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第百八十四話 御食事会

 タマキさんの強烈な自己紹介にリーンバイル家の人々が苦い顔をしている。

 ゲンリュウ氏はため息を付いているし、シグレとシズルは頭を抱えてしまった。


 タマキさんのみ一人、ニコニコと小首をかしげるこの空気、なんとかしないと話が進まない。


「シグレの母上様、改めまして。ブレイブシャイン司令官のカイザーと申します。こちらに居るのが当パーティの軍師、スミレ。見ての通り我々は特殊な身体を使っては居ますが、れっきとした機兵です」


「それとなくシグレちゃんからは聞いてましたが、改めて見ると驚くわねえ……」


「本体はかなり大きいため、こうしてお邪魔する際などはこの身体を使うのですよ。そしてそれは他のメンバーが乗る機兵もそうで……ウロボロス、オルトロス出ておいで」


 俺の合図でカバンからウロボロスとオルトロスが飛び出してくる。


「はじめまして、私はミシェル・ルン・ルストニアの機兵、ウロボロスです。本来はもう一体、弟と二人でミシェルのサポートをしていますが、弟は今回お留守番です」


「私はーオルトロスだよー。私もー弟がいるんだけどー、そっちはお留守ばーん。あ、そこのマシューが乗ってるロボットだよ」


 妙な空気には妙な連中を。そう考えてぬいぐるみ形態の2機を取り出したわけだが、これがまたタマキさんのツボだったようで。


「あら!あらあらまあまあ!見てくれよ!あんた!愛らしい人形が喋っとるよ!ほら!何時までも呆けてないで!シグレちゃん!ガア助はこの姿になれないの?」


 何だか悪化したような気もするが、空気は大分マシになった。


「ごほん。取り敢えず、召し上がってくれ。ああ、カイザー殿達はそこからでは届かぬだろう。遠慮せずテーブルに乗って食ってくだされ」


 そりゃありがたい。では遠慮なく。


 テーブルに置いてある料理は焼き魚に煮物、何かの御浸しに肉の味噌漬け等、この身体で良かったと心から言える和のラインナップだった。


 食べ始めた頃に運ばれてきた味噌汁に舌鼓をうっていると、芳しい香りがふんわりと漂ってくる。


 ……これは!


「ゲンリュウ殿、失礼ですが貴方が飲んでいるそれはもしや酒ではありませんか?」


「うむ、確かに酒にござる。ああ、カイザー殿はいける口でござるか?」


 酒が入ったせいか、口調がいくらか柔らかなものになったゲンリュウが嬉しそうに言う。


「ええ、どうも私が知ってる酒に似た香りがしましてな」


「ほほう、リーン酒は島外には無いはずだが、成る程興味深い。どれ、カイザー殿一献」


 流石に普通の盃では飲みきれないので、スミレが自分と俺用に作ってくれていたマグカップに注いで貰って一口飲んでみた。


「おお……これはまさしく日本酒……。しかもかなり美味い。贅沢にごっそり磨いた米を使った純米大吟醸じゃないかなこれは……」


「むう、米の酒とわかるとは知っている味というのは嘘ではないのですな……いやしかし『日本酒』と言いましたな」


 ありゃしまった。つい興奮して日本酒という単語を出してしまったな。まあいいや、打ち明けるつもりだったしさ。


「ああ、後ほど打ち明けようと思っていましたが、いい機会なのでここでお話させて頂きましょう。私はご覧の通り……と言うのはこの身体ではあまり説得力がありませんが、自ら思考し、言葉を話す言わば命を持った機兵。私のような存在を貴方方はご覧になったことがありますか?」


「無い……いや、ガア助が居たか。しかし、そのガア助もお主の仲間なのであろう?」


「ええ。今から話す内容はルナーサの大店長やトリバの大統領等、親しい方々にのみ打ち明けている話なので他言せぬようお願いしたい話ですが……」


「余程重要な秘密を打ち明けてくれるようだな……うむ、拙者とタマキの口は堅い。話してくださらんか」


「荒唐無稽な話ではありますが、私やガア助等、4機の機兵はおよそ6000年近く前に神によって異世界にある日本という国より喚ばれた存在なのです」


「……むう、大陸に伝わる御伽噺の様な話ですが……」


「ええ、恐らくは俺達が元になった話かと……実は……」


 と、機兵の歴史、魔獣の歴史にそれぞれ我々が噛んでいる事を説明した。


「ううむ、成程……。カイザー殿の本体とやらをまだ見ていぬためにわかには信じがたい話ではありますが、シグレの報告も聞いていますし真の話なのでしょうな」


 俺の本体か……。戦闘データの録画はたまにしているけど、撮っているのは俺のカメラだから俺は映っていないんだよな……と、待てよ……。


「少々姿形は異なってしまいますが、元の世界から持ってきた特殊な道具で我々の姿が見られますのでご覧に入れましょうか?」


「おお、それは興味深い!是非頼むでござる」


「それで、一つお願いがあります。大きめの……、そこの襖2枚分程の白布はありませんか?あったら奥の壁に貼ってほしいのですが」


「白布ですな、おいコハル。白布を持ってこい」


「はい、ただいま」


 間もなくコハルと呼ばれた女中さんが布を持って戻ってきた。俺が何をしようとしているのか察したシグレが立ち上がったのとレニー達が立ち上がったのが同時で、4人は素早く布をセッティングしてしまう。


 その間俺は端末と本体のデータリンクを確認し、映像データのストリーミングが可能なのを確認した。


「では、しばしの間お楽しみ下さい」


 何話を見せるか迷ったが、俺達が揃った姿を見せたかったのと、レニー達の熱い希望も有り前回の続きである15話から見せることになった。


 15話から主題歌が変わって新たな敵が登場する。Aパート前半は平和な日常シーンが続く。こちらの世界とは違った景色を興味深そうに見ていたリーンバイル家の方々だったが、ちょいちょい映るリーンバイルとの類似性には驚いた顔をしていた。


 デフォルメされているアニメ絵とは言え、食事風景や家の作り、そして何より神社の存在に驚いた様子だった。


 そしてAパートが終わる頃、街に異変が訪れる。新たな敵対組織の登場だ。すぐに始まったBパート冒頭は緊迫した基地内部から始まり、司令官が竜也達に連絡を入れる。


「おお、この流れ。父上見ていてくだされ、カイザー殿やガア助が出ますぞ」


 ここまでパイロットの日常シーンが続いていたため、基地でメンテンスを受けているカイザー達は映っていない。しかしシグレよ、すっかりアニメのパターンを読めるようになったな。


 シグレの予告どおり、パイロット達から発進要請を受けたカイザー達が基地から出発し、謎の素早さで合流する。


「あら!ガア助ちゃんよ!」


 いい具合にガア助がそれとわかるカラス形態で空を飛んでいる。間もなく変形するガア助に驚きの声を上げるタマキさん。


 やがて戦闘シーンが始まり、4機でのフォーメーションから合体をした攻撃にと変わる。ゲンリュウさんが静かなので合わなかったかな?と気になったが、ガッチリと手を握りしめ、夢中になってみているようだ。


 やがて敗北した敵機から現れた敵対パイロットが気になる捨て台詞と共に撤退をする。


 次回の16話「真の敵」で今まで戦ってきた敵対組織の上位組織が登場し、真の敵との戦いがはじまるわけだ……が、今日はここでおしまいだ。


 再生を停止し、明かりをつけるようお願いすると乙女軍団からブーイングが入る。

 ……声が一人分多いぞ。


「カイザーさん?続きはないのでしょうか?」


「……ありますが、今日は大事なお話をするのでしょう?」


「いけず……」


 そう言われましても……。ゲンリュウ氏もなんだか物足りないという顔をしているが、ダメなものはダメだ。


「ごほん!というわけで、アレが本来の我々の姿です。島の東部に本体は置いてありますので、良かったら後日ご覧に入れましょう」


「うむ……しかし、ニホンとおっしゃいましたか。今見せていただいたものがその国ということですな?」


「ええ、ご覧になったものは所謂『動く絵』ですので、実物とはそれなりに異なる部分もありますが、概ねあの様な雰囲気ですね」


「カイザー殿やガア助の活躍にも驚きましたが、何より……リーンバイルと良く似た文化を持つことに驚きました……。もしやリーンバイルに伝わる伝承は事実なのかも知れませぬな」


「伝承ですか。良かったら聞かせてもらえませんか」


「良いでしょう。カイザー殿が秘密を話して下さった礼というわけでは有りませぬが、リーンバイルの秘密と合わせて語りましょう……」


 

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