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第三百六十三話 神機の目覚め

 中々興味深い話しだった。巫女―レニーの母親が話していた『シンキ』とは神機であり、『神器(ジンギ)』とはまた別の存在だろう。その根拠であり、それが俺が知る存在であると革新させたのが『神機を家として』の下りだ。


 どういう方法を使ったのかわからないが、神は架空の存在、創作物中の登場人物たちを実在する人としてこちらの世界に招いたのは確かだ。そしてアニメシャインカイザーにおいて、多数存在する登場人物と言うのは黒森重工に務めていた研究者達。そして中でも『空中母艦グランシャイナー』のクルーたちがそれに該当するのではなかろうか。


 日本人が創作物の世界に転生することがあるならば、創作物の登場人物が異世界に転移することがあってもおかしくない……? のかも知れない。神とは人智を超えた事象を可能とする存在だからな……。あまり自分の尺度で深く考えないほうが良いだろう。


 さて、空中母艦グランシャイナーだが、設定資料集によればクルーの数は400名。最高速度マッハ1で空を飛び、シャインカイザーを収納し、戦地まで移動することが可能な超大型飛空艦である。主砲として重フォトンランチャーを備え、一応それなりに戦闘も可能なのだが、あくまでも運用目的はシャインカイザーの移動とそのメンテナンスに有る。


 全長427m 全幅152mの大型艦までまさかこの世界に来ているとは夢にも思わなかったが、神はシャインカイザーを再現する物は全てこちらの世界に送ると言っていたわけだから、いまさら驚くことではないのだろうな……。 


 もっと早くにこの艦の存在に気づけていたならばもっと楽に事が進んでいたかも知れないと思わないでもないが、もしも当初からグランシャイナーに乗っていたならば現地民たちとの数々の出会いは無かったかも知れないし。そう考えれば"この物語の" 終盤と考えられる最終決戦前まで出番を取っておいたのも神の計画通りなのかも知れないな……。


 全く困った神様だ。


 さて、現在我々はその『神機』を目覚めさせるべく、それが眠りについている地に向かっている。レニーの両親達を戦闘にパイロット達、我々ロボ軍団、巫女達、そして大勢の村人たちがぞろぞろと歩いているものだから、なかなか妙な迫力がある。


 人の足に合わせて歩いているものだから移動速度が遅く、中々に辛いものがあったが、2度の休憩を挟むいよいよその地に到着した。


「機神様、お疲れ様でした。ここが貴方様方よりお預かりしていた神機が永き眠りについていた場所、そして我らが先祖達の始まりの場所、グランシャイナーです」


 レニーの母親が静かに語ったその地名、やはり神機とはグランシャイナーで間違いないようだ。そしてこの場所にそれが眠っているのも確かなようだ。


 だが、この場所は……。


『なあ……スミレ、グランシャイナーって防水機能あったっけ』

『何をバカなことを言ってるんですか。極地はおろか宇宙空間ですら稼働可能なグランシャイナーですよ』

『……そうか、そうだよな。いやすまない。俺としたことが変な事を聞いてしまったな』


 いや、しかし……しょうが無いではないか。現在我々の目の前に広がっているのは大きな湖だ。確かにグランシャイナーがすっぽり入る大きさでは有るのだが……、永きに渡って、それこそ地球であれば文明が何度始まり滅びたかわからない程の長期間に渡って沈んでいたんだぞ……。


 そんな俺の勝手な心配を他所になにやら儀式が始まったらしく、なにやら板のようなものを持ったレニーの母親が湖に向かい何事か唱えている……。む……これは……祝詞とか呪文とかそういうものじゃあないぞ……。と言うことはあの板は……デバイスか!


「コード:1074発動 シークエンス1から5まで省略。コネクトトゥ:フィアールカ……コントロールをフィアールカに。起動シークエンス及び運用権限をフィアールカに委譲。更にコネクトトゥ:カイザー。全権限をカイザーに委譲。以後シークエンス1から5は破却……グランシャイナー起動開始」


 これは……アニメでも21話でのみ、カイザー達を助けるべくグランシャイナーが再度基地から飛び立つ際に入れられたシーンのセリフ……。だが、知らない単語が聞こえた。


『フィアールカ』この単語は設定資料集をアホほど読み込んだ俺でも知らない。恐らくは劇場版の新要素なのだろうな……むっ!?


「カイザー、気づきましたか?」

「ああ、外部からのアクセス許可申請があったな……断る理由はないよな」

「はい、グランシャイナーの、私達の母艦からの信号でしたから……」


 俺の要らぬ心配を他所にどうやら健在だったらしいグランシャイナーは無事に機動をしたようだ……が、ちょっとこれは危ないかも知れない。


「諸君、もう少し高台に上がっておいたほうが良かろう。少し下がっておけ」


「神機様のおっしゃるとおりです。民よ、底の丘まで戻りましょう。後5分程でこの場に水が押し寄せます」


 神託……いや、レニーの母親は端末を見ていた。つまりはグランシャイナーから端末へ注意喚起でも届いたのだろうな。湖中で眠っていたグランシャイナーが、あの巨体が姿を表わすのだ。水が押し寄せないわけがない。


 村人や巫女達の避難が終わり、間もなくして地響きが聞こえた。そして間もなく……


「見ろカイザー!水面が盛り上がってるぞ!」

「ああ、見ておけマシュー、そして皆。アレこそが皆が欲しがって居たグランシャイナーだぞ!」


「まさかグランシャイナーまで有るなんて思いませんでしたわ!」

「凄い……うちの村にそんな物があったんだ……」

「まさかあんな物が実在してるなど思わなかったでござるよ……」

「あんな大きな物が……?うそだろ……」

「……」


 アニメを見ていたから、見ていたからこそこれからでてくるものの凄さがわかる。彼女達にシャインカイザーを見せておいてよかった、心からそう思った。



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