表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
232/498

第二百二十五話 パイロットの到着

 特にフラグ回収めいた面倒なトラブルも起きず無事、リム族の集落に到着した。

 ここの住人達はイモムシの加工を見ていたため驚くこともなく、ステルスを解除して迫る俺たちを見て歓声を上げワイワイと集まってきていた。


 今回連れてきた彼らには基本的に中間地点を拠点にして貰い、訓練を兼ねた伐採・討伐作業と中間拠点の整備をお願いすることになっている。

 

 なので直にあちらに下ろした方が実は効率的ではあったのだが、集落の人々との顔合わせやジンとの打ち合わせもあったため、多少ロスは生じるが集落まで運んできたのである。


『客室』から降りて背伸びをするリックに嬉しそうな顔をしたジンが駆け寄っていく。

 見るからに友と出会えた嬉しさが作り出した表情ではなく、いたずら心が生み出した悪い顔だ。


「よおリックぅ!久しぶりだな!元気だったか!空の旅はどうだった?楽しかったろう!」


「相変わらずうるせえジジイだな。空ァ?最初はまあビビっちまったが、慣れちまえば馬車より快適な旅だったな。こんなに疲れねえ旅は初めてだ」


 強がりか皮肉かと思ったジンだったが、他のパイロットを見ても疲れた様子がなく、むしろ元気そうに降りてくるのを見てそれを真実だと確信したようだ。


「おい!カイザー!なんだよこの待遇の差はよ!」


「そんな事を言われても困る。大体、客室の設計や製作に一番熱を入れていたのはジンじゃ無いか。アレの性能や仕様はわかっていたはずだろう?」


「うっ……、そう言われればそうなんだがよ……。くそ、心情的に納得したくねえ!」


 その気になれば酷い客室を作り、リックに同じ目を味合わせる事も可能だったわけだが、(パイロットもいるのでそのような真似は許可できないが)スミレやウロボロスと共同で未知の技術を盛り込んだ容れ物を作るとなって職人魂に火がついたジンは誰よりも張り切っていたからな。


 リックが快適な旅をする事が出来たのはジンの功績も大きかったのだ。


 顔合わせを兼ねて歓迎パーティを……と、言いたいところだが、もう1往復しなくてはならない。

 なのでそれは人員が揃ってからと言う事で、取りあえず俺たちが戻ってくるまでは自由行動とし、集落に馴染んで貰う事にした。


 流石にとんぼ返りはうちのパイロット達に負担が掛かるので、1日休暇を取ってから残りのパイロット達を迎えに行った。


 予めこちらから無事に到着した事を告げる連絡を入れ、そこでリックが「非常に快適であった」と報告を入れたため2回目に搭乗したパイロット達には悲壮感はなく、空への憧れからくる期待に満ちた表情をしていた。


 今後も客室(イモムシ)を使った人員運搬があるだろうし、最初のフライトでマイナスイメージがつかなくて本当に良かった。


 

 大好評のうちに2回目の運搬も終わり、ささやかな歓迎パーティを経ていよいよ訓練開始である。


 中間地点まではそれなりに距離があるため、三日間の基礎訓練をした後、それぞれが機兵に登場して向かうことにした。


 従来型のパイロット達ということで、ガラリと違う操縦方法に戸惑いはあったようだが、日々訓練を受けている「軍人」であるということで、数時間の座学でしっかりと基礎知識は身につけられていて、思ったよりはスムーズにものにしていた。


 混乱はないのかと一人のパイロットに聞いてみたが、


「まだ咄嗟のときに操縦桿やペダルを探ってしまいますが、時期に慣れると思います。寧ろ現時点で従来機より緻密な操作が実現していて驚いていますよ」


 と、なかなかに好感触だった。感覚的には液晶モニタとステアリングコントローラーでレースゲームをしていた人がVRグラスを装着し、モーションコントローラーで操作を始めた感じに近いのかもしれない。

 

 我々や次世代機の操縦方法はドーム型のコンソールに両手を置いて、動きをイメージするというものなので、慣れなければ身体が動いてしまう。


 リム族もそうだったが、パイロット達の中でもやはり何人かが爪先を傷めていた。

 歩こうとしたときに足が出てしまうのだろうなあ……。


 ちなみに魔力適正だが、次世代機のコンセプトは早い時期から各国に伝えておいたため、測定器を用いて適格者を選出していたため、来たは良いが動かせないというものは居なかった。


 魔力適性が無いものでもセンスがあるパイロットは存在すると思うので、今後はそれを解決する何らかの対策が必要だな。


 妖精体で散歩中、訓練のため行進している次世代機達が目に入った。15機も並んで歩いていると迫力がある。


「壮観だな」


 一服に来たのか、リックが俺の隣に腰掛け嬉しそうな顔をしている。

 

「ああ、リック達のおかげだよ。ありがとう!」


「何いってんだ、礼を言うのはこっちだっつーの。こんな爺がバケモンみてえな新型に携われたんだ、もう悔いなんて残ってねえぜ」


「おいおい、もう満足したのか?あれはあくまでも試作機だぞ。問題点や課題は多く残っているだろ?リック達にはここに居るうちに完璧なものに仕上げてもらわないとな」


「こいつ爺を酷使するきでいやがる」


「勿論だ。覚悟しておけ、これからどんどん無理難題を言って困らせてやるからな」


「くくっ、楽しみにしているさ。しかし、前々から思ってたんだが……いい加減「次世代機」ってのは面倒くさくねえか?」


「そうだな……、既に完成しているし、これから次もあるのに次世代機というのは相応しくないな」


 しかし、名前か……何も考えていなかった。独断で決めるのもアレだし、皆から意見を聞いてみるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ