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第百九十七話 勧誘

 夕食も終わりに近づき、バックパックから取り出したデザートに手を伸ばし始めた頃、リックに話を切り出した。


 取りあえず、現実を見て貰おう、そう思ってレニーに声をかけ、パーティーランクが書かれたカードを出して貰う。


「まずはリック、これを見てくれ」


 机に置かれたカードをちらりと見たリックは「なんだパーティーカードじゃねえか」と、それを手に取ると珍しくも無いと言った感じで眺めていた、が。


 口に入って居たワインを噴き出し、激しく咳き込んでしまう。


「あー!もう、リックさん大丈夫?」


 背中をさするレニーを「大丈夫だ」と手で制し、改めてワインをぐいっと呷ると低い声で言った。


「おいおい……こりゃなんの冗談だ?れ、レニーが……いや、お前らがファーストパーティーだあ?」


 パーティーを識別するパーティーカードは個人識別用のタグとは違いカード型で、パーティーに1枚だけ発行される。ランク毎にデザインの差異は無く、表面に刻まれた「級」のエンブレムでのみ内容を読み取ることが出来る。


 以前リックに見せた時点ではサードだったため、今回も変わらず同じクラスだと思っていたリックは盛大に咳き込むこととなったというわけだ。


「これは前回話せなかった高機密クエストが絡んでいるんだ。実は……」


 と、ここまでの経緯をざっくりと説明した。

 前回は黒騎士からトレジャーハンターギルドを防衛する依頼を受けていたこと、デリケートな上、不確実な情報だったため、外部に漏らすことが出来ない高機密クエスト扱いだったこと、黒騎士戦後にリーンバイルへ向ったこと、そこで知った帝国が抱える物の事。


「……それを話したってこた、あれだな?お前ら俺を巻き込もうって魂胆だな……?」


「うむ……。ただ、先に言っておくと、これは別に強制ではない。話を聞いたから絡まなければ罰せられるとか、何処かへ監禁されるって事は無いよ。アズベルトさんもレインズさんもそこまでする人達じゃ無いしね」


「かー!ギルマスを名前呼びたあ、カイザーおめえ随分すげえとこに行っちまったな!はあ、いいぜ!やってやるよ。さっき見せて貰ったザックの小僧の人形もおもしれえし、伝説の1世代機を弄くり倒せるんだ、やらねえ理由はねえ」


「じゃあ、明日にでも一緒に……」


「だが、一つ条件がある」


「む、条件……? 報酬は勿論ルナーサとトリバから出るし、足りなければ交渉すれば……」


「ばっか、金じゃねえよ。寧ろこれは金払ってでもやらせて貰いたいくらいだ。そうじゃねえ、人だよ。あいつを……アルバートも連れて行くのが条件だ」


「おっちゃんをー?」


「人員はいくら居ても良いから断る理由は無いが、一応理由を聞かせて貰って良いかい?」


「あいつはああ見えてかなりの目利きでな、パーツの善し悪しは勿論、その元となる魔獣の生息地にもやたら詳しいんだ。何か必要となった時、俺が信頼できるパーツ屋が近くに居れば楽だなってのもあるけどよ、あいつは役に立つぞ」


 なるほどね。素材の入手は俺達が担うことになりそうだけど、その指示を出せる人が居るのは心強いな。


「よし、じゃあ出発を1日延ばして明日はアルバートにも声をかけてみるか」


「いや、それには及ばねえよ。そろそろ飲みに来る頃だしな……」


 

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