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第三百五十九話 移動

 レニーとフィオラが顔を出したことにより、村人達の緊張は解けたが集客という意味では火に油を注胃駄状態になってしまった。つまりは『機神』を連れ、帰郷した『巫女姉妹』を一目見ようと村人たちが次から次へと村の入口に集まってしまい、我々は動くに動けないでいる。


「レニーなんとかしてくれよお。ミコ? なんだろ?」

「それは言わないで! 私は巫女じゃないし、そもそも巫女は別に偉くないから!」


 と、気絶したバルさんと共に一足先に降りていたサナが誰かを連れて戻ってきた。


「おーい! レニー!フィオラー。おじさんとおばさん連れてきたよー!」


「げえー!」

『お姉……変な声出さないの!』

「いやだって……流石に……ね?」

『まー、お姉が悪いんだからしょうが無いね。なるようになるよ』


 サナが二人の人間を連れ、こちらに向かってくると群衆が綺麗に割れて我々までの道が出来上がった。流れからしてその正体は推測できるが……この状況は……。


「おーい!レニーちゃーん!お母さんよー!フィオラーちゃーん!おかえり~!」

「お父さんもきたぞー!おおい、レニーちゃーん!顔を見せておくれ!」


「レニー……」

「ちゃんですの?」

「可愛らしい呼び名ですな」

「ほら、レニーちゃん。ご両親が呼んでますよ」


「うう……ううー! もー!お父さんもお母さんもやめてよ恥ずかしい!」


「ほら、あなたレニーちゃんよ。しばらく見ない間に大きくなって。フィオラと同じくらいだわ」

「当たり前だろう? レニーちゃんはフィオラちゃんのお姉ちゃんなんだから。そりゃ育ってるさ」


「もー! 人を犬か何かみたいに言わないで!」


 なんだか強烈で愉快な両親が登場したな……。レニー達と同じ目と髪の色をした母親は巫女服の様な物を纏っていて、どことなくレニーの面影がある父親は神主のような格好をしている。


 あくまでも「ような」というだけで、全くそれそのものというわけじゃあ無いが、どこかしら神社を連想させるそんな服装だ。これもきっと例の神様のイタズラに違いない。


「ところでレニーちゃん、大きなお友達と、中に乗ってる小さなお友達の紹介をしてくれないかい?」

「そうよー! お父さんとお母さんには隠し事はできないんだからねー! ああ、でもこのままじゃ駄目ね」


 凄い。なんか凄い、グイグイと来る両親だ。こちらの正体というか、事情を知ってるっぽいのは置いといて、ひたすらに強烈だ……。


 その強烈な二人が群衆に向かって声を張り上げた。


「はーい!皆さん聞いてくださーい! 突然ですが、今日はお祭りの日に決まりました! 今決めました!」


「レニーちゃん達が連れてきた機神様の紹介をするから、皆は用意でき次第神社広場に移動してねー!」


 お祭り……? 今決めた……?


「……カイザーさん、みんな……。色々と言いたいことや聞きたいことはあるだろうけど……もう少しまっててね……。どうせ、どうせ直ぐわかることだから……うう……」


『お姉観念しなよね。ここで逃げたら皆にも迷惑かかるんだから』

「わかってるわよ! もー!」


 レニーの両親による群衆への説明によれば、祭りは夕方から行われるらしい。それまでの間、我々は先にその広場とやらに移動をして準備をしてほしいとのことだが、準備とは一体……。


 事情が飲み込めず混乱する我々を尻目にレニーの両親はニコニコとただひたすらに嬉しそうにしていて、我々を先導するように神社広場まで案内をしてくれた。


 流石のスミレもこれには動揺を隠せない様子で、なんだかそれを見ていたら俺の緊張はすっかりほぐれてしまった。


 村の建物はそのどれもが白く輝いている。レニーに聞くと、漆喰を塗った木造家屋とのことだが、どことなく小さな蔵がたくさん並んでるようで和んでしまう。


 建物と建物の間は広く離れていて、間に木々が茂っている。この緑が多い街づくりはどことなくリバウッドを彷彿とさせるが、あの街と違ってこの村には川が流れていないので、また別の独特な雰囲気がある。


 しかしレニーの両親は何なのだろう。我々の歩幅に負けぬ速度で先導をしている。そのため、あっという間に広場前に到着してしまったのだが……これは……。


「鳥居だ……」

「トリイ?ってなんだ?」

「俺が居た世界にあった神殿の門というか、なんと言うかそんな奴だ」

「ああ!竜也が学校をサボってパンを食べてたあの階段についてた奴ですわ!」


「え?あーーー! そう言えばそうだね! ……実家なのになんで気づかなかったんだろう」


 そう、我々を迎えるように立っていた赤い柱のようなもの、それはまさしく巨大な鳥居であり、その奥には石畳が敷かれた広場、そして最奥には大きな神社の姿が見えた。


「あの建物はリーンバイルの様式に似てるでござるな」


「ああ、リーンバイルも日本を元にした文化が伝えられているからな。似ているのは当然だな」


 キョロキョロと広場を眺めていると、レニーの母親がこちらに向かって声をかけた。


「はい、じゃあ皆用意するわよ。パイロットの皆はおりて頂戴。レニーちゃんとフィオラちゃんはお着替えね。ええと、カイザーさんだったかしら? 悪いけど分離をしてあちらの建物に入ってくれるかしら?」


 ……ようし、驚かないぞ。驚かない。色々と突っ込みたいが驚かないぞ。


「彼女は随分と我々の仕様に詳しいようですが、レニーの母親とは何者なのでしょうか?」


 だめだ、スミレ。その謎に今触れるのは駄目だ。もう俺はいっぱいいっぱいなのだからな!


「ま、まあ……取り敢えず、指示に従って流れに身を委ねようじゃないか……きっと悪いようにはならんだろう」


「楽観的ですね。レニーの両親ですから私も疑ってはいませんけれども」


 話についていけず、戸惑うパイロットと別れ、我々僚機たちもまた同様に戸惑いを隠せないまま、若い巫女に案内をされて巨大な蔵に入った。


「これは……驚いたな……」


 俺達が足を踏み入れた蔵。それは外からは決して想像できない内装だった。



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