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第三百四十三話 手詰まり

 洞窟生活3日目……、と言えば楽しげに見えるけれど、実際の所かなり参っている。フィールド内は暖かく、生活に不自由はない。けれど、吹雪が止んでくれないことにはどうにもこうにも始まらない。


 そこで、ヤタガラスに頼んで外の調査をしてもらうことにした。我々はAIを搭載していて、自立起動が可能だ。つまり人間にとって厳しい環境であっても問題なく活動することが可能となる。


 とは言え、万全を期して分離をし、ここに3機とシュトラールを残してヤタガラスが単体で外に様子を見に行くことになったわけだ。


 飛行機能を持つヤタガラスであれば垂直の壁も難なく浮上でクリアできる。


 調査目的は一つ。ここより上層にこの洞窟のような避難場所が有るか否か。もし、同様の場所があるのであればここから出てそこを目指そうと思ってる。


 シュトラールの防寒性が不安だが……、短時間で移動可能な場所に洞窟があるのであれば少しずつでも歩みを進めることができる。できれば見つかってほしい所だ。


 と、ヤタガラスからの通信がはいった。


『ヤタガラスでござる。視界不良、相も変わらず雪景色!こうも白いと拙者まで白ガラスになりそうでござるな』


「ははは、お前が白くなったら俺とかぶってしまうだろう。それは勘弁してくれ。それでなにか見つかったか?」


『いや……、現在500mほど上層にいるのだが、ここから上をスキャンしてもそれらしい影は見つからぬ。山脈を広く探ればどこかに有るのかもわからんが、この風では自在に飛ぶことも出来ぬゆえ……』


「ああ、それだけわかれば上等だ。深入り早めて帰投してくれ」


『かしこまった。ではガア助、これより帰投するでござる』


◇◇◆


 帰投したヤタガラスを労い、私も身体を移して皆のところに移動した。今後のことを改めて相談をするミーティングをするのです。


 ちょうどお昼ご飯だったので、先にそれを済ませて食後のお茶を飲みながら情報をまとめた。


「まず、ヤタガラスからの報告だけど、ここから上には洞窟はないようだった。それ以外の野営ポイント自体はいくつかあるようだが、この吹雪が続いている限りそこを使うのは難しいだろうな」


「では、私からも」


 ひらりとスミレが飛び上がり、何やら映像を空間に投影する。どうやらこれは周囲の雲をインターバルスキャンし、動画にしたもののようだ。


「これはここ数時間分記録した上空のデータですが、それを元に計算した結果、厄介な気圧配置の影響で暫くの間荒天が続くと思われます。衛星がないため確実な予報ではありませんが……、楽観視はしないほうが良いでしょう」


 するとレニーがそれについて補足した。


「そっか、もう11月が近いんだもんね。村に雪が積もるのは年越しの前後なんだけど、お山はそれよりずっと早く雪が降り始めるんだよ」


 レニーが今言っている『お山』というのは現在居るこの高層ではなく、もう少し下にある標高4000mクラスの山のことらしい。上層部には暖かい時期でもそれなりに雪が残っているらしいのだが、ハッキリと白く染まるのは11月が見える頃、ちょうど今くらいの季節らしかった。


「今くらいの時期になると、お山に雲が居座ってね。今いる壁みたいな山なんかはもう見えなくなっちゃうんだ。んで、それが無くなって山が見える頃にはもう年越しが近いって感じだねえ」


 ……軽く言っているが、かなり重要な話じゃない?つまり後一月はこの不安定な気候が続くってことでしょ?冗談じゃないよ。


「……どうしよう?となれば上に行くのはもう暫く無理だ。悔しいけれど、一度下山をして別ルートを通って……、それこそ海側から行くとか……」


「それは無駄でしょう。この忌々しい雲は山脈に引っかかるようにして発達しています。どういう理屈化はわかりませんが、ドーナツ状に展開しているようです。となれば、海から回った所で同じ轍を踏むだけです」


 ぐぬぬぬぬ……。最後の手段……、私とスミレだけ同行する形でパイロットたちだけで人間用ルートを通るしか無いのか?しかし……できれば機体を連れていきたい。カイザーのストレージにカイザーが入れば良いのだけれども、いくら謎技術とは言えそれは出来ないからなあ。


 ああだこうだと皆で意見を出しながら話し合ったけれど、どんどん煮詰まるばかり。ここまで出た中で一番現実的な案がマシューの意見である『洞窟が内側につながってんじゃねえの?』というのが悲しい。


 いや、その可能性は大いにある。なので強ち悪い案ではないのだけど……。


「カイザー。生体反応……1、接近中」


「生体反応?こんな所で?登山者か何か?いや、まさか。とてもじゃないが人にはこの山を登るのは不可能だ」


「それが……、洞窟の奥からこちらに接近しています。すいませんカイザー、洞窟側のレーダーを浅くしていたため発見が遅れました」


「いやいい。発見出来ただけで上出来だよ。距離は?」


「距離527m。恐らくですが、こちらを目指して移動しています……詳細スキャン可能範囲まであと10m……5m……詳細スキャン開始……カイザー……対象の詳細が解りました」


「……その口ぶりだとあんまり嬉しい話じゃなさそうだね。報告して」


「対象は体長13m、二足歩行……。濃厚な魔力反応有り。推測するに……魔獣です」


 後ろは吹雪、前からは魔獣……厄介が厄介を呼んできたってやつだね……。しかし、二足歩行の魔獣?データベースにない辺り、私が見たことが有る図鑑には載っていないということだ。


 つまりは未知の魔獣ということになる。もちろん、レニーやフィオラもそんな魔獣は知らなかったし、そもそも魔獣というものは村の周辺には居なかったらしい。


 ……じゃあ、なんだ?まさか……雪男でもいるっていうのか?

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