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第百九十四話 大上映会

 ザックを交えての旅も終わりが近い。


 現在我々はパインウィードで夜を過している。多少無理をすればパインウィードをそのまま駆け抜け、フォレムに到着することも出来たのだが、そこまで急ぐ必要はまだ無いし、なによりパインウィードにはそれなりに思い入れがあるため寄っていきたかったのだ。


 ……村に入った瞬間ゾロゾロと人が集まってきた時点でスルーしようにも出来なかったわけだがな。


 この村において俺は普通の人と同じ扱いを受けている。レニー達パイロットと同等に「おかえり」「会いたかったぞ」と声をかけて貰えるのは涙が出るほど嬉しく思う。


 そんな具合に俺達の歓迎と言う名の、ただ単に飲みたい奴がでっち上げた飲み会が催され俺達は広場に集まり思い思いに酒や料理を楽しみ、旅の話をして村人達を喜ばせている。


「しかし、カイザーよー。おめえさんと酒を飲めるようになったのは嬉しいが、なんだかこう、変な気分だな……」


「言うなよ……俺だって好きでこの姿を選んだわけじゃないからね。スミレが作ったんだ、文句はスミレにいってくれよな」


「……スミレかあ……スミレにゃ文句は言えねえな……」


 と、ギルドのスーが鹿肉を持ってやってきた。


「カイザーさん、ブレイブシャイン1級昇格おめでとうございます!」


「お、スーじゃない。ありがとう。正直俺達には身に余る話だと思ったんだけどね。レインズに押し切られちゃったよ……」


「噂はかねがね聞いてますからね。あれだけの活躍をして2級に収まる方がおかしいんです。それにギルマスをそんな呼び方をする2級ハンターはいません」


「勘弁してくれ、レインズが拗ねたんだよ。『アズベルトやゲンリュウは名で呼ぶのに何故俺はヴィルハート呼ばわりなんだ』って」


「まあ!ふふ、遠目でしか見たことがありませんが、以外と可愛らしい一面があるんですね、ギルマスも」


「っと、俺が言ったって言うなよ?ていうか他の職員にも言うなよ?ギルマスじゃ無くて大統領権限でどんな仕返しされるか分らないからな!」


「あはは!わかりましたよ、カイザーさん……ところで、そのお姿は……食べられるようになったとは聞きましたが、まさかそんな可愛らしいお姿になってるとは……」


「スー……お前もそれを言うか……これはスミレの趣味でな……」


「なるほど……スミレさん……策士ですね。彼女だって恐らく本当は知的で逞しい紳士型の身体弐して上げたかったはずです。そうしなかったのはきっと……ええ、そうだわ……」


「お、おいスー?」


「ぶつぶつぶつ……」


 なんだか妙な世界に入り込んでしまった……っと、今回のメインイベントをやらないとな。


 ここの連中は俺の事情をある程度知っている連中だ。今更俺が「少々変わったことをしても」特に変な感情を抱くこと無く、『まあ、カイザーだしな』で済ませてくれる貴重な連中である。


 となれば、こちらも楽しむ手段を出し惜しみしないで済む。


 パイロット達を呼びだし準備を手伝って貰う……ってミシェルはなんかダメな感じだな。


「しょんなことないでしゅわ!かいざーしゃん!わたくしゅもてつだいましゅから!」


「お、おう?じゃ、じゃあ皆をちょっと下がらせてくれ」


「かしゅこまでしゅの!」


 ミシェルがへらへらと村人達を下がらせ空いたスペースにオルトロスとヤタガラスが左右に分かれて立ち、白布を広げて固定する。俺は一度本体に戻って位置を調整し、「アレ」の仕込みを済ませた。


「よし、皆前の白布を見てくれ!今から特別に珍しい物を見せてやるぞ!」


「珍しい物つったってよ、布しか無いぞ?」


「まさか布の前で演劇でもするのかい?」


 演劇ね、惜しいな。


「まあ、そんなところだが……驚くなよ」


 肝心のザックは……うん、無事起きてるな。ではシャインカイザー上映会スタートだ。


 今回はスミレセレクションと言うことで、今までレニー達が見たことがある回の中からお勧め回をピックアップして編集を加えながら上映することにしている。


 俺としては一気見耐久祭りを開催しても構わないのだが、流石にそれは今浜田許されることでは無いからな。

 

 どこからとも無く聞こえるBGMと共に白布に映し出される映像。あちこちの村人達がうめき声を上げた。


「おいおいおい……これはいったい……」


「絵か?絵が動いてるのか……?」


 現在流れているのは1話冒頭だ。スミレによれば、各機の初登場回を編集してテンポ良く見せ、最後に合体回でしめるそうだ。


 そして間もなく現れる俺の初登場シーン……といっても不良達に解体されかけているという情けない状況だが。


「おお、あれカイザーじゃねえか!」

「カイザー!どうした!そんな奴ら蹴散らしちまえ!」


 応援の声がデカいが、誰も文句を言う者が居ない、というか皆総出で応援しながら見ている。応援上映会って感じでこれは盛り上がるな!


 そしてやってきたパイロット、竜也が乗り込み動かすところで意見がばらける。


「うおおおお!そうか、このカイザーはパイロットがいねえと動かねえのか!」


「おい!なんでレニーじゃねえ奴が乗ってるんだ!」


「いや、あのカイザーはあのカイザーでこのカイザーはこのカイザーでいいじゃねえか!」


「でもよ、あの席にはレニーがよお」


 ほっとくと面倒な対立に発展しそうなアレだわこれ。なので早々に情報提供しておく。


「これは遠き過去、遠き世界で本当にあった話を元に作られたものだ。お前達が生まれるずーっと昔、俺のパイロットはレニーでは無くこの竜也だったのさ。だから竜也もレニーもどちらも俺のパイロットで間違い無いが、今俺のコクピットに乗れるのはレニーだけ、それは確かだ!」


「なるほどな!そういう事なら許すぜ!」


「カイザーよお、やっぱあんた色々と凄まじいな……」


 さり気なく俺の秘密を小出しにして慣れさせていく作戦だ。最終的にこの村の人達には全てを知ってもらいたいまであるからな。居心地が良い場所は自分で作っていかなければ。


 こうしてテンポ良く全員の登場回が終わり、ついに合体回を経て対決回に入る。

 ザックはどうしているのだろうと様子を見てみれば、薄暗い中必死に筆を走らせ何かを凄まじい勢いで書き込んでいる……。恐らく俺の設定かなにかを書いてるんだろうけど、映画館にも居たなこんな人……。


 映画と違って複数回上映出来るような物では無いのだから出来れば集中してみて貰いたいが、これこそザックだから仕方が無いな……。



 明日はリックと話すためフォレムに泊る予定だ。出発時間には余裕があるし、もう少し懐かしいこの感覚を味わって居ようか。


 

 漸くインフルを撃破しました……。

 なんというか、倒したはずのボスユニットがフル回復+常時覚醒魂必中発動で復活し

 自軍ユニットをボッコボコにされてるかのように理不尽で強烈な体調不良を味わいました。

 皆様もAの奴にはお気をつけて……

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