第三十四話 陰謀
マシューの案内でトレジャーハンターギルド赤き尻尾の駐屯地に入る。
山の中腹に広めのスペースがあり、そこにギルドであろう建物と、トレジャーハンター達が暮らす宿舎、それと機兵のメンテナンスや発掘された遺物の調査をするのであろう整備場のようなものが見える。
石と鉄で作られた無骨な建造物からはもくもくと蒸気や煙が立ち上り、橙色のランプがぼんやりと敷地を照らしている。なんだかスチームパンク的な浪漫を感じる場所だ。
「そこがギルドだよ。今仲間を集めてくるから待っててくれ、っとそうかそうか」
俺とオルトロスはサイズ的な問題で建物には入れない。その事に気づいたマシューがギルド前の広場に人を集めてくれるようだ。
まずは今回の騒動についての謝罪と説明をして、その後オルトロスについて話し合うことにする。
まもなく、マシューに連れられてゾロゾロとトレジャーハンター達が集まってきた。
事前に調査したとおりマシューを含めて12名、中には俺たちが壊してしまった機兵のパイロットも居るのだろうが、皆ピンピンしているようなので怪我などはしてないらしくほっとした。
皆が集まったところでレニーが前に出た。
「赤き尻尾の皆さん!本当にごめんなさい!」
まずはお詫びからとレニーが頭を下げた。事情を察しているのか腕を組んでみている者、よくわからなくて周りから聞いている者と反応はいろいろだ。
さて、事情を話さなければどうにも話は進まないのだがどうしよう。レニーにすべて任せるよりも俺が話した方が伝えやすい。
マシューはオルトロスのパイロットだ。俺の僚機と関係がある以上、今後もギルド含めて付き合うことがあるだろう。信頼を得る事は大切なことだ、ここはいっそ正体をバラし、その上で信頼関係を結んでいこうじゃないか、ようし俺が喋る大義名分が出来たぞ。
立膝を着いて座ったような「降機姿勢」からゆっくりと立ち上がり、メンバーの方を向いた。突然俺が動いたに気づいた連中がびっくりしてるがこれから更に驚くことだろう。
「マシューの仲間である君たちを信頼に値すると判断し、私からも詫びを言わせて貰う。勘違いとは言え申し訳なかった」
喋るはずのない俺が喋ったものだからギルドメンバー達がびっくりしている。「他にもパイロットがいるのか?」「男が乗っているんだ!」などなど聞こえてきたため、コクピットを開け空であることを示す。
「見ての通りパイロットはそこのレニー以外乗っていない。俺は変わった機兵でね。喋れるのさ。ちなみに俺だけじゃ無くてマシューのオルトロスも喋れるからな」
『今まで喋れなかったけど~』
『喋って動けるようになったよー』
くるくると踊って見せるオルトロスに腰を抜かして怯えるトレジャーハンター達。正直やり過ぎだと思う。
「オルトロス。大人しくしていなさい。ええっと、今回の騒動のお詫びをしたいのだが、頭領ってのはどの方だろうか」
すっと立ち上がり俺の前にやってくるマシュー。おめえじゃねえ座ってろ。
「何考えてっかわかんだからな!慣れっこだ!あたいが赤い尻尾2代目頭領マシューだ」
「ええーーーーーーーーーーー????」
レニーが俺の代わりに驚いてくれている。マジかよマシューが頭領?
「ああ、じっちゃん…、前の頭領があたいを指名したんだよ。あたいじゃ無理だつったのに周りの連中も変に持ち上げちまってね……。あたいなんかにゃ役者が足りねえってのに…ばかなじっちゃんだよ……」
「何言ってやがる!マシュー以外に適任はいねえよ!」
「そうだそうだ!爺の跡継ぎはマシューしかいねえって!」
「誰が爺じゃ!わしが認めたんだからいいじゃろうが!」
あっ、前頭領ご存命で……。
何となく場が和んだところで今回の事情を話す。
「…というわけで、ここにやってきたんだがてっきり盗賊団だとばかりおもってしまって…」
「あたしがもっと情報を知ってれば…!ごめんなさい!機兵も壊しちゃいました!本当にごめんなさい!」
俺達の謝罪を笑って許してくれる前頭領と現頭領。なんでもマシューはそこそこ器用であの程度であれば自分で直せるらしい。
「にしても……、きな臭い話じゃの。マシューから聞いたと思うが、この辺りには盗賊なんて滅多に出んし、砦なんて物も存在せん。恐らくこれはワシらとお前らに恨みを持つ連中が仕組んだ事ではないかのう」
「レニー、お前なんかやらかしたのか?」
首をブンブンと振り否定するが、スミレが何か気づいたようで発現する。
『…恐らく、あのガラが悪いハンターが関わっているのでは無いでしょうか』
「ハンター?ああ、レニーに絡んできた奴らか。なんでだ?」
『連中はレニーが気に入らないというよりは、カイザーを狙っていました。ハッチが開かないのはレニーが何かしていると思っている節がありましたので、レニーを殺害し、所有権を無くした上で自分たちの物にしようとしたと推測されます』
「なるほど……、しかし自ら手を下さず事故で死んで貰おう、そう考えて赤き尻尾に俺達をけしかけたってわけか」
俺とスミレの会話を聞いたトレジャーハンターが思い出したように口を開く。
「たぶん、それで合ってると思うぜ。俺達の事を疎ましく思ってる連中がいるはずだからな」
疲れた顔で若いトレジャーハンターの男が語り始めた。
「遺跡で発掘してるとハンター共がうるせえんだ。俺達の縄張りだーだの、勝手に掘るなーだの。こっちゃー国から許可貰ってやってんだ、文句言われる筋合いねえってんだよ」
「遺跡を掘るのに許可がいるのかい?」
「ああ、個人的にちょっと掘るならなんも言われねえが、商売にするなら別さ。過去を知ることは大切な事だってことで、発掘の許可を貰う代わりにきちんと調査をして報告する義務があるんだ。」
「そんな輩達だ、当然妨害してくるんだろう?」
「勿論さ。採掘用の機兵じゃあ歯が立たねえが、幸い俺らにゃ頭領のムラサキ……オルトロスっていったか。その機兵があるからよ、コテンパンにしてもらったんだ」
「そうさ、そのうちあたいとオルトロスの姿を見ると逃げるようになってね。ただ、ちょいちょい斥候がギルドの様子を見に来るようになってさ、こりゃ襲撃が来るなってそこに砲台をつけたってわけ」
つまり俺とオルトロスで共倒れになってくれればよし、片方だけでも片付いてもよし、そういう頭の悪い理由で盗賊団をでっち上げ気の良いレニーを騙してけしかけたってわけか。
そろそろ来るはずの援軍が来る気配が無い当り、間違い無いだろう。
盗賊団騒動の落とし前は後でするとして、先にお詫びからだな。
「それはそれとして壊したお詫びはしたいと思ってる。出来ることなら何でもするから言ってくれ」
「あたしからもお願いします!無実の機兵を傷つけたとあってはハンター魂に反しますので!」
マシューと前頭領が何か話し合っていたが、決まったようでマシューがこちらを向いた。
「そんだけ言うなら手伝ってくれ。さっき言ったとおりあたいは機兵の修理が出来る。ただ、その修理にはパーツが必要だろ?あたいも行くから一緒に狩りをしてくれよ」
「それくらいなら朝飯前よ!ね、カイザーさん!」
「勿論だ!それとマシュー、良い機会だからオルトロスの使い方をちゃんと教えてやるぞ。これは俺からの詫びだと思ってくれ」
「そうかい、じゃあそれも頼むよ!狩りの場所は大戦の原野、狙うのはストレイゴートだ。明日以降ゆっくり狩れば良いさ」
マシューの話に頷き、話し合いはいよいよオルトロスの話題に入る。




