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第二十五話 精算

「ちわ~……おっちゃあ~ん……?」


 恐る恐るといった感じでレニーがジャンク屋に入っていった。「小一時間ほど」とは言っていたが、流石に2時間ほったらかしは怒られるのでは無いかとビクビクしてるのだ。


 奥からユラリと現れた"おっちゃん”がレニーをガっとつかむ。


「ひええ、おっちゃん、ごめ…」


 言いかけたレニーを遮りおっちゃんが興奮気味に言う。


「レニー!お前!!!!ずいぶん頑張ったじゃねえか!!!」


 つばが飛んでくるのか凄く嫌そうな顔でおっちゃんから距離を取り、レニーが得意顔になる。


「へっへーん!そうでしょう、そうでしょう?このブレストウルフのパーツ数!そしてなにより!!」


「そう、ブレストウルフなんてもんはどうでもいいんだよ!それよりこの!団子虫タンククローラーだよ!! 3サードでもソロじゃ中々討伐できねえっていうのによくやった!さっすが俺が見込んだレニーだ!」


「えっへっへ!凄いでしょう!ね、いくらになった?いくらになった?」


「おう、まずはブレストウルフの素材だが、これは金貨3枚と銀貨50枚だな。量はあるが、タンクが少ねえ。次は上手いことタンクを潰さねえように狩るんだな。

 タンクが6つで金貨2枚だ。通常1つあたり銀貨20枚の所を25枚、少し色をつけてやったぞ。で、残りのパーツが金貨1枚と銀貨50枚ってとこだな」


 おっちゃんの話だとやはりタンクを残して狩るのは難しいようだ。なかなかにデリケートなパーツらしく、下手に力ませな戦い方をするとタンクにダメージが入り価値がなくなってしまう。


 なので4級を名乗るに相応しい力任せでは無いスキルを見せるためタンクが提出部位となっているようだ。


 そんな大切な意味があるのに金で級を買ったライダーがどうなるかはお察しの通りだ。


「で、目玉のパーツがタンククローラーだが…これは装甲が4枚で金貨5枚、動力炉がぶっ壊れてるが、金貨1枚、残りのパーツが銀貨80枚。しめて金貨6枚と銀貨80枚だ」


「あびゃあああああああああ」


 レニーが変な声を上げて倒れた。その顔は驚愕に包まれており、今まで聞いたことが無い金額にショックを受けたことを表していた。


「…まあ、そうなるよな…」


 おっちゃんが頭をかきながら苦笑いをしていた。



「…ふう、きき、金貨9枚にぎぎ銀貨130枚…ぎぎぎんか併せたらきききき金貨10枚…あわわわわ」


「まあ、わかるぞレニー?ライダーになったからっていきなりここまで稼げるヤツは稀だからな。でもな、これがライダーの稼ぎってヤツだ。覚えておけよ」


 バシバシとレニーの肩を叩きながら嬉しそうにライダーたるものはと語り始めた。っと、これは長くなりそうだ。レニーに通信を送りおねだりをする。外にあるパーツを買って欲しかったのだ。


「……はあはあ…っと、そ、そうだおっちゃん、表にあるパーツを売って欲しいんだけどさ」


「お!とうとうレニーにパーツを売る日が来たか!ライダーってのはな、金の出入りが激しいんだ。金貨10枚手に入れたらメンテで金貨12枚すっ飛ばす!金があるのに首が回らねえ!それが一人前のライダーってもんでな…」


 またおっちゃんのスイッチが入ってしまったが、レニーは手慣れた様子でおっちゃんの背中をぐいぐい外に押していく。


「知ってるよ!何度その話を聞かされたと思ってんの!ほらほら!今日は冷やかしじゃ無いんだから!さっさと!売って!!!」


「お、おおう、わかった、わかったから押すなって!」


 俺がレニーに頼んだのは何かの装甲の様なパーツだ。これを使って新たな武器を創ろうと考えている。


 俺の指示通り、レニーがパーツをおっちゃんに指し示す。


「ほほう、ラージマルアの装甲か。こいつぁここらには居ない貴重な魔獣なんだが、ここの連中は見たこと無い素材にゃ手をつけなくてよ。余所のライダーから仕入れたは良いが売れずに転がしといたんだ。金貨1枚だが、全裸卒業記念にくれてやるよ!」


「やったあ!だからおっちゃん大好き!」


 ガバッと飛びつかれ照れたように笑うおっちゃん。色々と控えめなレニーとは言え年頃の娘に抱きつかれたら俺だって照れる。


「次からは通常価格だが、またなんか採れたらもってこいよ!買いもんも大歓迎だ!つうか、なんも無くても遊びに来いよ!冷やかしすらいねえ店にゃ客が寄りつかねえからな!」


 手を振るおっちゃんに別れを告げ店を後にする。



 気づけば夕暮れ、そろそろ泊まる場所を考えなければいけない。


 家を持ち歩いているのだから街から出てそこで泊まろうか、とレニーは言うが、街の近くにいきなり小屋が現れるのも騒ぎになるだろうと却下した。


 じゃあ、いつもの場所でいっかーと、レニーが向かった先は……。


「おう、来ると思ったよ、待ってたぞカイザー!」


 リックの所だった。


「こいつはよ、金がねえもんだから街に居るときはこうやって俺んとこに寝泊まりしてたんだよ。ったく、すっかり悪いクセつけちまった」


「まあまあ、ほら!食料買ってきたからさ、ご飯作るよ!」


 レニーがドサドサっと出した食材を見てちょっとびっくりしている。


「こいつぁおめえ、すげえな」


 レニーはリックが言葉を発する前に食料を抱えてバタバタと工房の奥に消えていった。


 工房はよくある格納庫ハンガーといった感じで胸が熱くなる。奥に見える扉の先にリックの部屋などがあるのだろう。


 二人スミレもいるがになったところでリックに依頼をする。


「リック、俺から頼みがあるんだが聞いてくれるか」


「おう、お前さんから俺に頼みってこたあ……」


 ニヤリと笑って工具を握る。


「さっきジャンク屋で良さそうなパーツを見つけてね、これで武器を造って欲しいんだよ。スミレ、図面をプリントアウトしてくれないかな」


『既に用意してますよカイザー、転送しますね』


 スミレとはある程度のデータをリンクしてるんだった!戦術関係は思い立った時点で筒抜けか。話が早いから助かるっちゃ助かるが隠し事しにくいなあ!


 リックは目の前に現れた図面に(今更驚かねえよ)と平然とした顔で手を伸ばし熱心に目を通していく。

 

 同時に置かれたラージマルアの装甲と図面を何度も確認しながらニヤニヤと嬉しそうにしている。


「なるほどなるほど、なるほどなあ、確かにレニーにゃコイツがぴったりかもしれねえな」


 暫く何か考え事をしていたリックだったが、やがて奥に行きガチャガチャと音を立てパーツの確認をしていた。


「おう、やっぱちょっと足りねえもんがあるからよ。直ぐにはできねえ。

 まあ、どうせ4フォース昇格試験でまた森に行くんだろ?その間に片付けといてやるよ」


 リックの話に了承し、俺の分だと渡されていた金貨3枚(要らないという俺にレニーが文句を言って俺が3枚スミレが3枚レニーが3枚余りは貯金で決着がついた)から金を払おうとすると凄い勢いで拒否された。


「ばかいっちゃいけねえ。どうせその金はジャンク屋の親父が色をつけて寄こしたもんだろ?それにこのパーツ!アイツのことだ、全裸卒業記念だーとかいってタダで寄こしたに決まってら!」


 はい、その通りでございます。


「ここで俺が金を取っちまったらジャンク屋以下になっちまうだろ?そいつぁダメだ。これはよ、俺からの4級昇進祝いって事で渡すことにする。そうすりゃおめえ、あれよ!ジャンク屋以上のプレゼントになるだろ?よし!決まったな!この話はレニーには内緒だ!いいな!」


 良い笑顔でうんうんと何度か頷きながらいそいそとラージマルアの装甲を裏に運んでいった。


 なるほど、娘のようにかわいがるジャンク屋と孫のように可愛がるリック。互いに譲れない何かがあるんだな……。


 レニー、罪な女だ。


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