ、マシュー君。問題だ。取り出す時はどうしたら良いだろう?」


「そんなもん、バックパックから出してぽいっと置けばいいじゃないか」


「そうだね。しかし輝力炉は止まっている。炉は動き出すまで少々時間がかかる。ほいっと取り出してから地面に落ちるまで数秒だ。さあ、どうなるかな?」


「……くそー! いい案だと思ったんだけどなあ!やっぱ無理かあ」


「ふふふ、でも悪くはない提案だったよ」


 そう、悪くはない。輝力炉を起動したまま異空間に収納できれば……、私のコクピットに実装されている生体テレポートの仕組みが紐解ければ、マシュー君の提案は実現するかも知れない。


 高度10mにてホバリングし、クルー達は資材や荷物とともに地上にテレポートで降りる。カイザーは速やかにそれを収納し、グランシャイナーは異空間に。


 時間の流れが止まる異空間に機動中の輝力炉を入れた場合、どうなるのかはわからないけれど、何らかの事情でセーフティがかかっているのだと言うならば、それを解決すればそれが叶うというわけだ。


 カイザーが言っていた通り、私達が居た世界が創作物の世界であることは私も納得して居るのだが、同時に腹立たしいのは『何故そうなるのか』が実証されていない、カイザーが『謎パワー』とか『謎の技術』とフザけた呼び方をしているブラックボックス達の存在だ。


 輝力路の完全な理論や、バリアーの理論。テレポートもそうだし、合体機構も正確な技術はわからない。私やフィアールカのデータベースにすら数々のオーバーテクノロジーの秘密は存在しないのである。


 その辺りの謎が解明されていけば……マシュー君が言うような、より無茶苦茶な運用も可能になるのだろうね。


 ふふ、腹は立つけれど、研究者として技術者としてこれほど嬉しいことはないね。まだ調べるスキが残されているのだから。


 さて、取り敢えずは目先の仕事だ。カイザー達が錆びてしまう前に整地作業にはいろうじゃないか。

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