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第二百七十四話 森の依頼

 フォレムに到着してからもう5日が経った。どうやらブレイブシャイン達は無事に緊急依頼とやらを達成し、急ぎ此方へ向かってるとの事だったけど、大陸の端っこに居たわけだからね。再会?するのにはもうちょっとだけ掛かりそうだった。


 そんなわけで、私達は今日も元気に依頼を受けて探索中です。


 なんというか、申し訳ないくらいギルドでの待遇が良くって、中々良い宿に無料で泊まれるほか、私達が出来る美味しい依頼の紹介、そしてフィオラとラムレットには機兵を貸し出してくれた。


 フィオラ達が乗っているのはウルフェンという機体で、ブレストウルフのパーツを主体としたオオカミ型の機兵。元々はフォレムの自警団が使っていた機体だったらしいんだけど、何機かエードラムという新機体が配備され、そのお古がギルドに回ってきたそうな。


 その御蔭で以前から問題になっていた『収入が問題で機兵に乗れないハンター』の対策をすることにしたそうで、具体的には未経験者は二日間の教習後、空きがあれば格安でいつでも機兵を借りることが出来る、というものだ。


 もし壊してしまったとしても、明らかにわざとでない限りは弁償の必要もないため気兼ねなく借りることが出来るという。


 きっかけとなったのはレニーなんだって。


 レニーは皆から馬鹿にされつつもコツコツと努力を続け、ある日運良く機兵を手に入れたら水を得た魚のような大活躍。ギルドとしても見過ごせるものではなくって、レニーのような潜在的に機兵乗りとして優れたものが乗れないままハンターを辞めるような事になってはもったいない!と、今更ながらギルドが育成に手を出したらしい。


 機兵ってすっごい高いみたいだからね。お金持ちや人脈がある人なら直ぐ買えるだろうけど、他所から一人で来てソロで頑張っているようなハンターじゃそうも行かない。


 クエストボードをちらっとみてみたけど、生身で受けられる仕事じゃ正直……いつになったら買えるのかわからなかった。


 ……フィオラみたいな人は別としてね。


「しかし、機兵に乗ってると変な感じするねえ」


 いつもよりだいぶ高い視点で歩くフィオラが嬉しそうな声を上げる。ギルドから機兵の貸出を聞いたフィオラはラムレットを誘って二日間の講習を受け、本日ようやく実戦となったわけ。


「あんまりはしゃぐんじゃないぞ。油断してるといくら機兵でも危ないからね」


 いくらなんでも講習が終わったからと言っていきなり一人で実戦に行けるわけではない。ギルドから派遣される指導員が一人護衛がてら着いて現地指導をしながら依頼をいくつかこなした上で真の卒業となる。


 しかしフィオラの場合は事情が違った。ラムレットはフィオラに誘われるまま一緒に受講してたけど、彼女は元々ライダーなんだよね。ヒッグ・ホッグに破壊されたフロガルという機兵の代わりを買うべくフォレムを目指すのだ、と、出会ったときに言っていた。


 フロガル乗りの4級(フォース)ハンターと言う記録はきちんとタグに記録されているので、ラムレットは指導員としてフィオラに付き添うことが出来る。


 つまり、私達はいつもの3人で気兼ねなく探索ができているというわけです。


 人の足で歩くとかなり掛かる場所も機兵で有れば速い速い。


 後1時間も歩けば今日の目的地、王家の森の端っこに到着ですよ。


 今回の依頼はその周辺にちょいちょい現れるブレストウルフの討伐。生身では高リスクの危険な依頼ですが、機兵に乗っていれば練習用の依頼にまで難易度が下がるのです。


「でもフィオラ、油断しちゃダメだよ。ブレストウルフは群で行動するからね。ラムレットと上手に連携を取らないとあっという間に窮地に陥るよ」


「はあい、わかったよーって、ルゥ、妙に詳しいね?それもあれなの?カイザーの記憶ってやつ?」


「……なのかな?わからないけど、多分そうなんだろうね。ぱぱっと蹴散らしたような気もするし、その際ちょっとひどい目にあったような気もするし……いずれにせよなめてかからないようにね」


 さて、そろそろ王家の森かな?という所でフィオラのお腹が咆哮を上げた。


「えへへ……ほら、朝ごはんあんまり食べれなかったじゃない?しょうがないんだよ」


 森に向かうため、宿のご飯は断って行動食を齧りながら来たんだもん、まあしょうが無いよ。

  

 空腹状態での行動はあまり良くはないだろう。


「ちょうどいいし、休憩してから森に入ろうか」


「さんせーい」


 ラムレットに合図を送り、近くに寄ってもらった。フィオラがハッチを開けると新鮮な空気がふわっと入り込む。冷たくて気持ちが良いな。


「どうしたんだい、ルゥ。もうすぐ森だけどトラブルか?」


「ああ、燃料切れさ。フィオラがね。ねえ、その辺で休憩をして行こうよ」


「奇遇だね!アタイも燃料切れを訴えたかったところさ。よーしフィオラ!いい場所を探せ!これもライダーの訓練だよ!機兵と一緒に休める場所を探す、地味に大切なことなんだぞ」


 ここぞとばかりに講習をねじ込むラムレット。でもそうだよね。徒歩だと気軽にその辺で休めるけど、乗り物に乗ってる時は駐車場探したりしなきゃ無いし、機兵だってそんな感じなんだろう。


 ん?チュウシャジョウってなんだ?今何か、不思議な記憶が……?


「あ!ほら、あそこ見てラムレットさん!絵に描いたような良い休憩スペースがあるよ」


「ん?どれどれ……おお?よくみっけたなあ……でも何だありゃなんであんな?まあいいか」


 フィオラが見つけたスペースは街道から外れたところにあり、周辺の様子からも人や魔獣が通った形跡が無かった。なんというか、特になにか悪いものがあるわけではないのだけれども、わざわざそこを通る理由もないため、自然と避けられている、そんな具合の場所だった。


 そこに不思議な、長方形のポッカリと空いた空間があったのだ。


 と言っても、ただ単にそこだけ草があまり生えていない、今まで何か重いものがあって、しっかりと大地が固められている、そんな感じだった。


 なんだか、不思議な懐かしさを覚えるその場所に私達は移動し、早めの昼食をとることにした。

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