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第二百一話 基地

あれから一ヶ月。


 各所の協力により、洞窟はかつての能力を取り戻したばかりか、それ以上の進化を果たしていた。

 リックが持ってきた大型クレーンを始めとした様々な機材が取り付けられ、また、かつて使用されること無く朽ちかけていた遺物が修復され息を吹き返して何不自由無いハンガーに生まれ変わった。


 また、基地内にはウロボロスとスミレが主体となって開発した通信室が設けられ、俺たちを介さなくてもある程度の距離までならば長距離通信が可能となった。


 これにより、細々とした資材や食料の入手が円滑に進むようになり、各国への連絡も密に行えるようになった。リーンバイルだけは流石に遠すぎてウロボロスの力が必要となるため、そこは変わらず俺たちが担うしかない。


 また、この通信室は俺の要望でかなり力を入れて作ってある。

 

 スミレに頼み込んでカメラを作ってもらい、その映像を映せるようにしてあるのだ。

 「魔導カメラ」そう名付けた小型のカメラは内部の魔石で動くビデオカメラで、24時間、120日連続稼働が可能だ。撮影したデータは伝送され、基地のモニタに映す他、俺のストレージにリアルタイムでデータの保存もしている。

 見ていないスキに何者かが通っていたということを無くするためだ。


 これはアズベルトやヴィルハートに頼んでルナーサとトリバの各所に取り付けてもらっている。

 彼らにとっても自国の治安維持に役立つ道具であるため、むしろもっと数を増やせと強請られてしまった。


 俺はただ単にモニタを見ながら『む!コレを見ろ!ミシェル!ズームしてくれ!よし、そこだ!』なんてやりたかっただけなのだが、これを言うとまたスミレに馬鹿にされるためあくまでも防衛力を高めるためと言ってある。


 モニタを付けたおかげで通信室というよりすっかり司令室の雰囲気が強くなってしまっている。妖精体用の小さな司令官の机と椅子を作ってもらっちゃおうかな……。


 基地はかなりいい線を行っている。俺が憧れ渇望した基地にかなり近い所まで来ている。

 しかし、この基地は別に俺の欲望を満たすために作られているわけではない。帝国の企みを阻止するための戦力を生み出す場所として作られている。


 その戦力である1世代機達はどうなっているかと言えば、内部の駆動系や外部装甲、装備等は順調に開発されている。しかし、そのどれもが動かすことは敵わない。


 結局の所、紅魔石が無ければどうしようもなかったのだ。


 1世代機の動力となるのは魔石に込められた魔力である。パイロットから流し込まれる魔力と魔石の魔力が混じり合い、パイロットの負担を軽くした上で操縦が可能となる。


 しかし、現存する通常の魔石、例えばヒッグ・ギッガサイズの巨大な魔石を使ったとしても10分の可動が限界で、とてもじゃないがコスパが最悪すぎて使い物にならない。


 かつて使われていた紅魔石は特別な素材を用いて作られる人工魔石で、30cmくらいのサイズでも6時間は連続稼働が可能となっている。また、大気中の魔素をゆっくりと吸収するため、時間をおけば何度でも使用可能なエコ仕様である。


 それを作成するのに必要な素材は少々厄介な所にあるとのことで、なんとか手頃な素材に置き換えて作れないかとここ一ヶ月、ウロボロスとスミレ、そして俺が共に研究をしていたのだが、どうしても劣化版しか作ることが出来ず、結局紅魔石を手に入れるしか無いと言う結論に至った。


「ほんとはアソコに行きたくないんだけどね……」

「そうねー、昔はよかったけど今はちょっと危険だもの」


 それぞれモフモフの身体を貰い、自由に動き回れるようになった小型体のウロボロスたちがうんざりとした様子で言う。


「お前たちがそんな事を言うなんて……、一体どんな場所にあったんだ?その素材は」


「元々手に入れやすい場所というわけでもなかったんだけどさ、他国領だったしね」

「ボルツの砂漠……、砂じゃなくて岩系のね。そこの土が原料なのよ」


 旧ボルツ領、大陸北部に位置し、トリバ、ルナーサ両国と面して居ながら現存する国家はなく、未だ「禁忌地」と呼ばれ立ち入る人間が殆ど居ないため情報が殆ど存在しない地域だ。


 何故旧ボルツ領がそんな事になっているのか、その疑問にはジンとウロボロスが答えてくれた。



 それは夕食中のことだった。

 紅魔石の話題になり、それが旧ボルツ領にあったと話が進んだ時、ジンの表情が変わる。

 重く、真剣なその表情。そう言えば、以前マシューの出生を聞かされた際、その土地の名が出ていたな……。紅魔石は必要な素材であり、遅かれ早かれ俺たちは底に向かうこととなる。となれば……。


「おい、カイザー、マシューに嬢ちゃん達。飯が終わったら俺の部屋にきな」


 突然の呼び出しに首を傾げるマシューだったが、何処か真剣な表情を見ておどけること無く、静かに頷いていた。




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