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第三百五十四話 器用貧乏

訓練を終え、通常空間に戻ると、それを合図にキリンも作業を終了させて元洞窟最奥部、現在私達が野営場所に使っている広場に戻ってきた。


「やあやあお帰り。何やら面白い事をやってたみたいで羨ましいよ。ああ、いや、そんなつもりはないからね。私は掘削作業が楽しくて仕方がないのだよ。掘削中得られる資材は大体が石材なんだがね? ちょいちょい未知の鉱物があってね。いやあ、ストレージが潤う潤う……っとすまないね。私の口はブレーキがついていないのだよ」


「……ああ、うん。おつかれさま。少しでもルクルゥシアに備えようとVR訓練をしてたんだけど……ちょっと意見を聞かせて欲しいんだ」


 シャインカイザーの話は置いといて、キリンの訓練についてざっくりと説明をした。そもそも、キリンから直にデータをDL出来ない以上、動作チェック中の動きや、キリンをスキャンしたデータ、キリンから得られた口頭による情報で【仮想キリン】を作り出し、フィオラ達に乗ってもらっていたわけなのです。


 なので私達が知らないキリンに秘められた能力があれば勿論それは再現不可能だし、それを前提とした運用方法があるのであれば、速いうちに聞いて置かなければ誤った訓練を続けてしまうことになる。


 もう既にキリンに関するネタバレについては諦めているため、ここはもうぶっちゃけてもらおうと思ったわけなんだけど……。


「ん、今スミレから訓練データをもらったよ。いやあ、面白い事してるねえ。この大きなスミレ、どうにか現実世界で建造できないものか?素材としてはこの未知の金属を……」


「キリン」


「お、おっとすまない。ううん……非常に申し上げにくいのだが……」


 キリンがなんだかバツが悪そうな感じで言いにくそうにしている。


「なんだよ、ハッキリ言ってくれ。間違いが有れば直さねば今後の支障になるからね。ほら、遠慮なく」


「いやその……。悲しいほど私のスペックを再現しているよ、この仮想キリンは」


「え……」


「ああ、いやそう肩を落とさないでくれ。君達が真に力をつければ……私ももう少し戦えるようになるはずなんだけどね。現状ではフィオラ達が乗っていたシュトラールより若干性能が上……といった程度だろうか。ああ、勿論純粋な戦闘スペックに限った話だよ」


 しばらくキリンから説明をしてもらったけれど、やはりキリンというのはシャインカイザーのサポートメカと言った扱いで間違いはないようだった。それでもシュトラールよりは戦闘力があるし、乗り込んでいるパイロット達もそれなりに腕が良いため、扱う武器次第ではちゃんと戦力になるという。


「合体している君達や、それの相手として組まれた仮想機体【スミレカイザー】と単体である私を比べるのはひどくないかね!?」


 ごもっとも。


「いやまあ、神獣形体で戦うというのは……私も経験が無いから新鮮だったけどね。成程たしかにあれなら高機動の相手でも対応は出来るね。まあ、問題は武器が無いということなんだが」


 折角の変形を戦闘に使っていないとはどういうことなんだろう。突っ込んで聞いちゃうとシナリオのネタバレに繋がりそうだから言わなかったけど、ちょっと気になるな。


 それより武器だね。神獣形体はともかくとして、ロボ形体で使える装備が無いのは困る。キリンがかぶっていた巨大な動物?はどうやって仕留めたのかと聞いたんだけど


『ああ、麓で拾った樹木を杖代わりにしてたのだがね? 服を作るために毛皮を得ようと思った時に、しょうがなくそれを使って仕留めたのだよ』


『……毛皮に棍棒って自ら鬼に近づいてなにやってんだよ……』

『はっ!? そこに気づくとはカイザー、さすがだね!いやあ、せめて石槍に加工すべきだったか』


 という、非常に疲れる会話になってしまった。しかし、それがヒントとなってキリンの暫定武器を思いつく。棍棒にヒントを得て金棒……という話ではなく、あるものを加工すればよいという方向で。


 シュトラールは複座という特殊な部分があるけれど、一応汎用型機体という扱いで、一応どんな武器でも装備可能な設計になっている。そしてアラン達が乗る機体や、フィオラ達が乗る機体は専用機としてそれぞれが得意とする装備に特化した調節がされているわけだ。


 それに対してキリンは純粋な器用貧乏だ。カイザーの下位互換……という言い方は良くないが、私からメイン機体という最大の魅力を抜くと近いスペックになるのではなかろうか。


 逆に言えば、どんな武器でもある程度対応可能なのだ。なんと言ったかな、例えばトリバが元々使っていた軍用機は純粋な汎用型ではなくて、近接用の機兵は弓を扱うのには向かない設計で、アーチャーはアーチャーで足腰がしっかりとした狙いをつけやすい特別設計の機体を使ってたんだ。


 キリンはソードでも弓でもなんでも来いだ。シャインカイザーと同じくらい大きな機体は大型のソードも軽く振り回せるし、弓だって扱うことが出来る。無論、その気になれば格闘術だってかなりの威力になることだろう。


 ただ、シャインカイザーと比べた場合、性能差で劣ると言うだけの事なのだ。


 で、そういうことであればシュトラールが使っていた装備をそのまま使えるわけで。でもせっかくだからキリンの体格に合わせた装備に改良すればよいのではないかって思いついたのですよ。


 キリンは武器を作ることは出来ないし、いくらWorkshopを使ったとしても1から専用装備を作るのは時間がかかってしまう。でも、改良ならってね。


「みんな、休んでいる所をすまないがちょっと手伝ってくれ。シュトラールの装備をキリン用に改装するぞー」


 私の呼びかけを嫌がるメンバーは誰もいなかった。皆嬉しそうに快諾し、キリン用の弓と大剣が完成したのだった。

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