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第二百八十二話 基地へ

 ガアスケに乗って大空を飛ぶ!事はなく、昨日同様にガタゴト揺られながら基地に向かった。


 下手なことを言って空に連れて行かれては敵わないと思ってるのか、ラムレットは昨日と比べてあまり文句を言わず、ただひたすらに青い顔をしてつらそうな表情を浮かべている。


 とは言え、マシューも昨日よりだいぶ優しく走ってくれてはいるんだけどね、いかんせん走り方がダイナミックだからどうしようもないわけで。


『わりいな!もうちょっとだけ耐えてくれ!なーに、後2時間もありゃ到着だからさー!』


 いいタイミングでマシューからの励ましが飛んできます。


「……うう……後2時間もあんのかよお……」

「わ!みた?今の見た?ルリボシトリバチョウの群れだよ!綺麗だったねー」


 一方、フィオラは……何か耐性がついたのか、今日はケロりとしている。やたらと運動神経がいいけれど、三半規管のスペックが高いんだろうか。


「フィ……オラ……なんでお前そんな元気なんだよお……」

「うーん?慣れ?」

「ありえねえ……」


 ◆◇◆


 休憩を挟み、走ること1時間。唐突に森が切れ、広い場所が現れた。


「わあ!なにこれ?村?」


 興奮したフィオラが馬車から身を乗り出し落っこちそうになっている。


 いやしかし、ほんと凄いなこれが基地……?


 広く切り開かれた森に建物が立ち並び、人々が賑やかに歩き回っている。それだけではなく、多くの機兵が忙しく何か作業をしていて、村全体が基地というような具合だ。


 働いている機兵は魔獣モチーフの物ではなく、パインウィードで見かけた『エードラム』という機体が殆どで、何か資材を運んだり、土木作業をしたりと忙しそうにしている。


 間もなく、広場のような所に到着すると、ようやく降りるように促された。


「うう……ああ……ついた……のか……?」

「ラムレットさん、しっかりして?見てみて!凄いよ!」

「ああ……すげえな……うん……すげえ……」


 今にも探検に駆け出しそうな勢いで元気よくキョロキョロとあたりを見渡しているフィオラと対象的にラムレットは土色の顔をしてへたりこんでいる。


 しかし、もう目的地だ。これ以上弱ることはないだろう。だから元気だして……ラムレット……。


 ラムレットの背中をさすって……手が小さいから効果が有るきはしないけど、少しでも良くなれとさすっていると、先に到着していたミシェルが誰か人を連れてやってきた。


「お!じっちゃん達!相変わらずしわくちゃだな!生きてたか?」


 マシューが嬉しそうに声をかけたのは二人の老人だった。

 

 老人―といっても、二人共がっしりとした体つきで、日に焼けて赤黒くなっている腕は熊でも殴り殺せそうなくらいムキムキで、とても健康的だ。


「うるせえぞマシュー!おめえはさーっぱりデカくならねえな!」


 ニカニカと笑いながら返事をしたのは猫族のオジさんだった。もう一人のオジさんより少し背が高く、作業中だったのか二人共油か何かで汚れている。


「おいおいおい、ほんとにおめえさんはレニーじゃねえのかい?」


 そのもう一人のオジさんが驚いたような顔でフィオラのところに来て声をかけた。


「えっと、はじめまして。私はフィオラ・ヴァイオレットです。似てるって言われますけど、姉ほど間抜けな顔をしてるとは思わないのですが……あ!レニーの馬鹿の妹です!」


 フィオラが一言も二言も多い自己紹介をする。それに乗るような形で弱々しくラムレットも声を上げた。


「アタイ……は……ラムレットです……フィオラの連れでハンターやって……ます……」


「おいおい、あんた大丈夫か?ああ、俺はリック。そっちのジンと二人、ここの基地で機兵をいじくり回してる爺だよ」


「なんだよ、おめえ先に自己紹介してんじゃねえよ。俺はジンだ。マシューの育ての爺で、そっちのリックと二人威張り散らしてる爺ってなもんよ……それにしても……なあ、リック」


「ああ、おい、お前さん、カイザーだよなあ?記憶がねえんだって?ほんとかよ?」


 ”爺”達が二人で私を取り囲み、しげしげと眺めている。今にも分解されそうな雰囲気がする……ここはきちんと自己紹介しておこう。


「ちょ、離れて……。そうだ。私は記憶が無いんだよ。ちょっとずつ思い出してるけど、今はカイザーというより、フィオラが付けてくれた『ルゥ』という名前で呼ばれたほうがしっくりくるし、口調もどうやら妙らしいんだよね……。だから、『カイザーだ』ってのは置いといて、笑わず『ルゥ』として接してくれれば今は嬉しいかな?」


「「うええ……なんだこのカイザー気持ちわりい……」」


 爺達が仲良く同じリアクションで返してくれた。


 うん、ムカつくジジイたちだな!笑われなかったけど、明らかに大げさなリアクションで引いてますアピールされるとそれはそれで傷つく。


「はっはっは、わりいわりい、拗ねんなよカイザー!あーおもしれ。カイザーのそんな顔はじめてみたぜ」


「全くだな!クソ、なんたってスミレは行方不明なんだよ!こんなおもしれえカイザーみたら、アイツのことだ、『永久保存しましょう』とか言ってストレージに保存しそうだな!」


「ちげえねえ!」


「「がっはっはっはっは」」


 ……まったくパワフルな爺さんたちだ……。


 ともあれ、無事に基地に着くことが出来た。まずは何処か落ち着ける所に案内してくれると嬉しいな。


「いつまでも笑ってないでさ、私達……特にラムレットがもう辛そうだから何処か基地の休める場所につれてってくれないかな?」


「基地の?そりゃいいが、その娘さんもう少し休んだほうが良くないかい?基地まではまたちょっと馬車に乗るハメになるぜ?」


 リックが恐ろしいことを言う。どう見ても基地にしか見えないこの村、これが基地じゃないだと?


「ええ?ここが基地じゃないの……?」


「まあ、すっかり基地みてえになってるけどよ、基地はもうちょっと先、ほら、こっから少し行った先に岩山が見えるだろ?そこにぽっかり開いた洞窟の中に基地が有るのよ……ああもう、本当になんもかんも忘れちまいやがって……」


 なんてことだ……。洞窟の中に基地だと……?なんだかわからないが、とてもワクワクする……。


 なんだろうこの感覚、妙に……滾る……

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