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第二百十五話 お土産を拾って

 買い出しを済ませたり、妖精の件を片付けたりと何だかんだでイーヘイに長逗留してしまった。


「まったく、別に私までレインズの家に連れて行くことは無かったでしょうに」

「仲間を連れて行くと約束してしまったからな。今を逃せば次何時いけるかわからなかったし、しかたがないだろう」


 あれからチクチクとことある毎にスミレに弄られ、腹に据えかねた俺はささやかな逆襲としてスミレを連行したわけだ。


 少女の夢はより叶い、スミレの弄りも無くなり正に一石二鳥であった。


 そんなわけで基地に辿り着いたのはリム族の集落を出てから一月近く経っていた。食料のことが心配だったが、一度あちらから届いた通信でまだ余裕があると報告を受けていたため、尚更甘えてノンビリしてしまった次第だ。


 基地に到着し、ジン達に預かってきた機兵について伝えると目を剥いて怒られてしまった。


「加減しろ馬鹿!いくら多いに越したこたねえとは言え、何処にそんなおけっつうんだ!」


 ジンに続いてリックが呆れた声を出す。


「まあ、本部から渡されたんだろうが、何も馬鹿正直に全部もってくるこたねえだろ……」


 考えてもみれば基地内には既に20機もの機兵が収まっている。そこに40機を置くとなるとどうしようも無いのは当たり前の話なのだが、何故だか基地のキャパについて失念してしまっていた。


 最も、俺のバックパックはどうも限界が無いようなので、必要になるまで預かっておく事は可能であり、言ってしまえば俺自身が第2の格納庫とも言えるわけだな。


「何考えてるか分るぞ、おめえ自分が格納庫だって思ってるだろ?馬鹿やろ、俺達が直ぐに出せねえ格納庫なんて出来損ないなんだよ!」


 くっ……、言われてみれば確かにそうである……。


「それで、進捗状況はどうだい?何機か動けそうな奴はあるか?」


 待ってましたとばかりにアルバートが胸を張る」


「へっへっへー、こんだけ優秀な技師が揃ってんだ、当たり前だろ?既に10機、試運転が済んでいるぞ」


「おお、それは凄いな!てことは、何機かあっちに持って行っても構わないのかな?」


 出来ればギルドから預かった分と交換で何機かリム族の集落に持って行きたい。あの集落に新型を数機持って行ければ、伐採や採掘に役立つだろうし、護りも強固になって食料調達が安定するだろうからな。


 しかし、リック達は難しい顔をする。


「うーん、持って行って貰いたいのは山々なんだが……、もう少し詰めたい所もあってな……だが多岐にわたる実働データが欲しいのも確かだ」


 なるほど言いたいことは良く分かる。ギルドから預かった機兵も同様の理由でこちらに兵士を送るよう話したからな。何かあれば即弄れる場所で稼働テストが出来ればそれ以上のことは無いわけだからな。


 つまりだ。


「よし、リック、ジン俺に良い案がある」


「なんだよ、ろくでもない事言いそうだな、おい」


「失礼だな!ここまで作業が進んだのなら1人くらい居なくても良いだろう?リックかジンが俺と一緒にリム族の所へ行けば良いのだ」


「「やっぱりろくでもねえ!」」


 ジンとリックの声がハモる。


「おめえさんよ、行くつっても俺たちゃ爺だぞ?爺に長距離歩けっつうのか?」


「そうだそうだ!例え機兵に乗ってくつっても、アレだって疲れるんだからな!」


「それは要らない心配だ。なんたって空を飛んでいくんだからな。1人くらいなら余裕がある、俺のコクピットにレニー達と一緒に乗って行くんだよ」


 呆れたような顔をする2人。しかし、あっちでテストが出来るという話自体は魅力的なようで2人で一生懸命話し合っている。

 やがて話が決まったのか、2人仲良く頷き合うと、じゃんけんの様な事を始めた。やっぱりこの世界にも似たような遊びはあるんだな。しかし、結局2人とも行きたいんじゃ無いか。じゃんけんをしてまで争うとはな。


 余程気が合うのか、幾度にも渡るあいこを繰り返した後、勝敗が決した。高々とガッツポーズを突き上げるリック、どうやら彼が勝者であり、同行者となるようだ。


「よっしゃあああああ!!!じゃあ、ジン!あっちのことはよろしくな!」


「くっそおおおおおお!負けちまった!ああくそ……カイザー、てわけで俺が行くよ……」


 ……そんなに行くのが嫌だったのかよ……。


 同行者が決まった瞬間、彼らの行動は早かった。急かすように、いや実際急かされながら格納庫に行かされ、テスト済みの機兵を10機も積み込まされた。その代わりに軍機を10機取りだし、配置した。


「今できてるのはこれで全部だ。テスト済みじゃねえのならもう少しあるが、まあ十分だろ」


「いやいや、予想より多いくらいだよ、助かる」


 最低限の工具や設備と私物も収納させられ、「とっとと行くぞ」と今度は外に急かされる。

 嫌なのは嫌だが、データは早く取りたいようで、なんとも微妙な表情で急かしてくる。


 分離していたヤタガラスと合体し、ジンをコクピットに乗せる。


「うう……カイザーさんこれは……」

「カイザー殿……大丈夫なのですか……」

「てめえ……覚えてろよ……」


 失念していた……。今の俺は2機合体の状態だと言うことを。

 人を乗せて余裕があるのはシャインカイザーであり、2機合体時のコクピットは2機分繋がった程度の広さしかない事をすっかり忘れていた……。


 それでもなんとか乗ることは出来た。問題はまともに操縦出来ないと言うことだが、ここは自立機動出来る俺達ならなんとかできる問題だ。


「……まあ、なるべく早く着くようにするし、耐えてくれ……みんな……」


 そして更に失念している一人分増加した体重。

 それにより来た時より日数がかかると言うことには気づけなかったのである。

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