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第三百二十七話 覚悟

 フィオラからの鋭い質問『ルゥ達の戦いが元となったのがあの映像なのに、ルゥが知らない別の戦いとは一体何なのだ?』その問にはその場で答えることは出来ずに下手なごまかしをしてその場から逃げるという……、非常に私らしからぬ事をやらかしてしまった。


 そしてどうにもバツが悪く、そのまま『カイザー』に乗り込み引きこもってしまっているというわけだ。


 ああ、なんなんだ……、なんなんだ私は。こんなウジウジしたやつだったか?私というのはこんなに臆病なやつだったか?


 ……ああそうだ、『俺』は、カイザーは勇気があり、男らしく、決断力に溢れた存在だ。でも『私』は、臆病で、うじうじして、優柔不断なダメダメな奴だ。


 カイザーとして転生してから本来の私という存在は若干の改編がされ、よりカイザーらしい性格になっていた……んだと思う。でも、ルゥという仮初では有るけれど人間に近い身体を得て、そしてカイザーとしての記憶を失い、ルゥとしてフィオラとして過ごした日々が本来の私を呼び覚ました。


 トドメとなったのがカイザーシステム内部での出来事だ。あの一件で私は私であった事を、過去の自分を完全に思い出すこととなり、現在こうして若干のやりにくさを感じているというわけか……。


 ……あー、もう、めんどくさい。


 明かすか……。


 このまま全てが終わるまで、じっと口をつぐみ全てを明かさないままというのも悪くはないかも知れない。けど、後から後悔するのは嫌だ。あの時皆に伝えていれば、そんな公開をするのは嫌。


 パイロットの皆には勿論、僚機の皆、ウロボロスやオルトロス、ヤタガラスにも自分たちのルーツというものは知っておいてもらったほうが良いんじゃないかって思う。


 それを聞いて彼らがどう思うか、ショックを受けるかも知れない。言わないほうが良いのかも知れない。

 私のわがままなのかも知れない。ただ単に私がスッキリしたいためなのだから酷い話だと思う。


 でも、私は、私という存在を皆に知ってもらおうと思う。


 ◇◆


 ブレイブシャインの皆……、本メンバーである4名と、サブメンバーの2名、そしてスミレに各僚機の皆……これは流石にそれぞれぬいぐるみ化してもらって秘密の部屋に集まってもらった。


 秘密の部屋というのは以前、ミシェルが儀式を行った例の祭壇がある場所だ。基地の最奥部に有り、一応そのまま隔離されている部屋なんだけど、こうして内緒話をするにはうってつけというわけだ。


 付き合いがそれほど長くはないサブメンバーの二人に私の正体を明かすかどうか迷ったんだけど、ルゥとして短くとも濃密な日々を過ごし、共に命がけの戦いをくぐり抜けた戦友であること。そして……なんだろうな、彼女達にも明かしておくべきだという予感のようなものがあったんだ。


「一体こんな所に集めて何が始まるんだ?」

「神聖な場をこんな所呼ばわりは許しませんわよ、マシュー」

「まあまあ、ミシェル殿。カイザー殿に免じて……」

「それで、集めた理由って……なに?」

「私達だけじゃなくて、機兵のみんなも可愛くなって集まってるね」

「ううう、ブ、ブレイブシャインが勢揃いの場にア、アタイまで……」


 パンパンと手を叩き、乙女軍団のざわめきを止める。皆にそれぞれ椅子にかけてもらい、皆の前に立つ。


 既に私の事情を知っているスミレには事前に相談し、とある映像を用意してもらうことにした。ソレに関しては、スミレは少々嫌がったのだが、それでも私のために涙をのんで了承してくれたのだ。


「皆に集まってもらったのは……やつとの戦い……いや、私達らしく言えば最終決戦が迫っているのは皆も感じているだろう?それを前にして、隠し事は無しにしようじゃないか、そう思ったんだ」


「あ、あたいは何もやましいことはないぞ!」


 何故かマシューがうろたえている……が、マシューの秘密なんてどうせ沢山のお饅頭を隠してストックしているとかそういう話だ。そして今日は皆の秘密を聞く日というわけじゃない。


「ふふ、マシュー。君の秘密はまあ、置いとこう。今日は私の、私が皆に話していなかったことを明かそうと思うんだ」


「カイザーさんの秘密……。わかりました、あたし、カイザーさんが何者でもカイザーさんの味方だよ」

「おうさ、あたい達だけに明かすってことは、よっぽどの事なんだろう?」

「何があろうとも私の忠誠は揺らぎませんわ」

「私もです。カイザー殿には一生仕えると決めておりますので!」


 ミシェルとシグレが重い……っていうか、なんで私の臣下みたいになっているんだ。


 そしてフィオラ達も。


「ルゥの秘密……、秘密の塊みたいなルゥだけど、何があっても驚かないからね!」

「あわわわわ、カイザー様の秘密なんて私に……あわわわわ」


 うん、まあ、いいか……。


 ぬいぐるみと化している僚機の皆は神妙な顔をして……いや、縫いぐるみなので表情はわからないけれど、静かにこちらを見つめ、私の言葉を待っている。


「ありがとう、みんな。突拍子もない話しだけれども、私という存在は正にその通りの存在なんだ。そして僚機の皆。皆もまた、ショックを受けるかも知れない。けれど、どうか受け入れて欲しい」


 僚機の皆が頷いたのを確認し、私は……どこにでも居る普通の人間の話を皆に聞かせた。



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